きょうの社説 2010年2月3日

◎能登海釣り大会 知られざる観光資源に光を
 「能登ふるさと博」の夏季開催期間中、3カ月間にわたって催される大規模な海釣り大 会は、海に囲まれた能登の魅力を再発見する試みだ。風光明媚(めいび)な海岸線は変化に富み、あらゆる種類の釣りが楽しめる。まさに太公望たちの「楽園」であり、知られざる観光資源といってよい。多くの釣りファンを呼び込み、能登の素晴らしさを伝えたい。

 能登の強みは、冬を除けば、多少の悪天候でも必ず竿を出せる場所があるところだ。海 釣りは通常、海が荒れていたり、風が強かったりすると、釣りにならない場合が多い。それが釣行計画を練るときの一番のリスクになるが、能登であれば、外浦で波が高くて釣りにならなくても、波静かな内浦に回れば釣りが可能である。

 強い風が吹く日でも複雑な地形ゆえに「風裏」になる海岸があり台風でもない限り、ま ったく竿を出せないケースはほとんどないだろう。遠来の釣り人を迎えるうえで、これは大きなセールスポイントになるのではないか。

 海釣り大会は開催期間の7月2日から10月2日にかけて、キス、クロダイ、メジナ、 スズキ、イシダイの5部門で行われる。各部門ごとに大物3匹を登録でき、釣行を重ねるごとに更新できる仕組みという。参加者の釣果をインターネットの専用サイトで随時公開することで、参加者のやる気を引き出し、能登の海の豊かさを全国にアピールする効果も期待できる。

 重要な点は、土地勘のない遠来客に対し、きめ細かな釣り場の情報を提供することであ る。魚種別にポイントを分かりやすく知らせたり、餌を購入できる店の情報もほしい。的確な情報を伝えるには、地元の釣り人の協力が不可欠だ。

 釣り人口は全国で1千万人を超える。奥能登から中能登にかけての海岸線は、釣り場の 宝庫であり、関西方面などから遠征してくる釣り人も年々増えている。「ツール・ド・のと」の開催により、サイクリング愛好家の間で能登の知名度が格段に上がったように、釣り大会は、能登を釣りのメッカとしてアピールするよい機会である。大会を成功裏に導き、毎年開催できる道をひらきたい。

◎高速無料化実験 段階踏んで実施が現実的
 6月をめどに実施される高速道路の無料化実験で、交通量が少なく、渋滞が起きにくい 地方路線が選ばれたのは、国も無料化の影響について慎重になっていることの表れだろう。

 民主党の看板政策である高速無料化については、地域経済への波及効果が期待される一 方、渋滞の深刻化や公共交通機関への悪影響、二酸化炭素排出量の増加などの疑問点も出ている。各種世論調査を見る限り、国民の多くから支持されているとは言い難い。

 渋滞や公共交通機関への影響は地域ごとに異なり、実際に試して検証するほかないだろ う。国土交通省は2011年度からの段階実施を目指しているが、影響の大きさを考えれば、功罪を慎重に見極め、手順を一つ一つ踏んで実施するのが現実的である。

 無料化実験は新年度予算の概算要求では6千億円が盛り込まれていたが、全体の財源不 足から1千億円に圧縮され、対象は37路線50区間にとどまった。交通量が少ない区間が中心になったことで、渋滞や物流コストの変化など実証効果は限定的との見方も出ている。

 北陸自動車道や東海北陸自動車道が外れたのは、現在の休日「上限千円」の渋滞発生状 況などから、無料化の影響が少なくないと判断されたためだろう。対象外の路線については車種ごとに上限を設ける新たな割引措置が検討されているが、公平性の観点からも地域を元気にする中身にしてほしい。

 「上限千円」では高速道路の交通量が増え、観光産業への一定の波及効果が確かめられ た。休日限定のため、人の動きを休日に集中させ、渋滞に拍車をかける負の側面もあったが、高速料金を下げることが地域活性化につながることが裏付けられたといえる。

 高速無料化では、高速道路会社の通行量収入が途絶え、旧道路公団から引き継いだ負債 30兆円以上を税金で返還することの是非も大きな論点になっている。このため、料金を引き下げたうえで「恒久有料化」を維持すべきとの意見もある。そうした課題についても、社会実験を進めるなかで議論を深めていく必要がある。