きょうの社説 2010年2月4日

◎金沢駅整備 「駅ナカ」の魅力向上も同時に
 2014年度末の北陸新幹線金沢開業へ向け、新年度から新幹線駅舎の設計や駅西広場 の再整備が本格化するなか、ハード整備に合わせ、いわゆる「駅ナカ」の機能を充実させることも重要なテーマである。駅舎や広場などの外観がどれほど個性的でも、中身が金太郎飴のような印象では駅の魅力が半減しかねない。

 新幹線開業時には、金沢駅利用者は年間750万人から1千万人に増えると見込まれて いる。単なる交通ネットワークの拠点というより、情報発信基地やショッピング空間としての性格、さらには文化的な機能など、駅としてより高度な役割が求められよう。

 そうした観点から、県金沢観光情報センターなどの公共施設、あるいは土産物店を含め た商業施設の在り方を見直す必要がある。地下広場や高架下の有効活用も検討課題である。新幹線時代の金沢駅の姿を描きながら「駅ナカ」の魅力も同時に高めていきたい。

 駅はその地域の情報ネットワークの中心であり、金沢駅なら市街地や能登、加賀へ旅客 を導く効果的な発信が求められている。県金沢観光情報センターは改札口の至近距離にありながら、場所が分かりにくいとの指摘もある。旅客誘導機能は構内全体の課題でもあり、外国人の利便性も考えた案内サインの見直しが必要である。センターにはインターネット設備を増やすなど情報拠点機能を拡充してもらいたい。

 構内の商業施設も、テナント構成やレイアウトによって駅の雰囲気を印象づける。行列 ができるようなヒット商品を売り出す店が次々に誕生し、「駅ナカ」ビジネスが活発になればショッピングの楽しさも倍増する。金沢百番街はJRグループの金沢ターミナル開発が運営しているが、県や市も連携して魅力づくりへ知恵を絞る必要がある。

 構内ではオーケストラ・アンサンブル金沢が「エキコン金沢」と題したコンサートを定 期的に開催している。こうした催しをもっと増やせば、文化発信拠点としての駅の存在感は格段に高まるだろう。駅に降り立てば、金沢という都市の表情やにおいに触れられるような演出や仕掛けを考えたい。

◎特定離島の国管理 「海洋権益」を守らねば
 日本最南端の沖ノ鳥島(東京都)と最東端の南鳥島(同)などの「特定離島」を、国直 轄で整備できるようにする新法案が今国会に提出される運びになったことを歓迎したい。沖ノ鳥島と南鳥島だけで、日本が主張できる排他的経済水域(EEZ)は国土の2倍以上ある。極めて貴重な「財産」であり、国が国土保全に責任を持つのは当然である。海岸線の整備などに全力を挙げ、「海洋権益」を守らねばならない。

 中国は近年、海洋調査船を沖ノ鳥島近海に派遣し、日本に無断で調査活動を行い、日本 側の抗議に対して「沖ノ鳥島は岩であり、EEZを認めない」と主張している。特定離島の管理責任を、地方自治体から国へ移すことで、国益保全の強い意思を内外に示すこともできる。あらゆる手段を講じて中国の圧力をはねのけたい。

 「海洋法に関する国際連合条約」は、島について「自然に形成された陸地であり、水に 囲まれ、満潮時においても水面上にあるもの」と定義している。特定離島のうち、沖ノ鳥島は、満潮時に高さ1メートル程度の岩が二つ海面に出ているだけで、波の浸食などで海中に没する可能性がある。このため国や東京都はこれまで約300億円を投じて、岩の周囲を消波ブロックやコンクリートで補強してきた。また、2007年には沖ノ鳥島灯台を設置し、運用を開始したほか、サンゴ礁を活性化して、島自体を大きくする実験も行っている。

 沖ノ鳥島周辺は、レアメタル(希少金属)などの海底資源が存在するとみられるが、中 国が沖ノ鳥島に並々ならぬ関心を持つのは、米軍の拠点のグアム島に近く、中国にとって重要な戦略的位置にあるからだろう。中国は海洋調査船を派遣して、海底の地形や水分調査など潜水艦の航行に必要なデータ収集を行っているという。

 中国は、南シナ海の南沙諸島の領有を一方的に宣言し、満潮時に水没する岩をコンクリ ートで「人工島」に改造し、軍事施設を建設した。沖ノ鳥島の整備をしっかり行い、中国の身勝手な主張に厳しく反論していかないと、取り返しのつかぬことになりかねない。