前原誠司国土交通相は2日、全国の高速道路のうち北海道・道央自動車道の士別剣淵―岩見沢(延長139キロ)など37路線50区間について、6月をめどに実験的に無料化すると発表した。交通量の少ない地方路線が中心。自動料金収受システム(ETC)の利用や車種にかかわらず、すべての車が対象となる。期間は来年3月末まで。大分県内からは大分自動車道、東九州自動車道の大分インターチェンジ(IC)―佐伯IC間=48キロ、宇佐別府道路、日出バイパスの宇佐IC―日出IC間=31キロ、大分自動車道日出ジャンクション(JCT)―速見IC間=3キロ=の各路線が対象区間に選ばれた。
高速道路の無料化は、民主党が2009年の衆院選マニフェスト(政権公約)で掲げた目玉施策の一つで、流通コストの引き下げや地域・経済の活性化が狙い。10年度の予算は1千億円で、対象区間の総延長は1626キロ。対象外の首都高速と阪神高速を除き、供用中の高速道路の約18%に当たる。
ETC利用の乗用車と二輪車に限って地方圏の休日(土日祝日)の通行料を上限千円とした大幅割引で、渋滞があまり起きなかった路線を中心に選んだ。
東名高速や名神高速など交通量が多く渋滞による影響が大きい区間や、公共交通機関への影響が大きいと指摘される本州四国連絡道路や東京湾アクアラインなどは無料化の対象から外された。
民主党は12年度に向け、段階的に無料化を実施する方針。国交省は、高速道路や並行する一般道で交通量の変化などを調査。地域経済への波及効果や公共交通機関への影響も分析し、11年度に実施する内容を検討する。
現在、宇佐別府道路宇佐―日出バイパス日出までは普通乗用車で片道千円、大分自動車道大分―東九州自動車道佐伯までは同じく1400円かかる(いずれも平日料金)。
県内反応
延伸待望する東九州道、建設の遅れ懸念も
2日、国土交通省が発表した高速道路無料化社会実験計画で大分―佐伯間や宇佐―日出間などが対象となったことについて、大分県内ではさまざまな反応が出ている。
大分市の釘宮磐市長は「国道197号など市内の渋滞解消に役立つ」と歓迎。佐伯市の西嶋泰義市長は「食観光や産業振興、地域の活性化に佐伯インターチェンジ開通時以上の経済効果を期待している」と話す。
ツーリズムおおいたの高松金生事務局長も「関西方面からカーフェリーを利用した観光客も増えるのでは。九州新幹線に対抗できる材料になるのではないか」と期待する。
一方、県バス協会の幸重綱二会長は「無料化でマイカー利用が増えれば、高速バスへの影響は避けられない。無料に対抗するのは非常に難しいが、これまで以上に良質なサービスの提供と安全運行を徹底していくしかない」と危機感を示した。
宇佐市の是永修治市長は観光客の増加による経済波及効果は歓迎するものの、宇佐以北について東九州自動車道が未完成であることから「利用料収入がなくなることで十分な財源が確保できず、延伸計画に遅れが出たり建設できないということはないようにしてほしい」と注文を付けた。
県トラック協会の橋本邦彦専務理事は「県内の運送業界では運送コストに占める高速道路料金の割合はあまり高くない。物流コストが安くなるということが先行すると、荷主側から運賃値下げの要求が出てくるという懸念がある」とし、無料化のメリットを疑問視している。
<ポイント>
高速道路の無料化
民主党が2009年の衆院選マニフェスト(政権公約)に掲げた目玉施策。物流コストが低下して物価が下がり、家庭の負担軽減になると同時に、地域活性化につながると主張している。10年度から無料化の社会実験を始め、12年度に完全実施する方針。ただ渋滞の悪化や公共交通機関への悪影響、二酸化炭素(CO2)の排出量増加などを懸念する声も根強い。
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