「ワゴン車に女性が連れ込まれた」。そんな110番通報をもとに、警察官が緊急配備を敷いて旅館などをしらみつぶしに聞き込みをする騒ぎが今月下旬、千葉県館山市で起きた。通報から約3時間半後、ビデオ撮影での「演技」だと判明した。
26日午後5時ごろ、「自転車を押して歩いていた女性が、ワゴン車内に引っ張り込まれ、車が走り去った」と、館山市塩見の道路で目撃したという女性の観光客(66)から、110番通報があった。
館山署は「拉致事件(逮捕監禁)」の可能性がある、と判断して捜査を開始。パトカーのサイレンが鳴り響き、主要道路は警察官が立つなど、市内は一時、騒然とした雰囲気に包まれた。
女性が覚えていた品川ナンバーの白いワゴン車を調べたところ、現場から数百メートル離れた場所で発見。関係者から事情を聴いた結果、東京都内のAV(アダルトビデオ)制作会社が、女優(19)ら男女8人で、女性を車内に連れ込むシーンを撮影していたことが分かった。
道路使用許可など撮影で事前に必要な届け出はなかったが、同署は制作会社社長(35)が反省していることなどから、道路交通法違反などでの立件は見送り、始末書を出させて厳重注意したという。
同署幹部は「早い段階で事件でないと分かってよかった。撮影隊が引き揚げてしまっていたら、捜査を続けなければならなかっただろう」とカンカンだった。(福島五夫)