科学の力で毒なし
フグ
第868回 2007年2月4日
この時期に美味しいのが、味・値段ともに最高級と言われる
フグ
。しかし、冬の味覚の王様フグは、生き物として観察してみると、実は
不思議がいっぱいの魚
だったのです。
フグ鍋と並ぶフグ料理といえば、皿が透けて見えるほど薄く切った「薄造り」。しかし、フグをこんなに薄く切るのは、きっと高価だからに違いない!と言うことで、ためしに
フグの刺身を分厚く切って食べてみると…
所さんもビックリ、
固くて噛み切れないほどの弾力
だったのです!
そこで、
どれほどフグの身が固いのか、装置で測定してみると、なんとマダイの9倍も固かった
のです。フグの身を顕微鏡で観察してみると、
コラーゲン
が多く含まれていました。この
コラーゲンが弾力と固さを生み出す正体
でした。
では、なぜ身を固くする必要があったのかを解明すべく、フグの
レントゲン写真
を撮ってみると、なんと
フグには普通の魚にあるはずの肋骨がなかった
のです。
肋骨といえば内臓を守る大切な骨。しかし、肋骨を持たないフグは、その代わりに
固い身で内臓を守っていた
のです。
なぜフグには肋骨がないのでしょう?それは、おなじみの
プーっと膨れる姿になるため邪魔だから
なのです。フグは、「膨張のう」という器官に水を吸い込んで体を膨らませます。そこで実験してみると体重1.6キロのフグは2リットル以上、なんと
自分の体重以上の水を飲み込んで膨らんでいました
。
では
なぜフグは膨らむのか?
その秘密はフグの泳ぎ方にありました。一般的に、速く泳ぐ魚は尾びれを使い推進力を得ますが、フグは泳ぐのに背ビレと尻ビレを使うため、敵から
速く泳いで逃げることが出来ない
のです。
そこで、フグは体を大きく膨らませて、
相手を威嚇することで身を守っていた
のです!でも膨らむと身動きが取れなくなってしまうので、
追詰められた時の最後の手段
なのだそうです。
フグが膨らむ理由は、フグは速く泳ぐことができないので、膨らむことで相手を威嚇し身を守る、命がけの最終手段だった!
ところでフグの仲間には、変わった特徴を持つ仲間がたくさんいます。全身をトゲトゲで覆われたおなじみの
ハリセンボンもフグの一種
なのです。ちなみに、トゲの正体はうろこが変化したものだそうです。
でも、ハリセンボンって
本当にトゲが千本あるの?
と疑問に思った矢野さん、そこで目がテン!恒例、数えてみよう。チクチク痛い思いをしながら赤い玉を刺してトゲを数えてみると、
トゲの数は352本
でした。ある専門家によると、673尾のハリセンボンの棘の数を数えたところ、その
平均は353本
だったそうです。
さらに、フグの特徴として有名なのが
「毒」を持っている
こと。その正体は内臓に含まれる
テトロドトキシンという猛毒
。しかし、ほとんどのフグは自ら毒を作り出しているわけではなく、
テトロドトキシンを含む貝や甲殻類などの餌を食べることで体内に毒を蓄積
していると考えられています。
では、
毒のない餌だけを食べれば無毒のフグが出来るんでしょうか?
なんと実際にその研究をしている場所が佐賀県にあるというのです。
そこで佐賀県にやって来た矢野さんが見たものは、海ではなく
陸地の水槽で養殖されているフグでした
。この無毒の人口飼料で飼育されたフグに、本当に毒がないのか肝臓の成分を調べてみると、たしかに
毒は一切検出されませんでした
。
ということは食べることも出来るはず。矢野さんが特別な許可をもらい、命がけでフグの肝をおそるおそる試食、するとその味は、クリーミでトロトロ、絶品の味わいだったそうです。
フグは、毒を持つエサを食べて体内に毒を蓄積する。
なので、無毒の餌だけを食べさせて育てると、無毒のフグになるのだ!