社説

飲酒運転/再犯防止は依存症対策から

 道路交通法改正(2007年9月)で厳罰化された後も、飲酒運転が後を絶たない。酒を飲んでは何度もハンドルを握る常習の飲酒運転者には、罰則強化が抑制策として機能していないようだ。

 厳罰化を知っていても、あるいは事故を起こす可能性があることを認識していても、飲酒運転をしてしまう人たちを対象とした新たな対策が必要だ。

 道交法の厳罰化は、事故を起こした飲酒運転者がそのまま逃走するひき逃げを誘発したとの指摘もある。今、求められるのは、一度摘発を受けたドライバーに対して、飲酒運転をいかにして繰り返させないかという視点に立った対策だろう。

 飲酒運転で特に注目すべきは常習性である。宮城県警が飲酒運転で免許取り消しとなった150人(09年6〜12月)を対象にした調査では、過去に飲酒運転をしたことがある人が30.7%を占めた。

 神奈川県警が免許取り消し処分者講習受講者を対象に行った調査(07年)では飲酒運転で摘発を受けた人のうち男性の36.9%、女性の42.9%に、アルコール依存症の疑いがあった。

 二つの調査から見えてくるのは、アルコール依存症を疑われる人や、1日純アルコール摂取量60グラム(日本酒で3合、ビールなら中瓶3本程度)以上の多量飲酒者が、飲酒運転を繰り返すという図式である。

 自動車に取り付けるアルコール・インターロックという装置がある。一般的には、検知器に息を吹きかけ、一定濃度のアルコール反応があるとエンジンがかからなくなる仕組み。米国などでは飲酒運転で一度有罪になると、搭載を義務付けるなどの措置を取っている。

 先端機器の導入、活用に加えて不可欠なのが、依存症に対する総合的なケアだ。国内のアルコール依存症者は約80万人、その疑いがある人となると440万人もいるという推計がある。

 依存症の人は自らの症状を自覚していない、認めようとしない人が多い。飲酒運転者に対して、その習慣を改める指導、さらには治療を受けるような道筋を設けることが必要だ。

 法務省は08年度、一部の刑務所で、アルコール依存症の疑いがある交通事件受刑者を対象としたプログラムを導入したが、そうした再犯防止教育も広めていくべきだ。

 依存症から抜け出すのは容易ではない。断酒を続けることは、例えて言えば、険しい尾根道を歩き続けるようなものであり、元の状態に「滑落」する危険が一生付きまとう。

 他人の生命を脅かす危険行為をさせないためにも、本人の健康や人生を守るという意味でも、家族や職場などでの支援も欠かせない。

2010年02月01日月曜日

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