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小沢氏の不起訴 検察も説明責任を負う


 小沢一郎民主党幹事長の資金管理団体「陸山会」の土地購入をめぐる収支報告書虚偽記入事件で、当時の秘書らと共に市民団体から告発を受けていた小沢氏は結局、起訴されなかった。東京地検特捜部の判断は「嫌疑不十分」。疑いはあるが、起訴しても有罪に持っていくだけの材料に乏しいということだ。

 事件は、土地を購入した年に、その収支を報告しなかったという当時の秘書らの罪を立件して幕。西松建設の巨額献金事件で公判中の公設第1秘書大久保隆規被告が逮捕されてからほぼ1年。政権交代の立役者である与党幹事長から2度にわたり聴取し、関係先多数を家宅捜索するなど、政局を引きずりながら展開した大捜査の帰結としては、いかにもあっけない。

 今回の結果を受けて、民主党内では小沢氏の幹事長続投論が高まるだろう。不可解と言えば、検察の捜査自体も不可解な印象を残したまま、最終的には国民の判断にげたを預けたようにも映る。

 土地購入の資金をめぐっては、確かに不可解なカネの流れが明らかになっている。2004年10月に土地を買ったのに、収支報告書への記載はせずに翌年回し。当初、金融機関からの融資で購入したとしながら、実際は小沢氏手持ちの4億円を資金に購入した直後に融資を受けていた。

 土地購入と同じ時期、特捜部は中堅ゼネコン水谷建設元役員から「小沢氏側に現金を渡した」との供述を得たという。胆沢ダムの本体工事契約の時期とも重なり、業者からの裏金が購入資金に含まれるとの見方が浮上した。

 この資金について、小沢氏は「自宅の買い換えで残った分と、家族名義の口座分」などと主張。「不正なカネは一切受け取っていない。秘書らも受け取っていないと確信している」と否定した。

 秘書らも、裏金の受け取りについては全面否定。そもそも業者の供述は、どこまで信用できるのか。そこから始まって、一連の疑惑は疑惑のまま闇に紛れることになる。

 特捜部は昨年、民主優位の解散風が吹き荒れる中で小沢氏秘書を逮捕。さらに今年、通常国会直前に元秘書の現職衆院議員を逮捕するなど、捜査は国政に重大な影響を及ぼした。小沢氏側のみならず、国民の間にもある「強引な捜査」への疑念に対する説明責任を、捜査側は十分に果たすべきだろう。

 小沢氏も、事件に絡む種々の疑問に説明を尽くしたとは言い難い。複雑な資金移動、依然不透明な原資、融資関係書類への小沢氏本人の署名、陸山会と小沢氏個人が交わした「確認書」の日付と作成時期のずれ―など。首相の偽装献金事件とも相まって、億単位の資金を「秘書の独断」に任せる金銭感覚は、相変わらず政治が庶民から遠い印象を際立たせた。

 政権のトップ2人の秘書らが罪に問われた事実は重い。成熟した政権政党に脱皮するために、引き続き説明の努力を怠るべきではない。

遠藤泉(2010.2.5)

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