埼玉県内で昨年8月、会社員の男性が車の中で死亡しているのが見つかり、体内から睡眠導入剤の成分が検出された事件で、県警は1日、練炭自殺に見せかけて男性を殺害したとして、インターネットの結婚相手紹介サイトで知り合い、当時男性と交際していた住所不定、無職木嶋佳苗(きじま・かなえ)容疑者(35)=詐欺罪などで起訴=を殺人容疑で再逮捕し、東入間署に捜査本部を設置した。木嶋容疑者は容疑を否認している。
木嶋容疑者の周辺では他にも3人の男性が急死し、総額約1億円が木嶋容疑者に渡った可能性がある。県警は結婚話などを持ちかけて金をだまし取り、発覚を恐れて殺害した疑いもあるとみて千葉県警などとも協力し、木嶋容疑者の関与の有無を調べる。殺人罪で起訴されれば、裁判員裁判の対象事件となる。
埼玉県警によると、木嶋容疑者は、昨年8月5日夜、同県富士見市針ケ谷2丁目の駐車場に止めたレンタカー内で練炭に火をつけ、眠っていた会社員大出嘉之(おおいで・よしゆき)さん(当時41)=東京都千代田区=を一酸化炭素中毒で殺害した疑いが持たれている。
県警によると、大出さんの遺体の血液中から睡眠導入剤の成分が検出され、木嶋容疑者が診療所で処方されていた薬と成分が一致。県警が事件後に押収した木嶋容疑者のすり鉢からも同じ成分の薬が確認された。車内にあった練炭や七輪は、事件前に木嶋容疑者がインターネットで注文した商品と同じ型だった。
大出さんは独身で、インターネットの結婚相手紹介サイトで木嶋容疑者と知り合った。亡くなる約2週間前には自分の口座から約470万円を引き出し、直前には自身のブログに「今夜から2泊3日で相手と旅行に行きます」と書き込んでいた。
8月5日夜、木嶋容疑者に似た女が現場近くから当時住んでいた東京都板橋区のマンションまでタクシーに乗っていたことから、県警が事情を聴いたところ、当初は大出さんと一緒にいたことは認め、「けんかして別れた」などと説明していたという。
県警が殺人の疑いが強いとみて捜査を続けるなかで、木嶋容疑者が結婚詐欺を繰り返していた疑惑が浮上。9月25日には、別の男性に結婚話を持ちかけ金をだまし取った詐欺容疑で逮捕した。その後、詐欺や詐欺未遂、窃盗の容疑で4回にわたって再逮捕した後、先月11日には大出さんから四百数十万円をだまし取った詐欺容疑で再逮捕していた。