小沢一郎民主党幹事長の元秘書らの政治資金規正法違反事件をめぐり、複数の閣僚らが報道を批判した。原口一博総務相もその一人。そんなに報道が不満ですか? 小沢さんについてはどう思われますか?【中山裕司】
--原口さんは、インターネット上で短文を発信、表示する「ツイッター」を利用しています。面白いですか。
原口さん ツイッターは出会いを求めたり、自分で何かを情報発信する方法とはとらえていません。140字ですから、制限はあるんだろうと思います。(国民などの)いろんなご意見をうかがい、温かく醸成していく「場」としての機能として考えています。
--大臣としての公的な発言か、私的な発言なのかという議論もあります。
原口さん 僕のツイッターネームは「kharaguchi」とみなさん分かっているのですから。公的か私的かは、靖国参拝の時に言われる「公式参拝か私的参拝か」と同じ議論ですね。それの答えは、私は公人であるということです。
--原口さんはニュースの「関係者によると」という表現について、「何の関係者か分からない。明確にしなければ電波という公共のものを使ってやるには不適だ」と話されていました。
原口さん あの発言は報道批判の話ではありません。一つの資本が、いろんなメディアを持って一色になるということの文脈です。言論の多様性を確保する上から(よろしくない)。そういうことですね。
--言論の自由を守るという視点だったと?
原口さん 例えば、大資本が新聞や放送局を支配して一色の言論だけになると、選択の自由や真実を知る権利が奪われます。私は言論のとりでを作ろうとずっと言い続けています。大資本が新聞などを支配するという話の文脈で、人権が失われた時に(一色だけの言論だとすると国民が)どう思うか。それはまずいでしょ、という話をしました。
--報道が反応しました。原口さんの意図が伝わらなかったということですか?
原口さん 反応するのは勝手ですよ。全体に触れずに、部分だけに反応した報道には批判もありましたよ。私は特段コメントすることはない。
--報道に不満はないんですね?
原口さん 何の報道ですか? まったくないですよ。
--小沢幹事長の政治資金規正法をめぐる事件について、地検対政権の話のようになっていますが、どう思われますか?
原口さん 個別の案件については答えません。はい。
--民主党が設置した「捜査情報の漏えい問題対策チーム」については。
原口さん 国会がなさることだと思います。一般論ですけれども。私は政府の立場です。党がなさること、国会がなさっていることをいいとか悪いとか言える立場ではありません。
--この事件に関しては政府も党も報道も鋭敏です。
原口さん (報道など)個別の案件についてはコメントしません。まさに放送を所管する大臣としては……。個別の案件についてコメントしたことは私は一回もなく、今後もない。
--地検は小沢さんを容疑不十分として不起訴にする方針を固めました。(インタビュー後に不起訴処分)
原口さん 個別の案件についてはお答えしない。総務大臣は政治資金規正法を所管する大臣です。
--民主党政権発足から4カ月余りをどう振り返りますか。
原口さん この政権はこれまで古いルールでやってきたものを変えようとしていて、今はその過程にあります。いろんな抵抗がありながらも、一歩一歩前に進めていくのが僕の仕事だと思います。
--抵抗とは旧政権からあるものですか。
原口さん それは意識も含めてですね。
--官僚の意識? 政治家の意識? 国民の意識?
原口さん いろんなものがあると思います、ええ。行ったことのない道は遠く感じますし、古いパラダイム(思考の枠組み)から見ると見えないものがいっぱいある。具体的に言うと、お金を中央に一度集めて地方に分配するやり方は昔は当たり前だと考えられていた。予算とは、各省庁から出てきたものを概算要求にして、そこからどう削るかが当たり前という見方でした。そういう考え方は違うだろうということです。一番抵抗を感じたのは、やっぱり政策背番号制(政策ごとに企画・立案した官僚を記録して人事評価に反映させる仕組み)ですね。誰が作ったか分からないような文章で、政府の政策決定がゆがめられることがあってはならないと思います。
--ポスト鳩山で原口さんは名前が挙がっています。
原口さん そんな人事の話なんかに関心ありません。総理を支えて一生懸命やるだけです。ポスト鳩山の動きなどありませんし、衆院選で政権交代を実現させてくれた国民の意思通りに一生懸命支えます。
--原口さんが慕っているという小沢さんの党運営については。
原口さん いろいろなしがらみを断ち東京での陳情を禁じるなど、民主党を近代政党にしようと党運営されています。同じことをやった自民党政権の時はいつの間にか東京での陳情も復活していましたけれど。陳情する費用も県民や市民の税金だったりするわけですよ。だから、民主党では県連に陳情してくださいということです。
それに民主党の1期生(新人議員)にはバイタリティーがある人が多くいます。そういう方をリクルートする力、国会議員に当選させる(小沢さんの)力はすごいですよ。
--1期生の顔が見えないという批判もあります。
原口さん そんなことはないですよ。私のところにも1期生からの提案がいっぱいあります。僕らをはるかにしのぐパワーとワールドワイドな人脈を持っている人がいます。
--大臣の椅子はフカフカで座り心地がいいですか? それとも権限と責任の重さでガチガチですか?
原口さん 大臣の椅子の座り心地がいいとか悪いとかは考えたことはないし、実際に大臣の椅子にはあまり座ったことはないですね。
野党時代はトロッコに座って1日進むのが100メートルぐらいという感じでしたね。でも今は飛行機のコックピットに座って、視界良好でさえあれば、どこにでも飛んでいける違いはあります。今やれることを全部やろうと思っていますから。トロッコとコックピットのどちらがいいかと言われれば、政策が国民に届けられますから、コックピットがいいに決まっています。雲泥の差です。
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◆報道をめぐる閣僚の発言
▽原口一博総務相(1月19日)
「関係者という報道は、私の立場あるいは人権を保障する立場からすると何の関係者か分からない。少なくとも明確にしなければ電波という公共のものを使ってやるにしては不適だ」
▽中井洽国家公安委員長(1月19日)
「逮捕直後から猛烈な報道が続き、国会の論議に大きな影響があると懸念している。特捜部にも説明責任がある」
▽平野博文官房長官(1月20日)
「すべてとは言わないが、記事の中身によっては公平でないものがあると思う」
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■人物略歴
1959年生まれ。東京大学卒。松下政経塾と佐賀県議を経て、96年に衆議院議員に初当選。現在、当選5回。趣味は詩歌、絵画、読書、将棋。
毎日新聞 2010年2月5日 東京夕刊