民主党・小林千代美議員(北海道5区)陣営の選挙違反事件で、公職選挙法違反(事前運動、買収の約束)の罪に問われている山本廣和被告(60)の第6回公判が、15日午後13時10分から札幌地裁(辻川靖夫裁判長)で開かれた。
山本被告は民主党の党員で、支持団体である連合北海道の石狩地域協議会と札幌地区連合会の会長を兼務していた(いずれも逮捕後に辞職)。昨年の衆院選では小林陣営の合同選対委員長代行を務めていた。
起訴状などによると、山本被告は小林氏を当選させるため、衆院選公示前の今年5月から公示後の8月まで、運動員35人に時給700~900円の報酬を支払うことを約束し、有権者に小林氏への投票を依頼する電話を掛けさせた疑い。運動員には約束だけで報酬は支払われていない。
山本被告は先月4日の初公判で、公示後に報酬を支払うことを約束して電話を掛けさせたことを認めたが、公示前は「選挙運動に当たらない」と、起訴事実を一部否認した。
15日の公判では弁護側の証人として、山本被告の長女が証言台に立った。
弁護人から、山本被告について聞かれた長女は「とても優しく責任感が強いので周りの人から信頼されていました。私自身にとっても頼りがいのある父です。今まで病気一つしたことがないのに、今回、勾留中に体調を崩し、心筋梗塞の疑いがあると医者に言われてので心配しています。(今後は)もう選挙に関わってほしくないし、本人もこれを機会に関わらないと言っていました」と語った。
続いて、弁護、検察側双方の被告人質問が行われた。
弁護人 (電話掛けのマニュアルには)公示前は投票のお願いをする文書が入っていないがどうしてか。
山本 投票依頼の文書にすると完全に違反だと思っていたので後援会活動が政治活動ということを意識して作った。
弁護人 (公示前に)パンフレットを送ることは投票依頼ではないと思っていた
山本 はい。ただ、パンフレットを送ることで候補者の考えが広まり、人によっては選挙にプラスになることもあったのかなとは思う。
弁護人 警察、検察の調書では「選挙のためのパンフレットを送付した」となっているが、初めからそう供述したのか。
山本 最初は後援会活動、政治活動という説明をしたが議論になった。今回の件で仲間の事情聴取されていると聞いて、他の人に迷惑をかけたくないという思った。(選挙のためのパンフレットを送付を認めなければ)電話掛けをした責任者あたりに責任を取ってもらうというようなニュアンスの話を(警察の取り調べで)聞いたので、自分の主張は得策ではないと思った。
弁護人 事件を振り返ってどういった点を反省し、どんな心境にあるか。
山本 とにかく勝ちたい一心だったが、結果的に法律の枠を超えてしまった。小林さんを支援してくれた関係者の人に申し訳ない。私の行動によって多くの有権者、市民に大変な迷惑を掛けた。改めてお詫びしたい。
(続いて検察官の質問)
検察官 あなたの言い分をはっきりさせるために聞くが、公示前の電話掛けは選挙活動ではないという主張か。
山本 後援会活動であり政治活動が基本。ただ人によっては選挙活動になるのではないかと思う。
検察官 選挙活動と後援会活動または政治活動の違いは何か。
山本 選挙活動は投票行為を伴う直接的なもので、後援会活動、政治活動は日常的に地域を良くしたり、議員活動を充実させる組織活動だと思う。
検察官 結局は何が目的で(公示前の)電話掛けをしたのか。小林千代美さんを当選させるためにやったことではないのか。
山本 (パンフレットを送付して)小林千代美さんの知名度を高めることや仲間(支援者)を増やすことのため。延長線上にそういうことにもなるが、すべてがすべて選挙のためというのは無理なことだ。
検察官 公示前の電話掛けで(運動員に)「小林千代美後援会事務所のものです」と名乗らせているが、後援会の人だったのか。
山本 違います。
検察官 あなたは調書で後援会について「実態がない、わからない」、アルバイト代金について「(連合北海道)札幌地区連合会の裏金から払う」と述べている。後援会活動なのになぜ後援会のお金でやらないのか。後援会を名乗った選挙活動ではないのか。
山本 連合が先駆けとなって世の中を変えていきたいという思いから、連合が中心となってやり、連合のお金でやった。
次回公判は22日午後1時20分から開かれ、検察官による論告求刑が行われる。(文・糸田)