【萬物相】宮内庁に保管されていた朝鮮王朝の書籍

 1908年12月29日、江華島の鼎足山にあった史庫(書籍庫)に日本軍の憲兵らが押し入り、21冊の書籍を強奪した。東洋協会専門学校(現・拓殖大)京城(現・ソウル)分校の教頭・河合弘民が、憲兵隊を動員して起こした事件だった。日本の警察は当時、「本件の捜査により、憲兵隊との衝突を招く恐れもあるため、捜査を断念する」として、違法行為を黙認した。現在、京都大が所蔵する「河合文庫」は、こうして日本が韓国から略奪した書籍だ。

 一方、日本の韓国統監府は同年、奎章閣(朝鮮王朝の歴代国王に関する文書を保管した役所)をくまなく調査し、「大韓帝国帝室図書之章」という印章を押した。2年後、韓国が日本に併合された後は、「帝室図書」としてそのまま朝鮮総督府に引き渡された。その際、総督府は「朝鮮王室儀軌」(王室や国家の重要な行事の内容を記録した書物)をはじめ、一部の書籍を宮内庁に寄贈するという形を取った。このほか、伊藤博文が密かに持ち出した、奎章閣の蔵書33種類、563冊も宮内庁に保管された。

 宮内庁に保管されている朝鮮王朝の書籍は、これまでに「朝鮮王室儀軌」など79種類、269冊に上ることが判明している。また、韓国の文化財庁が調査したところ、「帝室図書」の印章が押された書籍がほかにもあることが分かっている。儒教の経典や医学・軍事に関する書籍など38種類、375冊や、歴代国王が受けた教養講座「経筵(けいえん)」のために書かれた書籍3種類、17冊だ。

 65年、韓日基本条約の締結により、日本は国有・公有の文化財1432点を韓国に返還した。その際、「日本側としては、決して略奪したものではなく、文化財の返還は法的根拠が疑わしいものの、韓国の独立を記念するプレゼントとして、一部を贈呈する」との見解を示した。日本政府は現在、国際法上の「文化財の引き渡し」は完了した、という立場を取っている。また、個人による違法な文化財の流出については、「両国間の文化協力の進展のため、所有者が自発的に寄贈することを日本政府として勧告する」として合意したものの、現在までに実行に移されたケースは極めて少ない。

 宮内庁で今回新たに発見された朝鮮王朝の書籍もまた、明らかに総督府が略奪したものだ。民間人が所有する文化財が自発的に返還される前に、日本政府は違法な流出が確認された文化財の返還に向け、まず範を垂れなければならない。韓国が日本に併合されてから今年で100年を迎える中、新たな韓日関係のあり方についての論議も活発化している。日本に奪われた朝鮮王室の書籍の帰郷を実現し、不幸な過去の清算の象徴として位置付けるべきだ。

朴海鉉(パク・ヘヒョン)論説委員

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版

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