サイゾースタッフ
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※=外部スタッフ
「東スポ映画大賞」審査委員長たけしと男優賞・鶴瓶の秘められた過去
芸能取材歴30年以上、タブー知らずのベテランジャーナリストが、縦横無尽に話題の芸能トピックの「裏側」を語り尽くす!
つい先日、ビートたけしが審査委員長を務める「第19回 東京スポーツ映画大賞」の審査会が、お台場にあるフジテレビの湾岸スタジオで行われ、筆者はその場に立ち会っていた。
だが、たけしは開口一番「今年も、スケールの小さい映画ばかりだね」と、選びたい作品がないことをぼやいて見せた。
すでに各映画祭では、西川美和監督の『ディア・ドクター』が高く評価され、多くの賞を受賞している。ただし、たけしは同作を作品としては評価せず、西川を監督賞に(作品賞の該当はなし)、同作に主演した笑福亭鶴瓶を主演男優賞に選んだ。こちらは、鶴瓶が他の映画祭でも賞を取っていることを知って、お笑い芸人に負けた役者たちに「恥を知れ」という意味も含めて決定したという。
だが、たけしは内心、鶴瓶にエールを送りたかったのだろう。その昔、たけしが日本テレビの『天才・たけしの元気が出るテレビ!!』をやっているときに、鶴瓶は裏番組で『世界No.1クイズ』(TBS系列)の司会をやったことがあった。しかし、この番組はたけしに太刀打ちできず、1年ももたずに終了。これを東京への本格進出の足がかりにするはずだった鶴瓶は、肩を落とし、大阪に帰ろうとしたという。
ここからは、鶴瓶自身が語っていた、業界内では少し知られた話である。
大阪に戻ろうとした鶴瓶に関して、たけしは当時、面識がなかったにもかかわらず、芸人としての鶴瓶を高く評価。よく知る番組制作会社の幹部に「このまま鶴瓶を大阪に帰したら、東京のテレビの制作能力が疑われるぞ」と言って、鶴瓶を起用することを進言し、彼の帰阪を思いとどまらせたという。以来、鶴瓶は「たけし兄さんには頭が上がらない」とたけしを慕い、2人の奇妙な関係は今も続いている。そういう意味では、今回の鶴瓶への主演男優賞授与は、才能を見る自分の目に間違いがなかったという、たけしの自負も感じられる。
特別作品賞には、上島竜兵主演の『上島ジェーン』が選ばれた。先日、映画専門誌「映画秘宝」(洋泉社)が"トホホ映画"を発表した(ハリウッド版『ドラゴンボール』が1位だった)が、東スポ映画祭での特別作品賞というのは、この"トホホ"と同じくワースト映画のことだ。受賞理由は、「『稲村ジェーン』のパクリだから」。授賞式には、ダチョウ倶楽部全員を呼んで、芸を披露させるという。
毎年、東スポ映画大賞と並行して発表されるのが、「ビートたけしのエンターテインメント賞」だ。これもたけし自身が、エンタメ分野で活躍した人々を賞するというものだが、最近では東国原宮崎県知事や橋下大阪府知事なども特別賞を受賞している。要は、よくも悪くも日本人を楽しませてくれた人々を評価するというものだ。
今年、メインの賞ともいえる日本芸能大賞には、オードリー、ナイツ、U字工事、東京03が選ばれたが、例年、ここに選ばれる芸人は、営業などで最も忙しい人ばかり。今年も、ナイツなど、この晴れの舞台(?)に参加できずに涙を飲む芸人が何組か出そうだ。ちなみに、昨年もナイツは選ばれたが授賞式には来れず、もう一組の受賞者であるサンドウィッチマンは、尊敬するたけしの前で芸をしたいと、なんとかスケジュールをやりくりして参加したが、当のたけしが風邪でダウンし、授賞式を欠席するというオチがついた。
さて、エンターテインメント賞の話題賞は、俳優やタレントではなく、常にテレビに出演し続け、"すきま産業"を見つけて稼いでいる石田純一が受賞。ところが、石田は授賞式への出席に難色を示しているという。毎日のようにどこかしらの会見やイベントに出席している石田なのに、なぜ授賞式には来たがっていないのか? 推測するところ、2003年に話題賞に選ばれたことをいまだに根に持っているのかもしれない。
03年には、"有栖川宮詐欺事件"という滑稽な詐欺事件があった。大正時代に継承者がいなくなった有栖川宮の末裔を騙った男が都内で偽装の結婚式を挙げて、400人あまりの出席者からご祝儀を詐取したという事件だった。この式で、石田は知人に頼まれてスピーチ。この模様が、何度もワイドショーなどで取り上げられ、同じく式に出席したエスパー伊東と共に話題賞に選ばれた。しかし、たけしに茶化されたと思い込んだのか、石田は授賞式に出席しなかった。その後の石田は、芸能界に生き延びるためにはなりふりかまわず、"すきまタレント"の先駆者として活躍している。それなのに賞を躊躇するというのは理解に苦しむ。
今年は東スポ創立50周年ということもあって、50周年特別賞として、長嶋茂雄、宮沢りえ以下、豪華なスターが受賞者として選ばれている。この中から、誰が2月28日に行われる授賞式に駆けつけてくれるかは予断を許さないが、例年以上の盛り上がりを見せそうだ。年末年始、テレビに出ずっぱりのたけし。なんだかんだいって、この賞の主役の一翼を担うのはたけしなのだから、去年のように風邪というアクシデントにだけは気をつけてほしい。
(文=本多圭)
芝居も芸の一つです。
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