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【大相撲】

文科省 物言い 退職表明の安治川親方、一転残留

2010年2月4日 紙面から

記者会見の冒頭、頭を下げる安治川親方。後方は友綱親方=両国国技館で(武藤健一撮影)

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 退職表明した安治川親方、一転、角界残留へ−。日本相撲協会の理事選で立浪一門の指示に反して貴乃花親方に投票し、2日深夜に退職する意向を表明していた安治川親方が3日夜、東京・両国国技館で記者会見し、退職を撤回して相撲協会に残る考えを明らかにした。この日、立浪一門の友綱理事と会談し、再考を求められて決断したものだが、事態が急転した背景には相撲協会に対する文科省の“指導”があった。 

 安治川親方の退職は白紙に戻り、さらに立浪一門から処分すら出なかった。相撲協会理事選の投票方式を変えさせ、貴乃花派つぶしに待ったをかけた文科省が、再び安治川親方の退職に待ったをかけた。

 1日の選挙で事前に割り振りされていた大島親方(元大関旭国)ではなく、貴乃花親方に1票を投じた安治川親方。伊勢ケ浜部屋の幕内安美錦から年寄名跡を借りていながら貴乃花親方に投票するなど、これまでなら許されなかったことだ。

 だから、安治川親方も身を引くしか責任を取る方法はないと、2日の夜に決意を固め、「一門という家族の和を乱してしまった。迷惑をかけたので相撲協会を退職します」と深夜の会見で語った。

 その報道を見て動いたのが文科省。この日、相撲協会に問い合わせた。いわゆる“指導”にあたるわけだが、一門ではなく自分の意思で投票したことに責任を感じて退職するということは公正性を欠く。それが同省の認識だった。

 午後8時前から友綱理事と同席で行われた会見の中身は、文科省の“指導”通り、安治川親方の意思を尊重するもの。「友綱親方や伊勢ケ浜親方、一門のご厚意により協会に残らせていただくことになりました」と安治川親方。「辞めたかったわけではないので、その意思を伝えた。責任を取るつもりだったから、と話したら、それだったら勉強し直せと友綱親方に言われました」と残留が決まった。

 処分はなし。もちろん安治川名跡も安美錦から今まで同様に借りることも決まった。さらに、会見では友綱親方の隣で、2年後も貴乃花親方に投票するか? と問われた安治川親方は「2年間の貴乃花親方の働きぶりを見て考える。ほかの人でも、その生き様を見て協会のためにいいと思えば入れる」と断言。大島親方より貴乃花親方なのか? という問いにも自信を持って「そうです」と答えた。

 一門の幹部を前に、堂々と個人の主張を続けた安治川親方。閉ざされ続けていた重い扉が音を立てて動きだした感じがした。 (岸本隆)

 

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