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検察の説明責任、どこまで果たすべきか 小沢氏不起訴

2010年2月5日7時1分

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 小沢一郎・民主党幹事長の資金管理団体「陸山会」の土地取引事件をめぐっては、二つの説明責任が問題になった。ひとつは小沢氏。そしてもう一つは東京地検特捜部だ。特捜部は4日、約1時間20分という異例の長さにわたって記者会見を開いた。ただ起訴内容の詳細については、「公判で明らかにする」などと明言を避けた。検察はどこまで説明責任を果たすべきなのか。

 東京地検のある霞が関の合同庁舎6号館。午後6時からの記者会見には、谷川恒太次席検事と佐久間達哉特捜部長が出席した。

 記者「小沢氏への聴取は何回行ったのか」

 部長「言わない」

 記者「土地購入の原資には、ゼネコンマネーが含まれているのか」

 部長「お答えを控えたい」

 主に在京の新聞、通信、テレビ各社が加盟する司法記者会の記者約50人を前に、一般論では答えるものの、肝心のところははぐらかす光景が繰り返された。事件の発表などは次席検事が普段から行っているが、核心的な証拠に触れるような質問には答えを控える対応が常態化している。

 一方で、小沢氏を狙い撃ちしたという検察批判に対しては「長い間、捜査したからといって、特定の政治家を狙い撃ちしているとはいえない」「国会審議に影響を与えないように捜査できれば良かった」と言葉を重ねた。

 検察は、他の霞が関の省庁とは違って公開の法廷で証拠を通じて被告に説明責任を果たせば、それで良い――と伝統的に考えてきた。刑事訴訟法で「裁判官に予断を与える」ことが禁じられていることなどが理由だ。

 司法記者会は今回、事前にカメラを入れた会見とするように申し入れていたが、当日検察から拒否すると返事があった。

 じつは、1976年のロッキード事件などでは、検事正ら地検幹部がテレビカメラの前で記者会見をしている。しかし93年の金丸信・元自民党副総裁の所得税法違反事件を起訴したころを境に、はっきりした理由は不明だが、カメラを入れることは禁じられるようになった。

 地検によると、会見には、フリーライターや雑誌記者らからも出席許可を求める申し出が事前に相次いだという。だが「司法記者会の加盟社以外の出席は認めない」と断ったという。

 「アメリカ人のみた日本の検察制度」の著者で、ハワイ大学のデビッド・ジョンソン教授は「多くの地方検事が選挙で選ばれる米国と違い、日本の検察官は直接有権者への説明責任があるわけではない。継続中の事案について検察が語れば、起訴前の人物に烙印(らくいん)を押したりする恐れもある。あまり語らないのはやむを得ないことだ」と語る。

 しかし、こうした考えに異を唱える人が、ここ数年増えている。その急先鋒(きゅうせんぽう)が、かつて東京地検特捜部などの取り調べを受けた本人たちだ。法廷で対決するだけでなく、「国策捜査だ」などと世論に訴える本を次々と出版している。

 中でも、2005年に出た佐藤優氏の「国家の罠(わな) 外務省のラスプーチンと呼ばれて」は、単行本と文庫本を合わせて29万4千部発行され、同年の毎日出版文化賞特別賞を受賞。反響を呼んだ。

 出版ジャーナリストの塩澤実信さんは「反検察本というジャンルが明らかに出来上がった」と語る。

 ジャーナリストの田原総一朗さんは「こうした著書などを通して、多くの人は検察の描く筋書きや取り調べのあり方に反感を募らせてきた。そのことが、検察の説明責任に対する批判の高まりの背景にある」と語る。

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