コラム「大気汚染物質の流れが見える酸性雨長距離輸送モデル」
今回の研究で九州大学応用力学研究所の鵜野教授と共同で開発した酸性雨長距離輸送モデルは,酸性雨をもたらす大気汚染物質の輸送される様子を3次元でシミュレートできます。結果がビジュアルに表現できるため,広域大気汚染の輸送経路,広がりが具体的に理解できます。大気汚染物質の移動形態としては,「つの」型,「巨大パフ」型がありますが,それをこのモデルで紹介します。
「つの」型のSO42−の吹き出しは1997年1月13〜15日に観測されました。1月13日に山東半島を含む中国大陸にあったSO42−高濃度の汚染気塊は,14日には朝鮮半島に移動しました。その後五島列島,太宰府を通過して,15日には日本の中国・四国・九州の上空に達しました。北西から南東方向へ移動したSO42−の塊は,まるで角の形をしているので「つの」型と名づけました。
「巨大パフ」型の輸送は,1997年1月26〜27日に観測されました。1月25日に中国大陸の上空にあった高濃度のSO42−は26日には北東方向へ進み,先端部が朝鮮半島にかかり,一部が五島列島へ接近しています。28日には,まさに1000kmを超えるSO42−の塊が日本の西半分を覆い尽くしました。
これらの結果を五島列島,太宰府でのSO42−濃度の観測結果と比較すると,モデルによる計算結果は観測値を十分に再現しており,酸性雨長距離輸送モデルの精度が高いことが証明されたのです。
大気汚染の張り出し(左:つの型,右:巨大パフ型)