更なるお願い
・・・道財務局が旧「北部軍司令部望旧指揮所」を年内に壊す計画!!
札幌郷土を掘る会世話人 堀口晃
旧「北部軍司令部望旧指揮所」保存につきましては、様々なご協力に感謝申し
上げます。
残念ながら、情勢は緊急事態となっております。どうか皆様、札幌市長と道財
務局長、文化庁長官への更なる要請文、要請メール、ファックス、電話をお願
い申し上げます。(要請先は文末尾記述)
報告
札幌市議会総務委員会は、保存要請等の陳情(3団体・・・札幌郷土を掘る
会、道歴史教育者協議会、幌北9条の会)を賛成2人で少数否決した(12人
中)。・・・別途、市などへの要請として、道歴史研究者協議会が連名で、ま
た、道産業考古学会が建物の評価と要請を行った。)
道産業考古学会・・・建物は文化財として多面的かつ貴重な価値があるとの
「評価書」を発表!!
(なお、産業考古学会は、小樽運河の保存や夕張石炭村設置、美唄の竪坑保
存、函館要塞、函館ドックのクレーン保存、上士幌・斜里鉄道橋の保存などを
手がけて来られた専門家集団である)
札幌市は今まで主として「平和都市宣言」の都市として「防空指揮所」を保存
するか否かという観点で結論を出して来た。
今回専門家集団であり、30年来文化財保存に活躍され、実績を持つ道産業考
古学会による「防空指揮所」の調査が行われ、土木建築学の観点からも評価さ
れた。同会は保存要請も、札幌市長、道財務局、文化庁などへ出された 。
建物に関する現況と市・財務局、文化庁の対応
道財務局(国家機関)
― 道財務局によると、年内に、「防空指揮所」を取り壊し、国家公務員宿舎
を建てる計画と言う。
― 建物を市が引き受けると言うなら、壊さないで市に譲る用意はある。
文化庁
― 2002年に建物のある地元からの保存要請があった。当時の登録有形文
化財候補が50に絞られた中には当該建築物は入っていなかった。地元の行政
の意志は重く受け止められる。(しかし、当の札幌市からは保存要請はない)
札幌市
保存要請の趣旨はよくわかるが、財政難で保存要請はできない。モニュメン
トをつくり、展示などには努力したい。
「防空指揮所」を市が管理していくのに、内部の補修などで約5億円かか
る。他に維持費・修理費もかかるであろう。
わたし達保存を要請している者たちの考えと活動
【金がかかるということについて】
1、 まず、建物の保存価値を多面的に明らかにした上で、金の問題を論ずべ
きであること。
2、 我々が保存要請している土地面積は建物の敷地のことであり、それは全
体の敷地の約十分の一であること。そして、市から要請があれば、国は市が建
物とその敷地の取得要請に応ずる用意があることがわかっていること。市の支
払いに対して国は、余裕(年賦などか)を与えてもよい考えでもあるようだ。
われわれとしては、国も主体的に動くべき事柄であるので、国はせめて
建物の土地代は市へ無償供与してもよいと考える。建物を壊すだけでも、数千
万円〜1億円くらいかかるという話もある。土地代を国が市から徴収する場合
でも、建物を壊す費用を差し引いてもよいと考える。上士幌鉄道橋保存に関し
て、費用を上士幌町がもらったと聴いている。
3、 戦跡であるので、補修してもらうとかえって困るのである。そのままに
しておくのが、この施設の場合一番大事なことである。中に入らないで外から
見るだけでもよいのである。こうすれば、金はほとんどっからないのである。
【市の「壊した代わりにモニュメントを建て、展示に努力する」について】
壊したとしたら、やるべきこととして当然のことであり、これは、壊すこと
の修正案にもならない。実物があるかないかが決定的な要素である。
【再度の要請活動を行った】
10月24日と25日に札幌郷土を掘る会・道歴史教育者協議会・道歴史研究
者協議会の連名で札幌市長へ要請活動を行った。
要請内容
1) 札幌市として早急に「防空指揮所」の保存価値を多角的に調査する。
2) 上記の結果を受け、市は文化庁に登録有形文化財の指定を早急に要請
する。
3) 上記2点の結論が出るまで財務省、道財務局に同施設の解体延期を緊
急に要請する。
********************************************************************
北部軍司令部防空指揮所保存要請先
電話 FAX メール
市長 上田文雄(秘書部秘書課) 011-211-2022 011-218-5175
hisho@city.sapporo.jp
個人 上田 文雄 札幌市長 http://www.uedafumio.jp/
市議会総務委員会委員長 細川正人:自民党控室
011-211-3202 011-218-5119
総務委員(民主・市民連合)控室 011-211-3212 011-218-5121
同上 (自民) 控室 011-211-3207 011-218-5119
同上 (公明) 控室 011-211-3219
同上 (共産) 控室 011-211-3221 011-218-5124
同上 (市民ネット) 控室 011-211-3186
同上 (市政改革ク) 控室 011-211-3240
同上 (自民維新の会) 控室 011-211-3235
財務省 ホ−ムページ: www.moj.go.jp/index.htm ご意見箱
道財務局局長 向 外喜治 011-709-2311 011-709-2191
kouhou@mof-hokkaido.go.jp
文部科学省 電話03(5253)4111(代) voice@mext.go.jp
文化庁長官 青木 保
〒100−8959東京都千代田区丸の内2丁目5番1号
参考
札幌市の旧日本陸軍北部軍司令部防空指揮所遺構に関する評価書
2007年10月20日
北海道産業考古学会
産業考古学会
北海道産業考古学会と産業考古学会は、産業考古学的見地および近代化遺産
が地域の発展を記録する文化的な遺産であるとの観点から、戦時土木遺産でも
ある標記近代化遺産を以下の観点から評価いたします。
1.北海道で最大の単一戦時土木遺産である。
北部軍司令部防空指揮所遺構は、大規模な土木遺産である。縦横各30m、
高さ15mの角柱型をなし、壁面は壁厚さ2m、天井部分は厚さ1m、地下部
分土台は地表より10mに達し、側方向の榴弾砲攻撃、上方向の1トン爆弾攻
撃にも十分耐え得る強度設計がなされている。鉄筋は直径1cmで多数の使用
が認められ、コンクリ−ト材質は戦時下のため現代のものに比べ最高の品質と
は言えないが、表面剥離も少なく立派な原型を留めている。これは、平成18
年まで、戦後完全放置ではなく、アメリカ駐留軍、警察予備隊、自衛隊が継続
使用してきた使用保存の経緯と入念な施工管理があった証明である。
2.方形形態は戦時遺産として類を見ない独特の形式の近代化遺産である。
戦時軍遺産として、ア−チ式コンクリ−ト天井を有する土木構造物は全国に
多いが、堅牢な壁材に支えられた平面天井を持つ形式は現存する戦史遺蹟の中
では全国的にも珍しい貴重な遺構である。これは、近代化遺蹟としてア−チ式
コンクリ−ト天井、レンガ側壁混用の明治時代の仏式要塞(マジノ要塞)が日
本では大正、昭和期も技術継承されたが、昭和期のコンクリ−ト全盛時代を証
明する戦史遺構は極めて少ない。これは、文化財規定が建設建造で50年以上
という規定、近代化遺産の保存対象が明治時代のレンガ構造物に限定されてき
た文化庁行政の問題点でもあるが、コンクリ−ト建造物評価も高まっている現
在、建設60年以上を経たこの指揮所遺構は十分な文化財価値を持つものである。
3.10m地下構造と吹き抜け構造を持つ遺蹟は軍関係施設のみである。
内部調査では、地表からの深さ10mに達する地下構造の堅牢さは現代の土
木構造物には見られない独特の形式である。最近のホテルビル形式では1階部
分の吹き抜け構造を持つ建築は珍しくないが、昭和18年の時点で20m四
方、高さ20mの空間(中央に大机を置き、地図を敷いて疑似艦船、軍団模型
を配置、情報入手と時間経緯により多数の助手が移動させ、司令が判断作戦指
示する。四方壁には必要な作戦箇所の大型地図が掲示されている独自吹き抜け
空間)は、この空間以外部分は太さ60cmの多数の柱で支えられ、基本的に
はバル−ンフレ−ム構造を取っている。天井材と協同して、1トン爆弾からも
この作戦室空間を十分守りうる構造と強度を保っている(ちなみに、戦後は地
表、地上部分には床材を入れて、地下と合わせ3階構造に分離されて使用され
てきた)。
4.表面部分の保存状態は良好で、今後の十分な保存強度を有している。
解体必要の根拠とされる部分は、壁部分の表面剥離、2階に上がる側面階段
部分の劣化状態であるが、壁部分は道内の土木構造物(例えば、上士幌町コン
クリ−トア−チ橋梁群1936年建設)と比べても良好のものであり、冬季凍
上劣化は殆ど進んでいない。上士幌町ア−チ橋(1936年物件)の土木学会
北海道支部技師のシュミットハンマ−打撃試験による検査結果では、凍上劣化
部分は表面より深さ20cmまでで、50cmより深い部分では建設当時の強
度が確認された。1943年(昭和18年)建設で7年後の建造物であり、都
市部で使用され、戦後も補修継続使用されてきたこの遺構は、表面から
20cmより深い内部から十分な建造当初の強度を保っている、と推定され、
保存上全く問題ない。ただし、階段部分には補強修理は必要だが、その工事も
費用も極めて僅少である。
5.函館要塞遺構から第二次大戦軍遺構までの土木技術発展史を示す実物標本
である。
道内には、函館市の函館要塞(明治32〜34年)、同戸井砲台(昭和15
年)、計根別陸上機掩体壕、広尾海岸と花咲海岸のト−チカ群、根室港ハッタ
ラ浜の海底電線沖揚げ所(明治45年)、宗谷岬の旧海軍望楼(明治34年)
といった戦時土木遺産が点在保存されているが、この指揮所遺構はその戦史遺
構群の中核的遺産として位置付けられる。また、明治時代から昭和20年まで
の戦時土木技術の発展史の貴重な現物遺産としても、学術的研究価値を持つも
のである。函館市は平成9年から5年間をかけ、函館市の中心的な観光遺産と
して整備し、今日、多くの全国からの観光客集客に成功した。このように、戦
史遺産は地元の自治体活性化にとり貴重な歴史遺産である。歴史遺産を先代が
保存活動で残してきた自治体は後世にその恩恵を必ず受けている。これは、道
内でも1980年代に都市近代化として、運河全面埋め立て、関連石積倉庫群
全解体を提案、強行決定しようとした小樽市が、全国的歴史的町並み活用都市
再生運動で譲歩し、半面の解体で整備、今日の歴史観光都市小樽市の発展と
なった事例を見ても明らかである。
参考文献
(1)北海道教育委員会編『北海道の近代化遺産』(文化庁調査委託)(平成
9年)
(2)北海道産業考古学会主催全国シンポジウム資料「函館市の産業遺産−函
館要塞と戸井コンクリ−トア−チ橋」(平成11年10月6日、函館市)
(3) 同 「上士幌鉄道ア−チ橋と産業遺産の保存・活用」
(平成9年7月26日、上士幌町)
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中国帰還者連絡会WEBサイト
http://www.tyuukiren.org 撫順の奇蹟を受け継ぐMLのサイト
http://www.egroups.co.jp/group/uketugu/
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・・・道財務局が旧「北部軍司令部望旧指揮所」を年内に壊す計画!!
札幌郷土を掘る会世話人 堀口晃
旧「北部軍司令部望旧指揮所」保存につきましては、様々なご協力に感謝申し
上げます。
残念ながら、情勢は緊急事態となっております。どうか皆様、札幌市長と道財
務局長、文化庁長官への更なる要請文、要請メール、ファックス、電話をお願
い申し上げます。(要請先は文末尾記述)
報告
札幌市議会総務委員会は、保存要請等の陳情(3団体・・・札幌郷土を掘る
会、道歴史教育者協議会、幌北9条の会)を賛成2人で少数否決した(12人
中)。・・・別途、市などへの要請として、道歴史研究者協議会が連名で、ま
た、道産業考古学会が建物の評価と要請を行った。)
道産業考古学会・・・建物は文化財として多面的かつ貴重な価値があるとの
「評価書」を発表!!
(なお、産業考古学会は、小樽運河の保存や夕張石炭村設置、美唄の竪坑保
存、函館要塞、函館ドックのクレーン保存、上士幌・斜里鉄道橋の保存などを
手がけて来られた専門家集団である)
札幌市は今まで主として「平和都市宣言」の都市として「防空指揮所」を保存
するか否かという観点で結論を出して来た。
今回専門家集団であり、30年来文化財保存に活躍され、実績を持つ道産業考
古学会による「防空指揮所」の調査が行われ、土木建築学の観点からも評価さ
れた。同会は保存要請も、札幌市長、道財務局、文化庁などへ出された 。
建物に関する現況と市・財務局、文化庁の対応
道財務局(国家機関)
― 道財務局によると、年内に、「防空指揮所」を取り壊し、国家公務員宿舎
を建てる計画と言う。
― 建物を市が引き受けると言うなら、壊さないで市に譲る用意はある。
文化庁
― 2002年に建物のある地元からの保存要請があった。当時の登録有形文
化財候補が50に絞られた中には当該建築物は入っていなかった。地元の行政
の意志は重く受け止められる。(しかし、当の札幌市からは保存要請はない)
札幌市
保存要請の趣旨はよくわかるが、財政難で保存要請はできない。モニュメン
トをつくり、展示などには努力したい。
「防空指揮所」を市が管理していくのに、内部の補修などで約5億円かか
る。他に維持費・修理費もかかるであろう。
わたし達保存を要請している者たちの考えと活動
【金がかかるということについて】
1、 まず、建物の保存価値を多面的に明らかにした上で、金の問題を論ずべ
きであること。
2、 我々が保存要請している土地面積は建物の敷地のことであり、それは全
体の敷地の約十分の一であること。そして、市から要請があれば、国は市が建
物とその敷地の取得要請に応ずる用意があることがわかっていること。市の支
払いに対して国は、余裕(年賦などか)を与えてもよい考えでもあるようだ。
われわれとしては、国も主体的に動くべき事柄であるので、国はせめて
建物の土地代は市へ無償供与してもよいと考える。建物を壊すだけでも、数千
万円〜1億円くらいかかるという話もある。土地代を国が市から徴収する場合
でも、建物を壊す費用を差し引いてもよいと考える。上士幌鉄道橋保存に関し
て、費用を上士幌町がもらったと聴いている。
3、 戦跡であるので、補修してもらうとかえって困るのである。そのままに
しておくのが、この施設の場合一番大事なことである。中に入らないで外から
見るだけでもよいのである。こうすれば、金はほとんどっからないのである。
【市の「壊した代わりにモニュメントを建て、展示に努力する」について】
壊したとしたら、やるべきこととして当然のことであり、これは、壊すこと
の修正案にもならない。実物があるかないかが決定的な要素である。
【再度の要請活動を行った】
10月24日と25日に札幌郷土を掘る会・道歴史教育者協議会・道歴史研究
者協議会の連名で札幌市長へ要請活動を行った。
要請内容
1) 札幌市として早急に「防空指揮所」の保存価値を多角的に調査する。
2) 上記の結果を受け、市は文化庁に登録有形文化財の指定を早急に要請
する。
3) 上記2点の結論が出るまで財務省、道財務局に同施設の解体延期を緊
急に要請する。
********************************************************************
北部軍司令部防空指揮所保存要請先
電話 FAX メール
市長 上田文雄(秘書部秘書課) 011-211-2022 011-218-5175
hisho@city.sapporo.jp
個人 上田 文雄 札幌市長 http://www.uedafumio.jp/
市議会総務委員会委員長 細川正人:自民党控室
011-211-3202 011-218-5119
総務委員(民主・市民連合)控室 011-211-3212 011-218-5121
同上 (自民) 控室 011-211-3207 011-218-5119
同上 (公明) 控室 011-211-3219
同上 (共産) 控室 011-211-3221 011-218-5124
同上 (市民ネット) 控室 011-211-3186
同上 (市政改革ク) 控室 011-211-3240
同上 (自民維新の会) 控室 011-211-3235
財務省 ホ−ムページ: www.moj.go.jp/index.htm ご意見箱
道財務局局長 向 外喜治 011-709-2311 011-709-2191
kouhou@mof-hokkaido.go.jp
文部科学省 電話03(5253)4111(代) voice@mext.go.jp
文化庁長官 青木 保
〒100−8959東京都千代田区丸の内2丁目5番1号
参考
札幌市の旧日本陸軍北部軍司令部防空指揮所遺構に関する評価書
2007年10月20日
北海道産業考古学会
産業考古学会
北海道産業考古学会と産業考古学会は、産業考古学的見地および近代化遺産
が地域の発展を記録する文化的な遺産であるとの観点から、戦時土木遺産でも
ある標記近代化遺産を以下の観点から評価いたします。
1.北海道で最大の単一戦時土木遺産である。
北部軍司令部防空指揮所遺構は、大規模な土木遺産である。縦横各30m、
高さ15mの角柱型をなし、壁面は壁厚さ2m、天井部分は厚さ1m、地下部
分土台は地表より10mに達し、側方向の榴弾砲攻撃、上方向の1トン爆弾攻
撃にも十分耐え得る強度設計がなされている。鉄筋は直径1cmで多数の使用
が認められ、コンクリ−ト材質は戦時下のため現代のものに比べ最高の品質と
は言えないが、表面剥離も少なく立派な原型を留めている。これは、平成18
年まで、戦後完全放置ではなく、アメリカ駐留軍、警察予備隊、自衛隊が継続
使用してきた使用保存の経緯と入念な施工管理があった証明である。
2.方形形態は戦時遺産として類を見ない独特の形式の近代化遺産である。
戦時軍遺産として、ア−チ式コンクリ−ト天井を有する土木構造物は全国に
多いが、堅牢な壁材に支えられた平面天井を持つ形式は現存する戦史遺蹟の中
では全国的にも珍しい貴重な遺構である。これは、近代化遺蹟としてア−チ式
コンクリ−ト天井、レンガ側壁混用の明治時代の仏式要塞(マジノ要塞)が日
本では大正、昭和期も技術継承されたが、昭和期のコンクリ−ト全盛時代を証
明する戦史遺構は極めて少ない。これは、文化財規定が建設建造で50年以上
という規定、近代化遺産の保存対象が明治時代のレンガ構造物に限定されてき
た文化庁行政の問題点でもあるが、コンクリ−ト建造物評価も高まっている現
在、建設60年以上を経たこの指揮所遺構は十分な文化財価値を持つものである。
3.10m地下構造と吹き抜け構造を持つ遺蹟は軍関係施設のみである。
内部調査では、地表からの深さ10mに達する地下構造の堅牢さは現代の土
木構造物には見られない独特の形式である。最近のホテルビル形式では1階部
分の吹き抜け構造を持つ建築は珍しくないが、昭和18年の時点で20m四
方、高さ20mの空間(中央に大机を置き、地図を敷いて疑似艦船、軍団模型
を配置、情報入手と時間経緯により多数の助手が移動させ、司令が判断作戦指
示する。四方壁には必要な作戦箇所の大型地図が掲示されている独自吹き抜け
空間)は、この空間以外部分は太さ60cmの多数の柱で支えられ、基本的に
はバル−ンフレ−ム構造を取っている。天井材と協同して、1トン爆弾からも
この作戦室空間を十分守りうる構造と強度を保っている(ちなみに、戦後は地
表、地上部分には床材を入れて、地下と合わせ3階構造に分離されて使用され
てきた)。
4.表面部分の保存状態は良好で、今後の十分な保存強度を有している。
解体必要の根拠とされる部分は、壁部分の表面剥離、2階に上がる側面階段
部分の劣化状態であるが、壁部分は道内の土木構造物(例えば、上士幌町コン
クリ−トア−チ橋梁群1936年建設)と比べても良好のものであり、冬季凍
上劣化は殆ど進んでいない。上士幌町ア−チ橋(1936年物件)の土木学会
北海道支部技師のシュミットハンマ−打撃試験による検査結果では、凍上劣化
部分は表面より深さ20cmまでで、50cmより深い部分では建設当時の強
度が確認された。1943年(昭和18年)建設で7年後の建造物であり、都
市部で使用され、戦後も補修継続使用されてきたこの遺構は、表面から
20cmより深い内部から十分な建造当初の強度を保っている、と推定され、
保存上全く問題ない。ただし、階段部分には補強修理は必要だが、その工事も
費用も極めて僅少である。
5.函館要塞遺構から第二次大戦軍遺構までの土木技術発展史を示す実物標本
である。
道内には、函館市の函館要塞(明治32〜34年)、同戸井砲台(昭和15
年)、計根別陸上機掩体壕、広尾海岸と花咲海岸のト−チカ群、根室港ハッタ
ラ浜の海底電線沖揚げ所(明治45年)、宗谷岬の旧海軍望楼(明治34年)
といった戦時土木遺産が点在保存されているが、この指揮所遺構はその戦史遺
構群の中核的遺産として位置付けられる。また、明治時代から昭和20年まで
の戦時土木技術の発展史の貴重な現物遺産としても、学術的研究価値を持つも
のである。函館市は平成9年から5年間をかけ、函館市の中心的な観光遺産と
して整備し、今日、多くの全国からの観光客集客に成功した。このように、戦
史遺産は地元の自治体活性化にとり貴重な歴史遺産である。歴史遺産を先代が
保存活動で残してきた自治体は後世にその恩恵を必ず受けている。これは、道
内でも1980年代に都市近代化として、運河全面埋め立て、関連石積倉庫群
全解体を提案、強行決定しようとした小樽市が、全国的歴史的町並み活用都市
再生運動で譲歩し、半面の解体で整備、今日の歴史観光都市小樽市の発展と
なった事例を見ても明らかである。
参考文献
(1)北海道教育委員会編『北海道の近代化遺産』(文化庁調査委託)(平成
9年)
(2)北海道産業考古学会主催全国シンポジウム資料「函館市の産業遺産−函
館要塞と戸井コンクリ−トア−チ橋」(平成11年10月6日、函館市)
(3) 同 「上士幌鉄道ア−チ橋と産業遺産の保存・活用」
(平成9年7月26日、上士幌町)
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中国帰還者連絡会WEBサイト
http://www.tyuukiren.org 撫順の奇蹟を受け継ぐMLのサイト
http://www.egroups.co.jp/group/uketugu/
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