2005年02月27日

不思議展・見世物としてのコルプス(完結編)

テーマ:事件・ニュース・メディア
そして、最大の衝撃に私は襲われた。
標本は日本人ではなく、全て中国から輸入されたもの
だったのだ。本当に遺志は確認されたのか。
大熊猫を殺すと人間が死刑になるという国で。
月例別胎児をまるごと標本にして、
複数展示することに何の意味があるのか。
生命の尊さ?一見異常無き胎児遺体を、
成長時期ごとに合意を得つつ標本にするのは気の
遠くなるほどの年月と熱意が必要だっただろう。
もし本当に合意を得て行ったのであれば誠に偉業
かもしれぬ。しかし、胎児の成長過程写真は現在の
マイクロスコープ技術で生きたものを順を追って
撮ることが出来るのであり、今回のように小さな遺体
を累々と並べることには反感を持たざるを得なかった。
 
ラストの衝撃は、足早に会場を去る私の目に映って
しまった「グッズ売り場」だ。ウェブサイトには
CDロムと図録しか無いような印象を持たせるのにも
かかわらず、死体絵葉書、死体Quoカード、
内臓ボールペン
…と眉をしかめる商魂たくましき
悪趣味グッズが売られているのだ。
これは、勉強の名を借りた現代の見世物小屋なのか?
かつての衛生博覧会の方が、蝋細工の分
無邪気だったのではないか。
 
そしてまたまた私をゲンナリさせたのが、宙づりにされて
様々なポーズで踊る、骨格標本と呼ぶのもはばかられる白骨たち
 
「触れる」脳と死体標本のコーナーには長蛇の列が出来ていた。
私はハナから並ばなかった。見学者が多すぎるのか警備員が
足りないのか、触れる標本ではない「触らないでください」
標本にも触りまくる見学者たちを見て辟易していたし、
「触れる」標本の小腸部分は遠目にも触られすぎて
破れているのが見てとれたからだ。興味よりもそれらは、
私にただ悲しみしか引き起こさなかった。
 
確かに勉強にはなるだろう。ふつうの人の勉強には。
しかし、あの巫山戯たかのような剖出はいったい誰が、
なぜかくのごとく行ったのか。見に来ていた(おそらく)
一般の若き女性の一言が、この展示の本質を奇しくも言い表していた。
「どうしてみんな、顔こんなにしちゃうんだろうね。
 ふつうでもいいのに。」
 
気まぐれのように歯肉を一部だけ切除してみたり、
乳房を剃り落としてみたり、悪夢の前衛芸術のように
アシンメトリーな切断をそこここに加えてみたり…。
 
50体もの遺体をもって、意図不明な剖出デザインを行った
本展示は、私の心に苦い記憶となって焼き付いたのであった。




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コメント

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1 ■同感です。

はじめまして。
私も先日、人体の不思議展に行って来ました。
私は医師ではないのですがちょっと人体の事を
勉強してみょうかなというぐらいな気持ちで行って来ました。
しかしまったくioyblogさんと同じ感想です。
・無意味と思われる人体ポーズ。
・ここまで切る必要は??と思われる標本。
・脳を重さを体験できるコーナー。
 (脳と同じぐらいのおもりか何かでよいのでは?
  本物使わなくたって良いでしょ。
  大勢の人が触るもんだから脳が擦りへってる)
・人体を触れるコーナー
 (別に触らなくたって良いでしょ)

・金稼ぎとしか思われない土産コーナー。
 (正直ショックでした)

こんな感想ばっかです。
残念なのは。こんな感想を持っている人が
意外と少ないということ。

もう二度と行きません。

2 ■ふ~さん

はじめまして、コメントありがとうございます。
人体の不思議展、とても期待して行ったのですが
展示方法に大きな疑問を覚えてしまいました。
なんだかもやもやしてしまうのですよね…。
私が見た時点で、すでに腸が破れていたりして
いたいたしい感じがしました。
刺激的にすぎる印象です。
その後、帰途にあったみやげ物コーナーは
ふだんだったら悪趣味グッズとして笑えそうな
ものですが、ご遺体を見たばかりではちょっと
きびしいものがありました。

人体を知るためならば、もう少しほかのやりようは
ないのかしらと思わずにいられません。
私ももう行かないと思います…。

3 ■全く同感です

過去に見学に行きました。展示の最後に触ることの出来る標本が人々に触られ過ぎて損傷しているのを私も見てとても辛い気持ちになりました。献体された方も自分がまさか、そのようななぶりものにされようとは考えもしなかったでしょう。もはや、あそこに展示されている方々は標本ではなく、切り刻まれた御遺体でしか無いと思います。触れる事ができる標本に触れることが出来なかったのは、きっと献体された方の御無念が私の心に伝わって来たからではないかと思います。あのような展示に行ってしまい、魂が穢れてしまった気がします。私は今、興味本意であのような展示に行ってしまった事を心から悔やんでおります。また、あの御遺体方が長久の間、数多の人々の晒し者になるのかと思うと気の毒でなりません。何とかあのさ迷える屍を土に還すことは出来ないのでしょうか。思い出すと、禊たくなるような過去の記憶になっています。

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