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■「生活保護の闇【4】急増する“働ける受給者”」 2010/02/02 放送

 シリーズ「生活保護の闇」。

 これまでの放送で生活保護費に群がる業者や違法賭博や薬物購入に使われる実態をお伝えしました

 4回目は、急増する働き盛りの世代の受給者がなかなか社会復帰できない現状を取り上げます。

 市のケースワーカーへの密着取材を通して、彼らの心の闇を探ります。




 <西成区役所ケースワーカー 山道俊博さん>
 「西成区役所の山道です。おじゃまします」

 大阪市西成区役所のケースワーカー、山道俊博(38)さんは毎日、受け持ちのアパートを訪ねる。

 <山道さん>
 「どのような目標を持って生活されていくのかなっていう所をお伺いしたいんですよ」
 <男性>
 「とりあえず仕事つけるなら仕事しならがら生活していこうかなと」

 あいりん地区の担当で、生活保護受給者と膝を突き合わせ自立に向けた相談を重ねるのだ。

 <山道さん>
 「本人が自立に向けステップアップしてる最中ですので、その目的とか意識にぶれがないか確認しあった」

 半径わずか350メートルのあいりん地区にはおよそ3万人が暮らす。

 かつては日雇い労働者の町だったが、今では3人に一人、9,000人が受給者となる日本最大の生活保護の町だ。

 この最前線に立つのが区役所のケースワーカーたち。

 その現場に初めてテレビカメラが入った。


 西成区内を15のエリアに分け、233人のケースワーカーが受給者一人一人の相談に対応し、最終的に彼らが自立するまで支援を続ける。

 <電話対応している山道さん>
 「おはようございます。どうされました」

 山道さんはケースワーカー歴4年、社会福祉法ではケースワーカー1人の受け持ち基準を80世帯と定めているが、西成ではまったく違う。

 <山道さん>
 「(担当してるのは)約160人くらいです。忙しいです、それはもう忙しいです」

 <呼び出し放送>
 「4班山道さん、4班山道さん」

 朝一番、呼び出しの放送。

 <山道さん>
 「4班山道お呼びの方」

 生活保護を受け始めたばかりの男性が訪ねてきた。

 男性は生活必需品の購入のため支給される一時金の見積書を持ってきたのだ。

 <山道さん>
 「どんぶり二ついります?」
 <男性>
 「いらない」
 <山道さん>
 「じゃ、どんぶり削ってもらっていいですか?ちょっとこの見積書では受けとれないんです。改めて見積もり取ってもらっていいですか?」

 この説明をしたあとすぐに次の男性が待つ席へ・・・。

 <山道さん>
 「お待たせしてすみませんー」

 机ひとつ分の幅の面接ブースで向き合う。

 <山道さん>
 「安定就労に向けてね、そろそろ動き出してみませんか?」

 ケースワーカーの最大の使命は社会への復帰を支援すること。

 この男性とは30分ほど話し合った。

 自分のデスクに戻り、ようやく事務作業にとりかかろうとするが…。

 <呼び出し放送>
 「4班山道さん、4班山道さん」

 また受給者が相談に訪れる。

 生活保護を受ける人が急増するなか、ケースワーカー不足が深刻化。

 そのしわ寄せが現場を直撃している。

 <山道さん>
 「どうしても別の案件が飛び込んできたら、その人一人にかかりっきりになれない所にストレスを感じます。相談業務としてはあまりこういう形は良くないのかなと」

 生活保護を取り巻く環境が大きく変わることになった国の通知。
        
 派遣切りが社会問題化し、仕事や住まいを失った人たちを積極的に支援するため去年3月、厚生労働省が各自治体に徹底したのだ。

 不況で仕事が無いという理由から、健康で働き盛りの人たちにも生活保護の門戸が広がった。

 <山道さん>
 「30代40代の方。稼働年齢層のわりと体も元気な方が増えた」


 山道さんが担当するAさん(43)もそんな一人。

 もともとは建築現場で日雇い労働をしていたが仕事が激減した。

 腰を痛めたこともあり去年2月から生活保護を受け始めたが、当初の生活と言えば…。

 <Aさん>
 「ほとんど何もやってない状態。ゲームセンター行って、部屋帰って、食事して寝るだけの毎日」
 (Q.その間就職活動は?)
 <Aさん>
 「それまでは『(腰の)病院に通って体を直して下さいね』ということで就職活動はしなくていいという形だったから」

 体調も回復したため、去年12月から求職活動を始めた。

 腰に負担のかからない事務職を希望しているが、現実は厳しい。

 <Aさん>
 「事務職につこうとするとパソコンのスキルを上げないとちょっと不可能に近いもんですから」

 パソコンが使えないと話にならないのではないかとAさんは心配し、国からの給付金が出るパソコン教室に通いたいと山道さんに相談した。

 <山道さん>
 「学校で得られるスキル、資格も取れるんですか?」
 <Aさん>
 「PC検定3級くらい」
 <山道さん>
 「これが(学校が)終わった時には就職するんだっていう意識は持っといて下さいね」
 <Aさん>
  「ハイ」

 山道さんはとりあえず本人の意思を尊重しようと判断した。

 後日、Aさんは教室に通うための試験会場へと向かっていた。

 保護費からスーツを初めて買い、筆記試験と面接に臨む。

 <Aさん>
 「やってみんと分からん、これだけは」
 <記者>
 「試験頑張ってきて下さい」
 <Aさん>
 「はい」

 しかし、結果は不合格…。

 Aさんは、今度は試験のないパソコン教室にすると言い出した。

 <Aさん>
 「今の能力では事務所関係行こうと思うと100パーセント無理です、能力的に。通わないで事務職探せっていうなら・・」
 <山道さん>
 「あのね、事務職を僕が捜して下さいって一回でも言ったことありますか?」
 <Aさん>
 「ないです」
 <山道さん>
 「ないですね、事務職探したいのは誰ですか?」
 <Aさん>
 「私です」
 <山道さん>
 「あなたでしょ」
 <Aさん>
 「それでー私ですけど今、自分自身で分かったのはここに通わないと(就職は)無理なんですよ」

 Aさんが希望する学校は半年間コース。

 就職活動を開始する時期がさらに先にずれこむことになる。

 <山道さん>
 「なぜ6か月コースなんですか?なんの目標設定をしての6か月なんですか?」
 <Aさん>
 「私の場合はここまでの目標設定」
 <山道さん>
 「ここまでの目標を達成したかどうかは何を持って分かるんですか?」

 43歳の働き盛り。

 しかし、ケースワーカーに「仕事を探して下さい」と言われなければ、ゲームセンター通いの生活を続けていたかも知れないと明かす。

 <Aさん>
 「『仕事しろ』と言われなければ多分そういう生活してた。生活保護受けて、ああこのまま生活出来るわーって思ってたことも一瞬はあったけど」

 生活保護の受給者でありつづける限り、住居費とは別に支払われる生活費8万円。

 就職難の壁にぶちあたり、働く意欲が無くなっても生活はしていける。

 大阪市がおととし就労支援を行ったおよそ5,000人の受給者のうち、生活保護から抜け出せたのは160人あまりにすぎない。

 この状況下で社会復帰をどう喚起していくのか、現場は難しい課題にずっと直面している。

 <山道さん>
 「(あいりんの)町に慣れてこれで生活出来ると思ってしまってる人も中にはいる。生活は出来てるかも知れないですけど、じゃあ1年先、2年先もこういう生活をしていくことをどう思いますかー、と問いたい」

 大阪市の来年度の生活保護費は過去最大の2,888億円と予想され、その4分の1が大阪市民の税金で充てられる。

 働けるのに、働けない。

 働けるのに、働かない。

 生活保護が「最後のセーフティーネット」であり続けるために自立可能な人が一刻も早く抜け出せる対策を講じなければならない。




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