デイトナ200マイル・レースで結果を残したいノートンはある決断に踏み切りました。
それは従来のパイプ・フレームの使用をやめ、カウリングがそのまま強度部材となる
モノコック構造を
採用する事でした。 これにより
更なる軽量化が望めるはずでした。
ノートン JPN モノコック 1973年

この点、世界GPに復帰するにあたり、4サイクルで2サイクルに挑戦した
HONDA NR500も
同じ決断をしました。
HONDA NR500 1979年
ただ、ノートンとHONDAの決定的な違いは
エンジンの冷却方式でした。
HONDAは大馬力エンジンの発生する熱を冷却するため
水冷を選択しましたが、
ノートンは新エンジンの開発が、出来ない状況だったため、
空冷エンジンを採用せざるを得ませんでした。
(コマンド・エンジンのチューンナップ品)
このフレームの大きな特徴は
前輪直後のカウリングの形状です。
今までの
パイプフレームでは空気抵抗の軽減に努めてきたはずなのに
モノコックボディではいかにも空気抵抗の悪そうな形状になっています。

また、やはり、
エンジンの冷却問題も起きた様ですが、
当時の材料と技術では仕方なかったのでしょう。
モノコック・ボディの材質は
スチール板 ステンレス・スチール板でした。
(それでも
日本だったら
絶対に採用されないデザインです。)
ただ、1973年の
ノートンJPNモノコックの活躍は空力、軽量化、ハンドリングの向上が単に馬力ばかり
大きい相手なら互角以上に戦える事を証明しました。
(以外に空気抵抗は問題にならなかった様です。)
しかし、エンジンから発生する熱とそれが引き起こすトラブルは結局、解決出来ませんでした。
その結果、1974年型はフレームを従来のパイプ・フレームに戻さざるを得ませんでした。
ノートン JPN スペース・フレーム 1974年

やっとエンジンの前の邪魔板がとれ、エンジンは充分冷却出来る様になりました。
この辺りの経緯も
HONDA NR500 と似ています。
NR500は
メンテナンスやセッティング毎にエンジンを降ろさなければならない煩わしさから
通常のフレームに戻っていきました。
NR750 ルマン 1987年
DUCATI GP-9 のモノコック・フレーム 2009年

現在、バイクでモノコック構造が有効なのは
DUCATI の デスモセディッチ 2009位でしょう。
これはノートンやHONDAのモノコック構造と異なり、
カーボンファイバー製のエアクリーナー・ボックスを
ハンドルを支持するヘッド・パイプとして使い、
メインフレームはエンジンと
それに直結したスイング・アーム、と言う
内部骨格型のモノコック構造なので、
フレームが無いだけで
整備・セッティングは従来型と全く変らないのです。
今、
ノートンはロータリー・エンジンで再生を図っています。(520,参照)
名門の復活は成功するのでしょうか?
私は
ノートンの復活を望んで止みません。