130cm界隈が、新作の事で騒がれている様子ですね。
気にはなったので、ひととおり経緯を見てみました。
作品内容については別に語るところじゃないので、それはさておきます。
今回ユーザー側の意見を見て、製作側でもし失敗があったとすれば、点数感覚の部分ですね。
どこで何点が取れそうで、どこで何点を落とすか、という企画段階での予測です。
サッカー等で云うところの、試合の組み立てです。
もちろん点数なんですから、100点満点を狙って行きつつ取れれば理想です。
しかしエロゲー製作で100点を狙って取るのは、凄く大きな予算をかけて、展開・人材・製作の全面で最高にリッチな状況を用意できないと、スタートもできません。
あるいは非常に強力な才能の持ち主が全てを投影できるつくりができるなら、それに近い製作ができると思います。
つまり、通常ではできないという事です。
別にエロゲーに限りませんけども。
そこで、130cmくらいの組織の能力としては、それなりに売れてそれなりに評価が付いてくるゲーム作りをするために、「点数を確実に取ってこれる」プラスポイント部分と、「ここは落としてもいい」マイナスポイント部分を何点ずつにするかという調整をやらないと、何も残らない作品になります。
何も残らないというのは、話題になるほど売れず、話題になる部分も残さない作品です。
これは本当に何も残らない。
せめて赤字だけ出ていなければ、会社の販売実績としてはプラス(主に銀行など外に見せる部分で)なので経営者的には本当のゼロじゃないけど、かけた時間と労力を考えると、製作したクリエーター的には徒労感がつきまといます。
そこでこの点数のコントロール感覚が重要になってきます。
「ここをしっかりやれば、こういう評価が返ってくる」という部分を設定し、点数を稼ぐ。
「ここはこういう批判が来ると予想しているけど、最小で抑えられるようにしておく」というダメージコントロール。
「力を入れても抜いても売り上げ・評価に関わらない」部分に必要以上の力を入れない見切り。
ゲームの幅広い要素に感覚的にこの3つを当てはめて個別に対応する作り方が、予算なり、人材なり、製作期間の余裕なりのリソースの少ない小ブランドの基本だと思います。
例えば自分が130cmで最後にやった『彼女達の流儀』なら、以下のイメージでした。
:プラスポイント
・CGは原画レベルでは自分がなんとかする。彩色ではチーフのレベルが高いので、点数を大きく取れるはず。
・少なくとも自分なら「たまらない」というエロ部分のフェチ要素を入れる。そしてその要素のパイはそこまで小さくは無い。
・絵とシナリオの両方を自分でコントロールできるから、全体の雰囲気に一本柱を通せる。
:ダメージコントロール
・シナリオゲーという評価を取れるほど、優れたシナリオは書けない。だからある程度シナリオはちゃんと書くけど、あくまでエロシーンに労力をつぎ込む。特にフェチズムは大切に。
・全てのヒロインを均等に、シナリオ的に良い作品にする能力も時間も無い。だから点数の取れるキャラの点数の取れる部分のシナリオは労力をかけて、そうでないある程度の部分は諦める。
プラスとマイナスとで、評価7割、批判3割をイメージしていました。
・CGがきれい
・フェチエロい
・雰囲気がある
・このヒロインのシナリオは結構いい
・シナリオが短い。特に個別ルート
・このヒロインのシナリオいまいち
・絵の癖が受け入れられない
以上が想定していた感想です。
大体想定していたものが多かったと思います。
こういう感想配分を予想して、限られたリソースからプラスとマイナスを組み立てる作り方は、その前の130cm作品「ネコっかわいがり」でより顕著です。
そこまでは本数が出なかった「ネコっかわいがり」が、出た数の割には多くの印象をユーザーに残したのは、ディレクターのうつろあくたさんのこのコントロールの上手さだと思います。
自分は「プリンセスブライド!」以降、ずっとうつろさんを見ていたので、その何パーセントかを真似しただけです。
やり方は違いますが、13cmにはかつて他に元長柾木さんもいて、(プリブラ以降辺りの何年かは)あのお二方がディレクターとして培ってきたものが、そのまま13cm/130cmでした。
……でした、というからには過去な訳です。
基本、小さなところなのでノウハウの継承的な教育はありません。
一緒にいて、見て、なんとなく覚えるだけです。
「ラストオーダー」で元長さんが去り、「ネコかわ」でうつろさんが去り、残ったいくらかを使った「カノギ」で自分が去り、あとは「ネコかわ」から入り、「カノギ」で片翼だった西空康誠さんだけが残っていました。
そこから「泉水いこ」さんがディレクターもされる段階で、ディレクター向けの部分の継承が弱くなったのかな、と思います。
今の内部を知らないので、想像ですけれど。
今回はイメージとして大きな痛手をこうむったわけですが、泉水いこさんの絵はプラスポイントだし、フェチ的にも点数が取れる貴重で強力な存在だから、立て直すのは全然何とかなるんじゃないですかね。
中小ブランドで「明確に点数が取れる」部分があるというのは、本当に強みですから。