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逃走男性死亡 「警官の発砲は適法」

2010年01月28日

 ■地裁判決 母の賠償請求棄却

 大和郡山市で2003年9月、逃走中に警察官の発砲で死亡した高壮日(コウソウジツ)さん(当時28歳)の母親の金順得(キンジュントク)さん(72)=大阪府東大阪市=が、県と警察官4人を相手取り約1億1770万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が27日、奈良地裁であった。宮本初美裁判長は「発砲は、警察官や市民の生命を守るためやむを得なかった」として、原告の訴えを棄却した。原告側は控訴する方針。

 判決などによると、事件は03年9月10日午後6時すぎごろ起きた。現金計約13万円などが盗まれた3件の車上狙いを捜査していた県警が容疑車両を発見し、追跡。車は、信号無視や速度違反を繰り返して約18キロ逃走した。大和郡山市の国道24号交差点付近で、パトカーと一般車両に挟まれた状態で急発進したため、警察官3人が8発、発砲した。

 弾は、車の助手席にいた高さんの首などに2発当たり、10月5日に低酸素脳症で死亡した。運転していた男(当時26、窃盗罪などで懲役6年の有罪判決を受け、服役中)の首にも1発当たった。

 原告側は「警察車両に挟まれ、逃走が不可能に近い状況で拳銃を使用する必要性はなかった」「至近距離からの発砲は殺人罪に該当する」と主張。警察官側は「逃走車両が一般市民に被害を与える恐れがあった」「運転手の腕を狙ったが外れた」などと反論していた。

 判決は「8発すべて至近距離からで、殺害する可能性を認識していた」とし、警察官の「未必の殺意」を認定。そのうえで「衝突や急発進を繰り返す車を阻止しなければ、警察官や市民の生命に危害を及ぼす可能性があった」として発砲は適法と結論づけた。
 高さんは04年5月、殺人未遂や公務執行妨害、窃盗などの疑いで書類送検され、奈良地検は被疑者死亡で不起訴処分とした。

 金さんは03年11月、警察官4人を殺人と特別公務員暴行陵虐致死の容疑で告訴したが、奈良地検は「正当な職務行為」として不起訴とした。金さんは06年1月、奈良地裁に4人の刑事責任を問う付審判を請求したが、まだ結論は出ていない。(成川彩)

 ●母親「なんで助手席の息子が」

 判決後の会見で、高さんの母、金さんは「納得できない。なんで助手席の息子が撃たれないといけないのか。悔しい」と話した。

 原告弁護団の伊賀興一弁護士は、判決について「『死ぬかもしれないという認識はあった』という警官の未必の故意を認めた」と一定の理解を示したうえで、「危険な運転だったので死んでも仕方がないという驚くべき判決。ハンドルも握っていない人が死んでいいのか」と厳しく批判。警察官の刑事責任を問う付審判請求の結論を出すよう、裁判所に求めるとしている。

 県警の薮内利一・監察課長は「拳銃の使用は適法だったとの主張が認められた」とコメントした。

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