きょうの社説 2010年2月6日

◎ハイチPKO派遣 地震国の経験を復興の力に
 地震で壊滅的な被害を受けたハイチに陸上自衛隊が派遣され、国連平和維持活動(PK O)協力法に基づく日本の復興支援が本格化する。自衛隊のPKO参加は7回目で、被災地での活動は初のケースとなる。

 ハイチでは死者が20万人を超え、数十万人が路上での避難生活を強いられている。中 米の最貧国ゆえ政府機能がまひし、復興には国際社会の息の長い支援が欠かせない。地震国日本には阪神大震災などで蓄えてきた経験やノウハウがある。建物の建設段階では日本の耐震技術も役に立つだろう。長期的な視野に立ち、国際貢献で日本の存在感を示したい。

 閣議決定された実施計画によると、派遣される陸自施設隊など約350人は、東ティモ ール、カンボジアに次ぐ規模となり、6日に第1陣が出発する。期間は当面、11月末までの約10カ月間で、倒壊建物のがれき除去や寸断された道路の補修などに当たる。

 現地ではすでに陸自の医官ら約100人の国際緊急援助隊が活動している。ハイチ大地 震で政府は総額7000万ドル(約63億円)の無償資金拠出も決めたが、目に見える形での人的貢献はそれ以上に重要な意味を持つ。

 日本はPKO予算で米国に次ぐ2番目の拠出国でありながら、要員は中東のゴラン高原 、ネパール、スーダン3地域で39人にとどまり、国連加盟国中85番目である。PKOは防衛庁が省に昇格した2007年に自衛隊の本来任務に格上げされたが、各国に比べて大きく見劣りしている。インド洋での海自の給油活動が1月で打ち切られるなか、日本には、より積極的な国際貢献が求められている。

 ハイチでのPKO参加は国連の要請を受けて決まった。PKOの「参加5原則」には、 停戦合意や紛争当事者の参加同意などがあるが、今回は国連の要請とハイチ政府の同意が得られれば5原則に照らして派遣は可能と判断された。

 自衛隊の海外派遣に慎重な社民党からも表立った反対の声がなかったため、派遣準備は 迅速に進んだが、今回のような原則の柔軟な解釈は、今後のPKO拡大へ向けた一歩になろう。

◎奥能登の酒で誘客 職人と技の物語も魅力
 奥能登の「酒」を切り口にした新たな地域おこしの取り組みが進んでいる。奥能登は日 本屈指の「能登杜氏(とうじ)」の里であり、ワイン、地ビールも特産として育ってきた。酒器となる輪島塗、珠洲焼の伝統工芸も備わっている。酒を通じて能登がはぐくんできた発酵文化や伝統工芸などに触れることができ、これらの地域資源をセットにして誘客に生かす方策を探ってもらいたい。

 首都圏の女性らを対象にNPO法人能登すずなり(珠洲市)が企画したモデルツアーは 、奥能登2市2町の地酒、ワイン、地ビールを試飲し、酒蔵を見学する。珠洲焼、輪島塗体験も行う予定である。地域の特産品をブランド化させるには、商品に物語を持たせることが重要だといわれる。能登の酒や伝統工芸にはそれぞれ杜氏や職人らによって培われた物語がある。味はもちろんのこと、ものづくりに携わる者の苦心や技術を参加者らに伝えることで、能登の魅力をより高めるツアーを提案できるのではなかろうか。

 能登杜氏は、「日本四大杜氏」の一つに数えられ、全国でも能登杜氏の酒に根強いファ ンがいる。酒造りの現場でその歴史を知り、杜氏や蔵人(くらびと)による手の込んだ工程・管理を目の当たりにすれば、能登の酒づくりに理解を深め、愛好家のすそ野も広がるに違いない。地元の保存会が伝承している酒屋唄(うた)を聴く場を設けるのも効果的だろう。これまでも酒蔵見学などが行われているが、さらに酒造りの奥深さを伝える工夫を重ねてもらいたい。

 能登ワインも試行錯誤を経て、生産を実現させた物語がある。同様に能登に根差した地 ビールなど、幅広い能登の発酵文化を支える人々の仕事ぶりやこだわりは、ツアーをより印象深いものにするだろう。参加者たちの口コミによる確実な情報発信にもつながるはずである。

 奥能登振興策の課題に滞在型観光コースの掘り起こしがある。酒をキーワードにしたツ アーは輪島塗、珠洲焼も含めて奥能登一帯を巡ることが可能であり、モデルプランの構築に期待したい。