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きょうの社説 2010年2月2日
◎プレ・パス事業 子ども手当との相乗効果を
子ども手当が支給される今年は、自治体にとっても子育て支援策を充実させる節目の年
である。18歳未満の子が3人以上いる世帯を優遇する県のプレミアム・パスポート(プレ・パス)事業は不況で協賛店舗数が伸び悩んでいるが、子ども手当は子どもの数が多い家庭ほど恩恵が大きく、協賛店も工夫次第でチャンスが見いだせるのではないか。子育て世帯の消費を喚起するという点でも、サービス供給側のパイを増やすことが大事である。子ども手当は「子育ての社会化」という考え方を基本に、少子化の流れを転換させる大 きな試みである。政府は今後5年間で取り組む少子化対策の指針「子ども・子育てビジョン」をまとめたが、認可保育所の大幅定員増など大都市圏向けの対策も多く、自治体には地域の実情に即した独自の施策が求められている。子ども手当を追い風に、相乗効果を引き出せる支援策を打ち出してほしい。 プレ・パス事業は2006年にスタートし、買い物を割り引きするなど企業や店舗が多 子世帯を応援する取り組みとして協賛店が右肩上がりで増えた。08年8月には目標の2千店舗に達したが、その後は景気悪化の影響で協賛を打ち切る企業も相次ぎ、店舗数は頭打ちになっている。 県が全国に先駆けて実施したプレ・パス事業は現在、42都道府県で同様の取り組みが 行われているが、「少子化対策最優先県」を標榜する県としては、協賛店舗をさらに拡大し、子育て世帯に利便性を実感してもらう一層の工夫が必要である。 この仕組みについては当初から、子ども3人以上に限定していることへの不満もある。 1人以上いる世帯については、毎月19日に特典が受けられる「チャイルド・プレミアム事業」も展開されているが、こうした仕組みも拡充できないか検討の余地がある。 子ども手当については、2011年度からの満額支給方針をめぐり、政府内で意見の食 い違いが表面化しているが、せっかくの目玉施策も、先行きが見えなければ効果が半減しかねない。地域の少子化対策に水を差さないよう、政府は足並みを整える必要がある。
◎貴乃花親方当選 改革の一歩になるのか
日本相撲協会の理事選挙で、大方の予想に反して貴乃花親方が当選したのは、事前調整
で理事ポストをたらい回しにしてきた協会幹部への不満がそれだけ強かったことの表れだろう。理事は本来、年功序列ではなく、指導力や行動力、見識など人間性の評価で選ぶべきものである。角界の規律が大きく揺らぐなか、旧態依然とした閉鎖的な体質に風穴を開ける一歩として、貴乃花親方の当選を歓迎したい。初場所中に横綱朝青龍の暴行騒動が発覚したことで、協会の対応に注目が集まっている 。角界ではこれまで数々の不祥事があったが、協会幹部の反応はおしなべて鈍く、注意だけでお茶を濁そうとするケースなど、首をひねりたくなるような処置が目立った。 ファンの多くは、理事や親方の利害を優先しがちな協会に失望し、自己改革を求めてい る。そうした声なき声が貴乃花親方を理事に押し上げたのではないか。 むろん理事ポストを一つ得たからといって、角界の体質がそう簡単に変わるとは思えな い。理事の多くは性急な改革には消極的とみられており、既得権を守ろうとするだろう。貴乃花親方の相撲改革案も、サッカーのトレーニング施設「Jヴィレッジ」に倣った相撲学校の創設など、地に足がついていない印象がある。親方としての実績も乏しいだけに、理事会で孤立することも考えられる。 それでも貴乃花親方は、暴行騒動を起こした朝青龍に対し、武蔵川理事長に自ら事情説 明に出向くべきと苦言を呈するなど、自分の考えを持ち、それを内外に発信しようとしている。協会の改革に取り組む熱意も持っている。このような人材は得難いはずだ。閑職に追いやって冷や飯を食わせるような懲罰人事をしてほしくない。 貴乃花親方は主張することも大事だが、引くべきところは引き、聞く耳を持たねばなら ない。若手やファンの声を理事会に反映させていくには、理事の間に賛同者を増やしていく必要がある。多少時間がかかっても地道な努力を続け、角界の閉鎖性を少しずつ崩していく粘り強さが求められる。
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