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「書いちゃだめですよ」…おちゃめな長谷川

1月27日、MVPとKO賞を受賞したボクシング年間表彰式の場でバンタム級残留を発表した長谷川穂積

 長谷川穂積の次戦が11度目の防衛戦になることが決まった。バンタム級残留か階級転向か、12月のV10戦以前から発生していた進路問題はひとまず決着。追いかけていたこちらも正直すっとしたし、いろんな意味でチャンピオンの人間味に触れた気がした。

 長谷川は、これほど立派なチャンピオンになった今も番記者に近い存在でいてくれる選手だ。公の発言には「本音」と「建前」があるが、彼はその境界線がわかりにくい。「これ、書いちゃだめですよ…」と言って、普通なら新聞記者に話さないようなこと(たとえばお金やマッチメークのこと)を教えてくれることがある。後日にそういったことが記事になっても、自分が「書かないで」と言ったことをすっかり忘れ、大きな原稿になったことを喜んだりする。今回もその時その時の本心をこぼした。迷っていることをそのまま口に出した。だから新聞紙上では2つの可能性を行ったり来たりした。

 だが、今回はある時期から口をつぐんでしまった。1月11日、ダブル世界タイトルマッチの解説に訪れた時、1階級上のWBAスーパーバンタム級王者プーンサワットとの対戦についてジム側が否定。この時はまだフェザー級転向の可能性を模索していたが、ほとんどの新聞が「次は防衛戦」と報じた。王者のブログには転向推進派のファンから「逃げた」という批判コメントもあったようだ。「もうしゃべりません。みんな勝手なこと書くから」。新聞記者への不信感が出てきて当然だった。その後に何度かあった取材機会でもノーコメントだった。

 1月27日、バンタム級残留の発表時は、「バンタム級にはまだ強い選手がいる。まだバンタム級で自分のベストパフォーマンスはできていないから」とその理由を話した。これは完全な建前だろう。フェザー級の試合はさまざまな事情から組めなかったが、言い訳やグチは一切言わなかった。ジムを背負って立つ大黒柱だ。さまざまな葛藤を乗り越えて出した決断であることは、「責任は全部、自分が負います」という言葉に表れていた。

 大きな存在となった長谷川はこれから私たちに本音を話してくれなくなってしまうのではないか。もしかしてその時は足をすくわれてしまうのではないか。ちょっとした寂しさでそんな勝手な予感を感じていたころ。発表から4日後の1月31日、V10祝勝会で長谷川に会った。ピリピリしているかな?と思いつつ、着けていた腕時計が素敵だったので「いい時計やね」と褒めると、「実はね、これ、書いちゃだめですよ…」とその値段がわかるようにヒントを出してきた。ホッとした。いつものように自分の失敗談をこぼしてしまうおちゃめな長谷川穂積に戻っていた。「書いちゃだめですよ」。言われるたびに困ってしまうが、これからも取材の中でこの文句が出てくることを願っている。

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(2010年2月3日09時35分  スポーツ報知)

筆者略歴  菊地 陽子(きくち・ようこ)

02年入社。大阪府出身。文化社会部での宝塚歌劇、運動部でのオリックス担当などを経て、昨年からボクシング担当。リングサイドでの初取材では、ボクサーの鮮血が顔にかかって卒倒しそうになったが、今ではすっかり拳闘の魅力にハマっている。

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