2010年2月4日 20時36分 更新:2月4日 22時56分
大相撲史上初の7場所連続優勝に歴代3位の優勝25回。その栄光の陰で、土俵内外で数々の騒動を起こしてきた。4日、現役を引退した横綱、朝青龍関(29)の引き際もまた型破りだった。引退直前の今年初場所で優勝。その場所中に起こした酒に酔った末のトラブルが命取りとなり、土俵を去った。日本の国技・相撲の歴史に刻み込まれたモンゴルの異色横綱。引退会見では珍しく涙も見せた。
午後3時40分すぎから東京・両国国技館で行われた引退会見。約20分の会見中、努めて冷静に質問に答えていた朝青龍関が言葉を詰まらせたのが、「一番の思い出は」と質問された時だった。
「やはり、両親の前で横綱・武蔵丸関を倒したことを誇りに思う」と話すと、手で鼻を押さえた。01年夏場所初日、横綱戦初勝利を挙げた一番。感極まったのか、ハンカチで涙をぬぐいながら「横綱を倒し初めて三役に上がった。初めて両親を招待して、横綱というすごいものを倒した。今までで一番、というよりそれしかない」と一息にしゃべった。
その場面以外は普段通りの強気の「朝青龍節」だった。今の心境を聞かれると、「何も考えられない。大勢の方々を騒がせ、責任を感じてここに座っている」。引退を決断した理由を問われると、「横綱という責任を大きく感じて、皆さんに大変ご迷惑をかけたというおわびの気持ち。最後はけじめをつけるのは僕しかいない。そういう意味で引退ということを考えた」としっかりとした口調で答えた。
さらに、引退の直接の引き金となった横綱の品格についてただされると、「皆さんは品格、品格と言うが、土俵に上がれば鬼になるという気持ちがあったし、精いっぱい相撲を取らなくてはならないという気持ちもあった。今までにいない(タイプの)人なんで。迷惑をかけた」と持論を披露したうえで謝罪した。土俵で見せる自信はこの日も揺らぐことはなく、「25回も優勝したし、相撲に対する悔いは一切ない」と言い切った。
「まだまだ相撲ができる状況での引退では」との質問には「それも運命」と話し、11年に及ぶ土俵生活を振り返り、「水も言葉も違う国で、モンゴルの大草原の少年を横綱になるまで支えてくれた方々に感謝している」と述べた。
一方、騒動を引き起こしたここ数日間の日々については「正直、ちょっと休みたい。精神的なダメージも受けたから。(マスコミの)皆さんの力に圧倒されたこともあった」と皮肉交じりに語った。【大矢伸一、芳賀竜也】