宇佐市内の中学で女子生徒(当時)が授業中にバレーボールを頭に受けた事故の損害賠償請求訴訟の判決が、事故発生から7年近く経て29日、大分地裁中津支部で言い渡された。授業を担当した教諭の過失は認められたが、女性に後遺症として残ったとされる「脳脊髄(せきずい)液減少症」と事故との因果関係はなしとされ、原告女性(19)の母・轟智恵さん(52)は「不当な判決だ」と声を震わせた。【大漉実知朗、高芝菜穂子】
女性が中学2年だった03年5月に事故は起きた。体育の授業中、2人の男子生徒がけり合っていたバレーボールを頭に受け入退院を繰り返した。女性は10カ所以上の医療機関を転々とした。05年3月、熊本県荒尾市の病院で「脳脊髄液減少症」と診断された。
中学の校長名で提出された「災害報告書」の誤りに気づいたところから轟さんの闘いが始まった。5時限目の授業中だったにもかかわらず、「昼食時の休憩時間中」となっていた。その後、日本スポーツ振興センターが「病気と事故との因果関係は疑わしい」と、1度却下した校内事故で支払う医療費も勝ち取った。市教委との交渉で、学校での安全管理責任を認めさせた。
今回の判決で事故との因果関係は否定されたが、女性の青春時代は減少症治療に明け暮れる毎日だった。
轟さんはこの日、判決主文言い渡し直後、戸惑いの表情を浮かべた。しかし、判決後の会見で「判決はおかしいが、減少症を認知させることができ、裁判は無駄ではなかった」。この日法廷に出なかった女性は携帯電話で「こんなに苦しいのに、裁判所も分かってくれないなんて。勝つまで頑張る」と泣きながら訴えた。
宇佐市の是永修治市長は「判決を厳粛に受け止め、内容を精査し検討したい」とコメントした。
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■ことば
交通事故などで脳脊髄液が漏れ、めまいや頭痛などの症状が続く。国内で患者は10万人以上いると言われる。
毎日新聞 2010年1月30日 地方版