
黒い雨、被曝実態解明を ウラン236も測定進める…広島大
原爆投下後に降った「黒い雨」などの実態解明を進める研究者らの報告会が1日、広島市中区の区地域福祉センターで開かれた。土壌から黒い雨に由来するとみられる放射性物質を初めて確認した、広島大原爆放射線医科学研究所の星正治教授は「研究をさらに進めて、黒い雨による被曝の程度を明らかにしたい」と語った。
「セシウム137」の検出報告
星教授らのグループは、広島郊外の民家床下の土壌から放射性物質「セシウム137」を確認した研究成果を発表。星教授らは、1950年代以降の核実験の影響がないとみられる土壌を、45〜49年に建てられた民家の床下から採取。爆心地から約7キロの「大雨地域」の民家1軒と、同約8キロの「小雨地域」の民家1軒の土壌から放射性物質「セシウム137」を検出した。現在は、放射線などの人体への影響はない。
星教授らは、さらに広島原爆に用いられた「ウラン235」から生成される「ウラン236」など、複数の放射性物質の測定を進め、今春にも黒い雨による被曝線量を解明したい考え。被曝線量の解析には、旧ソ連のセミパラチンスク核実験場周辺での被曝線量の計算式を応用するという。
報告会ではほかに、きのこ雲の発生から、黒い雨などの放射性降下物が落ちてくるまでを、最新の気象シミュレーションで再現することなどが提案された。
黒い雨 原爆のさく裂直後に舞い上がった灰やすすが、上空の水分と結びついて降った、放射性物質を含んだ雨。国は、広島では爆心地から北西方向に長さ29キロ、幅15キロを降雨地域に指定。このうち長さ19キロ、幅11キロが大雨地域、周辺が小雨地域で、大雨地域にいた人ががんなどになれば、被爆者と認定される。
(2010年2月2日 読売新聞)

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