きょうのコラム「時鐘」 2010年2月6日

 ロッキード事件当時の話である。その朝、三木内閣の某閣僚に秘書官が田中元首相逮捕の一報を知らせた。新聞を読んでいた反田中派の大臣が一瞬ニヤリとしたとの話がある

ライバルの転落は自分たちの好機だった。党内党と言われた派閥は、同じ党員でも他の派閥なら厳しく批判した。政権交代の心配のない時代だった。田中金脈追及の声は自民党内からも激しく起こったのである

小沢幹事長が不起訴となって、民主党に沈黙が戻ってきた。検察の事情聴取後に「けじめ論」が出たのもつかの間。党内権力を握ったままの幹事長には抵抗せずの判断か、けじめを問う声は影を潜めた

政党の硬直した一枚岩はバラバラであるより時には怖い。検察批判に元気が出ても、実力者の顔色をうかがって沈黙する民主党議員を見ていると、かつての派閥政治が懐かしくなる、といっては言い過ぎか

派閥は多様な考えが共存できる、言論多様化の「安全弁」だったといえなくもない。元々、多様な考えをもった議員が集まったのが民主党である。今こそ派閥、いや、寄せ集め集団の本領を発揮する時ではないか。