きょうのコラム「時鐘」 2010年2月2日

 子ども手当の満額支給は困難、と見出しにあった。来年のことだから先は分からないが、気になる黄信号である

聞こえの良い公約が次々と実現すると思い込むほど、有権者はお人よしではない。が、ずらり並んだあれこれに、やたら赤や黄信号が点滅するようでは、先が案じられる

「代書屋」という上方落語がある。履歴書の代筆を頼みにきた男が姓を問われ、背丈と勘違いして「五尺…」。そんな珍問答が続く。職歴を尋ねると「巴(ともえ)焼き」や「げたの減り止め」という妙な商い。代書人が頭をひねってまんじゅう商、履物付属品販売と書く。いつまでやったか、と問うと、「やろうと思っただけ」や「2時間でやめた」

頭にカッと来た代書人は、職歴の文字に墨を塗って「一行抹消」と書くのを繰り返し、「ホンマにやったことだけ言いなさい」と音を上げる。抹消続きの履歴書はみっともない、というまじめな説教が、逆に笑いをあおる

暫定税率廃止は一行抹消。子ども手当の全額国費負担も抹消である。さて次は、と思わず耳をそばだててしまうが、寄席とは違って笑わせるのが仕事ではない。