インターネット技術により、情報の授受が一方的ではなく、誰もが発信者になる状態が「ウェブ2・0」です。派生した用語で、街全体で情報が自由に行き交う「まち2・0」は西尾信彦・立命館大学情報理工学部教授の造語です。
この「まち2・0」を実現しようという動きがあります。舞台はJR大阪駅北側で開発中の「梅田北ヤード」。2012年に先行開発区域で「まち開き」の予定です。
関西情報・産業活性化センターが先日開いた「関西情報通信融合イノベーション創出フォーラム」の会合で、北ヤードのメディア環境整備についての議論の中心にいた1人が西尾教授です。研究室を訪ねてきました。
開発業者も参加している「大阪駅北地区先行開発区域ユビキタスサービス研究会」の会長を務める西尾教授は、業者側に事業プランを提案する立場です。「新しいメディアを生み出し、わざわざ足を運んでもらうだけの価値ある情報を提供しなければ、『まち2・0』とは呼べない」と、展望を語りました。
20メートルおきにインターネットにつながる案内板を設置することが理想だといいます。イベントの案内や店の割引クーポンなど、北ヤード内の情報を個人の好みに合わせて提供し、共有してほしいとの希望です。地図上の地点に対応する建物内部のパノラマ写真を見せ、関連する情報を同時に表示する試みも検討されています。よく知られる「グーグル・ストリートビュー」は現状では一般公道のみの写真ですから、一歩進んだ取り組みです。
情報を提供する器はそろうでしょう。問題は中身です。「これでもか」と送りつけられる商品情報ばかりでなく、ほっとする情報、人と人とがつながり合える情報をあふれさせて「まち2・0」を実現したいものです。【大阪メディア室長、高村洋一】
2010年2月3日