モーやんの回歓録
「編集の鬼」と呼ばれた井上元社長の素顔
2010年02月03日 13:08 | フォルダ : 回歓録
幹部社員の放漫経営に端を発した騒動でアントニオ猪木が新日本プロレス、ジャイアント馬場が全日本プロレスを立ち上げ日本プロレスを離脱したのが1972年(昭和47年)。年が明けた73年4月20日の吉井町大会で日プロは幕を下ろした。だが分裂、独立騒動の後遺症は大きくスター選手不在も手伝って新日、全日とも客の入りが悪く前途多難な船出となった。それに伴ってプロレスを売り物にしてきた東京スポーツもプロレス面の縮小を編集局では検討したが、井上社長(当時)の「わが社はプロレスと共に育ってきた。プロレス界に活気がみられない今こそ、社を上げてバックアップし第2の黄金時代を到来させるべきだ。それが本紙のさらなる飛躍につながる事を肝に銘じて新聞を作れ」の大号令の元、原稿の書き方、見出し、リングサイドでのカメラマンの位置取りなど、どうすればよりインパクトのある紙面ができるかを徹底的に議論。74年には井上社長の発案で「東京スポーツプロレス大賞」を設立してバックアップした。栄えある第1回MVPには同年3月19日の蔵前大会でストロング・小林を撃破した猪木が選ばれた。
マット界を陰で支えた井上社長は、今年、区切りの創刊50周年を迎えた東京スポーツの礎を築いた。業界関係者から「編集の鬼」と呼ばれた社長と私が初めて言葉を交わしたのは入社して1週間ほどした、とある日の午前。それはそれは衝撃的な出会いだった。
編集局でタバコをふかしながら、刷り上ったばかりの新聞に目を通していると右手に一升瓶、左手にコップを持った中年の男がフラッと侵入してきた。その出で立ちは肩よりも長い髪をポマードでガッチリ固め、黒ブチの大きなメガネをかけ、顔は酒焼けしたのか赤らんでいる。しかも上下薄紫色のパンタロンスーツにフリルのついた絹のシャツ、足元はといえばハイヒールときた。どこから見ても「やばい酔っ払い」なのに、先輩は誰一人としてとがめようとしない。仕方なく私が「おっさん、どっから入ってきたんだ。勝手に入ってきてもらっちゃ困るんだけど。出て行ってもらえますか」と肩に手をやって追い出しかけると、超ド級のカミナリが落ちてきた。「このバカ野郎。誰に向かって口を聞いてんだ。オレが社長の井上だ。社長の顔ぐらい覚えておけボケ助」と怒鳴り返された。
「エッ。ウソー。ホント?」。まさかの出来事に口も利けずポカンとしていると、編集局長が素っ飛んできて「1週間前に入った新入社員です。今日にもあいさつに連れて行こうと思っていたところなんです。勘弁してやってください」と米つきバッタよろしく頭を下げるではないか。「真っ昼間から一升瓶を抱え、酔っ払ってる社長なんてどうなってんだ。こんなんで大丈夫かこの会社?」と思いつつも私も編集局長に倣って「すみませんでした。以後気をつけます」と頭を下げた。これが縁ではないが、私は井上社長が病気で亡くなる76年12月までの6年間に、酒がらみで何度か口論しクビを宣告されたこともある。
その顛末は次回のお楽しみ。
マット界を陰で支えた井上社長は、今年、区切りの創刊50周年を迎えた東京スポーツの礎を築いた。業界関係者から「編集の鬼」と呼ばれた社長と私が初めて言葉を交わしたのは入社して1週間ほどした、とある日の午前。それはそれは衝撃的な出会いだった。
編集局でタバコをふかしながら、刷り上ったばかりの新聞に目を通していると右手に一升瓶、左手にコップを持った中年の男がフラッと侵入してきた。その出で立ちは肩よりも長い髪をポマードでガッチリ固め、黒ブチの大きなメガネをかけ、顔は酒焼けしたのか赤らんでいる。しかも上下薄紫色のパンタロンスーツにフリルのついた絹のシャツ、足元はといえばハイヒールときた。どこから見ても「やばい酔っ払い」なのに、先輩は誰一人としてとがめようとしない。仕方なく私が「おっさん、どっから入ってきたんだ。勝手に入ってきてもらっちゃ困るんだけど。出て行ってもらえますか」と肩に手をやって追い出しかけると、超ド級のカミナリが落ちてきた。「このバカ野郎。誰に向かって口を聞いてんだ。オレが社長の井上だ。社長の顔ぐらい覚えておけボケ助」と怒鳴り返された。
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その顛末は次回のお楽しみ。
本日の見出し
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