中日スポーツ、東京中日スポーツのニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > 中日スポーツ > 大相撲 > 紙面から一覧 > 記事

ここから本文

【大相撲】

朝青龍引退 事実上のクビ 解雇寸前に電撃決断

2010年2月5日 紙面から

引退を発表し、記者会見で涙を見せる朝青龍=両国国技館

写真

 大相撲の横綱朝青龍=高砂部屋=が1月の初場所中に起こした一般人への暴行問題の責任を取って電撃引退した。日本相撲協会は4日、東京・両国国技館で理事会を開催し、朝青龍への対応を協議。理事会に呼ばれ、事情聴取された朝青龍は引退届を提出し、これを受理された。事実上の解雇で、朝青龍は日本国籍がないため相撲協会には残れない。会見では「引退します。けじめをつけるのは僕しかいない」と涙。歴代3位の優勝25回の大横綱はトラブルも多く、最後も不祥事で11年余りの土俵生活を終えた。

 最後は侍として腹を切った。理事会の中で朝青龍に与えられた選択肢は引退届を提出するか、さもなければ解雇しかないという実質的な解雇通告だった。

 関係者の話では1日に武蔵川理事長は個人的な意見として、4日の理事会までに朝青龍に引退届を出させなさいと、高砂親方にうながしていたという。理事長は理事会前から厳罰を下す覚悟を固めていた。

 さらにこの日、横審は理事会の後に臨時会合を開くことを決定。横審の鶴田卓彦委員長は事前に、武蔵川理事長に横審として引退勧告書を用意していることを伝えた。武蔵川理事長はこれを理事会の冒頭で発表。引退か解雇。流れは既に決まっていた。

 朝青龍は予定より10分遅れの午後1時10分に国技館に到着。そのまま理事会の会場に入り、暴行問題について事情説明の場を与えられ「まだ相撲を続けられる可能性があるならやりたい」と訴えた。

 事情説明を終えた師匠の高砂親方は「まだ報告だけだから」と話したが、その時点で理事の半数が解雇を主張。午後2時31分に再び理事会に呼ばれ、9分後に出てきた横綱は無言。師匠は「まだ結論は出ていない」と話した。

 応接室で師匠と朝青龍が待機している間に理事会で意見がまとめられ、過半数が解雇を主張。午後2時56分に九重親方と友綱親方、二所ノ関親方が朝青龍らが待機する応接室に入り、解雇処分が告げられた。その内容を聞かされた横綱は「最後にけじめをつけるのは僕しかない」と引退を決めた。初場所で25回目の優勝を飾った歴史に残る大横綱。最後の決断を朝青龍に委ねたのは武士の情けだった。

 応接室を出て理事会に向かう横綱はほほ笑んでいた。理事会に引退を伝えると「引退しました…。世間があるからねえ」。会見では涙があふれ出していた。「お世話になりました。晴れてるような気持ちです」。女性記者のほおに手をあて「ありがとう…」。記者会見が終わると「お疲れさまでした。ありがとう」と笑顔で手を振った。 (岸本隆)

 

この記事を印刷する


中日スポーツ 東京中日スポーツ 中日新聞フォトサービス 東京中日スポーツ