日本相撲協会の理事選で貴乃花親方(37)=元横綱=に投票した“けじめ”として、2日深夜に協会退職を表明していた宮城野部屋付きの安治川親方(36)=元幕内光法=が3日夜、両国国技館で緊急会見し、「退職発言」を撤回した。立浪一門の理事である友綱親方(元関脇魁輝)に伴われて会見を開き、心変わりを釈明。人騒がせな廃業騒動はわずか1日足らずで収束した。
◇ ◇
深夜の退職表明会見は何だったのか?気まずげに顔をしかめ、安治川親方が協会残留を表明した。「友綱親方、伊勢ケ浜親方、立浪一門の親方のご厚意で協会に残らせていただくことになりました。勉強し直して、頑張っていこうと思います」。世間を騒がせた廃業騒動は20時間半で収束した。
この日、退職を伝える報道を見て「びっくりした」という友綱親方は朝から動いた。「安治川」名跡の貸し主・安美錦の師匠である伊勢ケ浜親方、安治川親方と話し合い、午後も安治川親方を慰留。「すぐに(協会を)出て行く必要はない」と造反を不問にし、退職を思いとどまらせた。
前日の会見で、安治川親方は「一門の親方にも迷惑をかけたので(退職を)決意した」と“造反のけじめ”を強調していた。貴乃花派との事前接触や、金銭で票を売った疑いも否定。同門の大島親方を結果的に落選させ「反省している」としながらも「すがすがしい気持ち」と言い切った。
それがなぜ1日足らずで翻意となったのか。友綱親方は「一門はそういう(辞めさせる)方向で話をしていない」と説明したという。安治川親方は「辞めたいというわけではなかった」と退職の撤回を説明。今後は「自分のできる範囲で仕事をこなしていく。ほかにできることがあれば頑張る」と前向きに話した。
しかし、2年後の選挙でも貴乃花親方に投票する可能性については「状況によるが、2年分の働きぶりを見て」と否定しなかった。また部屋の力士にも“一門の縛り”にこだわる必要がないと指導する考えも示した。
立浪一門に戻りながら、心は貴乃花派に残したまま。そう、とられても仕方がない撤回会見となった。煮え切らない姿に友綱親方は「彼が名跡を借りているという考えが甘いということ」と指摘した。もう1人の造反者捜しを友綱親方は否定したが、一門内に不協和音が残ることは確実だ。