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味覚:「辛み」「苦み」若者敬遠 好みは「マイルド」、成熟せず成長か

「わさび抜きは珍しい注文とは感じなくなりました」と話す小川店長(左)=東京都渋谷区の「すしざんまい渋谷東口店」で、藤田祐子撮影
「わさび抜きは珍しい注文とは感じなくなりました」と話す小川店長(左)=東京都渋谷区の「すしざんまい渋谷東口店」で、藤田祐子撮影

 ◇すしはサビ抜き、低刺激のミントガム…

 辛いもの、苦いものを敬遠する若者が増えているという。すし店では、わさび抜きを注文する若者が目立ち、眠気覚ましのガムも刺激を抑えた商品が発売されている。子どものころから味覚や嗜好(しこう)があまり変わらず、「大人の味」が苦手な若者が増えているようだ。【藤田祐子】

 「『サビ(わさび)抜きで』という注文をよく受けます。ここ数年、多くなったという印象です」

 東京都渋谷区の「すしざんまい渋谷東口店」の小川誠一郎店長(38)は話す。JR渋谷駅前の繁華街で24時間営業し、若い世代を中心に1日300人を超す来客がある。サビ抜きをリクエストするのは「圧倒的に20代の若い方で、特に女性が目立つ」という。

 わさびのピリッとした刺激があってこそ、すしの味が引き締まるが、「わさびを付けて食べたことがない」と話す客もいるという。「そういう方には、試しに少しだけ付けましょうか、と勧めることもあります」と小川さんは語る。

 回転ずし「くら寿司(ずし)」を全国展開するくらコーポレーション(本部・堺市)は数年前から、全皿をサビ抜きにし、テーブルに備え付けのわさびを好みで付けてもらう仕組みにした。広報宣伝部の中野浩さんは「子ども連れのお客様からサビ抜きの注文が多く、実験的に数店舗で別添えにした。わさびを使わない人が予想以上に多く、順次、全店に拡大した」と説明する。

 導入後、若い男性のグループ客の一人から「今までは頼みにくく我慢していたが、実はサビ抜きが食べたかった」という反応もあったという。

 辛いものを好まないという東京都練馬区のアルバイト男性(22)は「おすしは大好きだが、わさびを付けると味が変わってしまう。小さいころから慣れた味がいいし、わさびがない方が魚そのものを味わえると思う」。男性はうどんや牛丼に唐辛子を使わず、おでんも「からしをつけない方が、だしの味がよく分かる」が持論だ。

    *

 眠気覚ましや気分転換のためのミントガムも、強い刺激が苦手な人向けの製品が登場している。キャドバリー・ジャパン(東京都)が昨年10月に発売した「クロレッツアイス ライト」はメントール成分を抑え、「キツくないのが ちょうどいい」が宣伝コピー。刺激が強すぎるという声を受けて商品開発したという。同社マーケティング本部の内山元春ブランドマネジャーは「クロレッツの発売25年で初めての要望といってよく、時代とともに消費者の嗜好に変化が生じていることを実感した」と話す。

 同社はマーケティング会社「味香り戦略研究所」(横浜市)と昨年9月、「刺激に対する嗜好性調査」を実施。20~40代の男女計1236人に、購入頻度が高い第3のビールの銘柄やレトルトカレー商品を調査した。苦みの強い第3のビールや辛いカレーを好む男性は、40代が23・8%に対し20代は17・5%。逆に、あっさりしたマイルドな味を好む人は40代が39・3%、20代が45・6%に。女性もほぼ同様の傾向だった。

 同研究所は「若い世代は従来より、味覚が未成熟な状態といえるかもしれない。ゲームやインターネットをしながらの『ながら飲食』の傾向もあり、味への関心が薄らいでいるのではないか」と分析している。

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 味覚障害に詳しい冨田耳鼻咽喉(いんこう)科医院(練馬区)の冨田寛院長は「香辛料の辛さや刺激物は痛覚や温度覚で感じ取るもので、甘さや苦さ、しょっぱさを感じる『味覚』とは異なる。辛いものが食べられなくても味覚障害ではない」とし、「『マヨラー』(マヨネーズばかり料理にかけて食べる人)の味覚を調べたこともあるが、病気でなく、好みの問題だった。刺激物を避けたり、逆に辛いものばかり食べるなどの嗜好の偏りは、子どものころからの食生活を反映していると思う」と話していた。

毎日新聞 2010年2月5日 東京朝刊

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