デビュー30年、輝き続ける 〜石川ひとみさん(最終回)
つらかった誤解と偏見
テレビ局やラジオ局を飛び回り、レコーディングやコンサートにと超多忙な毎日を送っていた暮らしが一転した。
一か月半にわたって入院し、退院後も一年間、自宅療養。突然襲いかかった母子感染によるB型肝炎は、順風満帆だった芸能生活を大きく変えてしまう。病気のために所属事務所の契約も打ち切られ、テレビなどの表舞台から消えてしまったアイドル。その後、療養を続けながら芸能界への復帰を試みるが、決して思うようにはいかなかった。
――この病気の何が一番つらいかって、誤解とか偏見を受けてしまうことでした。一緒に日常生活を送るだけで病気がうつってしまうと勘違いされ、人から避けられたり、恐れられたりするような経験もしました。B型肝炎は完治するのはなかなか難しいので、今も付き合っているんですが、誤解とか偏見を受けてしまう病気だということがすごくつらくて、いろいろ勉強させられたかなというところもあります。
昭和天皇が崩御し、時代は昭和から平成へ。病気に悩まされ続けた石川ひとみさんは、しかし、ゆっくりだが、着実に自ら進むべき道を模索していく。93年に闘病生活をつづった「いっしょに泳ごうよ」(集英社)を出したのをきっかけに、B型肝炎や「心と身体の健康」についての講演も行うようになった。
――同じ病気で苦しんでいる人のことを思うと、私も苦しくなってしまいます。病気のことを過度に心配したり、不安に思ったりするのは仕方がないけれど、できないことではなく、今できることを前向きに考えていきましょう、という話をいつもしています。いろいろ大変だけど、いい意味で気楽な部分があってもいいんじゃないかなって、思うんです。
歌は忘れない、自ら作詞のアルバムも
もちろん、本業の歌も忘れていない。全曲を自ら作詞もしたCDアルバム「HOME・MADE―ただいま―」を、99年に発売。「一五一会」という新しい楽器を使ったアルバム集も、2004年から毎年のようにリリースしている。
――何を表現したらいいのか、何を発したらいいのかってわからなくなってしまった時期もあるのですが、「HOME・MADE―」を出し、また新たに歌とか音楽の世界に戻ってみたいなと思い始めました。いろんなことがありましたが、自分が今まで生きてきた中ですべて無駄なものはないわけですから、その経験を糧にして、バネにして自信を持って歩いていきたいと、今は思っています。
デビューから30年余。歌手・石川ひとみは、アイドル時代に負けない輝きを放ち続けている。
(おわり)
(読売新聞 松崎剛) ※撮影協力 ホテルストリックス東京・バー「ポットベリー」
愛知県出身。誕生日は9月20日で、おとめ座。1978年5月、「右向け右」で歌手デビュー。81年4月にリリースした「まちぶせ」が大ヒットする。87年にB型肝炎を発症し、いったん芸能活動を休止するが、その後、復帰。93年に闘病記「いっしょに泳ごうよ」(集英社)を出版。B型肝炎についての講演を続ける一方で、CDアルバム「みんなの一五一会」シリーズのリリースなど、地道な歌手活動を展開している。