さつきのブログ「科学と認識」

一言メッセージ :国会議員の定数削減に反対という「きまぐれな日々」のkojitakenさんに賛同します

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社会のこと

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「事業仕分け」の前に、既に「仕分け」されている(追記あり)

 あちこちで「事業仕分け」が話題になっている。やり玉にあげられた対象事業の関係者は週末返上で対応に追われているようだ。私の職場にもじわじわと余波が及んでいる。先日、(独)海洋研究開発機構 (地球内部ダイナミクス研究:IFREE)の若い研究者から、事業仕分けのあおりで理事側から給料20%カットの提案がなされ、労働者代表のサイン待ちの状態であるとの話を聞いたが、にわかには信じられない。正確な情報を入手次第追記するつもりだが、ちょっとしたパニックに陥っているようにもみえる。(末尾の追記参照)

行政刷新会議が公開している「第3WG 評価コメント」のIFREE関係部分はこちら。
http://www.cao.go.jp/sasshin/oshirase/h-kekka/pdf/nov13kekka/3-19.pdf

 ところで、「事業仕分け」でネット検索してみると、昨日午後の時点でヒットした大半は、各地の自治体によって公開された過去の「仕分け」の議事録であった。もともと、地方自治体ではかなり以前から導入されていたシステムであるらしい。税金の使い道を、その出資者である市民に見える場で議論し、決定するというシステムは、大変好ましく思う。それが国政の場にも導入されたことについては、政権交代による政治改革のひとつの表れと評価して良いだろう。しかし、関連情報を注意深く探ってみると様々な問題点も見えてくる。

 選挙によって選ばれた国会議員の相対多数の政治勢力が行政府をコントロールする内閣を組織し、その主導の下に国政が運営されることそれ自体は民主主義の理念にかなっている。これはしかし、我々国民が、その内閣に国政を100%丸投げするシステムとして理解すべきでないことも明らかである。実際に選挙公約が守られるとは限らないし、選挙公約にはない余計なことをやらかしたりすることもあるかもしれない。少数派の意見を全く無視して良い筈もない。

 言うまでもないことだが、日本国憲法の条文の多くは、国家権力の暴走に歯止めをかけるための足かせとして定められている。我々国民が、行政府の行動を監視し直接モノを言う権利があるのは、憲法第三章の各条文で規定され保障された基本的人権に発することであり、この、憲法の精神に立ちかえることで、我々の意見表明も力を得ることができるだろう。

 その視点から、最近の「事業仕分け」を眺めて気づく、いくつかの問題点を指摘しておきたい。
なお、私の本業にかかわる科学技術政策上の問題点については、優良な記事が既に多数公開されているので、ここではその一部を末尾にリンクするにとどめる。(注1)

 さて、あちこちで批判されていることだが、大部分の「仕分け」が重要な案件であるにも関わらず、わずか40分の質疑一発勝負で採決が下されてしまうというのはあまりに拙速ではないか。「仕分け」の会場も公開され、質疑の動画もアップされていたが、その議事録はきちんと作成され、公開されるのだろうか。怒号が飛び交う中、誰が何を発言したのか、正確な議事録がなければ確認のしようもない。(注2)「事業仕分け」導入を画期的な前進と喜んでいただけに、出発時点で大きなイメージダウンを招いたのではないかと、大変残念に思う。政権交代を歓迎した多くの人々も、今すぐ成果を出せとは決して思っていないだろう。ゆっくりと着実に改革を押し進め、将来に禍根を残すことのないようにしてほしい。

 次に、おそらくほとんどの「仕分け人」には、「仕分け」の対象とされた予算のかなりの部分が人件費に充てられていて、その裏に多数の労働者やその家族の生活があるという実態が見えていないのではないか。冒頭に述べたIFREEについて言えば、予算の計上が見送りとなった「地球内部ダイナミクス」の13億円の大半は、過去数年の短期間に募集され、現に就業している多数の若い技術者・研究者・事務職員の人件費に充てられる筈のものだ。いわば国策として開始された事業に応募し、誇りを持って参加していたそれらの者は、突然梯子を外された格好だ。「仕分け人」には、自らが、まさに権力を行使している立場にあるとの自覚があるのだろうか。

 かつてこのブログで、現在の大学を含めた若い技術者・研究者を取りまく国内環境の歪みについて短い感想を述べた事があるが、現実の危機は止めどなく進行している。

「なんとも知れない未来へ」
http://blogs.yahoo.co.jp/satsuki_327/30962647.html

 先月、趣旨を同じくする本格的な論考が書籍として出版された。
潮木守一著『職業としての大学教授』(2009年10月、中央公論新社)
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4120040674/sciencepolicy-22/

 私が最大の問題だと思うのは、95兆円に上る22年度予算の概算要求の中のほんの一部の事業について予めリストし、その決められた対象事業の議論だけがクローズアップされている点だ。最も重要な「選択」は、何を仕分け対象とするかにある。つまり、最も重要な「仕分け」は、国民の監視から外れた場で既に完了してしまっていたのである。その後のことは、いわば「奴隷の選択」だ。だから、予算の使い道が国民の監視下に決められるシステムが導入されたとは、手放しには喜べない。

 例えば、「政党交付金320億円を事業仕分けの対象にせよ」という意見もある。もちろん、「政党交付金」は「政党助成法」に規定されていて、これを廃止するには法改正が必要で、今回の「事業仕分け」の対象にならないことくらいは理解できる。しかし、無駄に使われている税金は他にもっとあるのではないかという想いは、沸々とわき上がるのである。まさか、それを隠すためのパフォーマンスとして今回の「事業仕分け」が仕組まれているとまでは言わないが、マスコミを動員した一連の動きを見ていると、問題の所在を冷静に分析する必要性を痛感する。

やがて、「事業仕分け」の第二弾が始まり、米軍に対する「思いやり予算」もやり玉に上がるとのことなので、期待も捨てずに、注視しよう。

(11/26追記)
 「事業仕分け」のせいで給料20%カットというのは、やはり当人の早とちりでした(ただし、給料減額はあるらしい)。私としても、余計なことを書いてお騒がせしてしまい、大変申し訳なく思い、関係者の皆さまに陳謝いたします。いずれにしても、「事業仕分け」の結果を聞いて、一瞬パニックに陥った任期付スタッフは多かったのではないでしょうか。

--------------------------------------
注1)以下、関連情報

「緊急メッセージ、未来の科学ために」
http://d.hatena.ne.jp/scicom/20091115/p2

下記は、本年7月の時点で、政権交代を見越して、民主党の「科学政策」の立案能力を鍛えるために科学者の側から積極的に提言しようとの趣旨。
http://d.hatena.ne.jp/sivad/20090726/p1

下記は、総選挙1ヶ月前の時点で、各党に送った「科学政策」に関する公開質問状。末尾に、民主党、共産党、国民新党からの回答ページへのリンクがある。
http://d.hatena.ne.jp/sivad/20090731/p1

「内閣府行政刷新会議事務局」のHP
http://www.cao.go.jp/sasshin/index.html

注2)議事録が作成され、財務省のHPで公開されているとの情報もあるが、結果を短くまとめたリストのようなものばかりで、「議事録」そのものは探し出すことができなかった。

閉じる コメント(6)

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事業仕分けは必要であるが、その成果は仕分け人の能力に依存している。
次世代スーパーコンピューターやロケットなどの科学技術関連予算が事業仕分け(税金10億円投入)で見送られるようでは、民主党政権には夢も希望もない。
民主党の蓮舫や枝野のような科学技術に無知で、日本の将来に無関心な人物が仕分け人では、致し方ないこと。
毎年2.5兆円の税金を使う高速道路無料化は、無駄な予算であるから、事業仕分けによって廃止してもらいたい。
民主党には成長戦略が無く、成長のための投資と無駄を区別する能力も無いことが見えてきた。
蓮舫が世界一になる必要があるのかと言ったスーパーコンピューターの現在の性能順位は、1〜3位は米国、4位はドイツ、5位は中国、6〜10位は米国そして日本は30位以下。
民主党を衰退させなければ、日本が衰退することとなりそうだ。 削除

2009/11/22(日) 午前 9:10 [ 夢も希望も無い民主党 ]

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>「夢も希望も無い民主党」さん
次世代スパコンに関連して、確かに競争相手も進歩を続けている世界で、一位を目指しても一位になれるとは限らないですからね。一位を目指す態勢で臨まなければ二位にもなれないでしょう。蓮舫さんから「二位ではダメなのか」との質問がありましたが、今は30位以下だから二位なら万々歳、確実に二位を目指すには予定されている予算の計上が必要なのだろうと思いました。それより重要なのは、10Pflopsの計算速度があれば、どんな重要な問題が解決できるようになるのか、そのことをきちんと説明すべきだったと思います。

ところで、あなたのサイトを読ませていただきましたが、気分が悪くなったので、今後ここには書き込みをなさらないよう、お願いいたします。 削除

2009/11/22(日) 午後 9:40 [ さつき ]

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Kalessin Actionさんからトラックバックいただいた記事はお勧めです。ありがとうございました。
IFREEは、日本が世界に誇れる数少ない研究機関のひとつです。私の記事では、若い人が多いと書きましたが、実は、若い人ばかりでなくトップレベルの地球科学研究者が全国の大学からかき集められて(引き抜かれて?)います。これがつぶれると、日本の地球科学界に計り知れないダメージを及ぼすでしょう。文科省が「事業仕分け」についての意見を募集していて、既にIFREEサイドからも悲痛な叫びにも似た要望書が提出されました。
13億円の予算が復活する道はないものかと、私も思います。 削除

2009/11/22(日) 午後 9:44 [ さつき ]

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さつき様
どうも、関係者様(?)から記事の内容を支持していただき恐縮です。私、なにぶん駆け出し者で、記事の内容も本当に自分がIFREEの全貌(研究、アウトリーチ、人員)をわかっているのかという葛藤を抱えつつ書いておりますので、お気づきの点がありましたら教示いただければ幸いです。
いたたまれない思いもしますが、今回の仕分けは決定事項ではなく、また他の科学関連の仕分けも見直すべきだという意見が多いので、慎重に議論をする必要があると思います。

2009/11/24(火) 午前 6:13 [ kalessinlord ]

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>kal*ssi*l*rdさん
いえいえ、私は関係者ではありません。たまたま知り合いが居て、今回のことで文科省へ提出された「意見書」を読んだのです。

市場にまかせておけば見向きもされない基礎科学は、国の主導でなければ育ちません。民主党にはそのことを分かっている人もいる筈です。 削除

2009/11/24(火) 午後 6:33 [ さつき ]

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そもそも最初から二位以下で現在30位以下のスパコン分野。
民間からの視点から考えても撤退じゃあないでしょうか?
かんなおと(漢字変換も面倒な)なんて民主党の中でも胡散臭い(馬鹿息子に世襲させようとしたり、云々)輩が口挟んできたが、先端技術については、「失われた20年」の間に取り戻さねばならない分野が他にいくらでもあるでしょう(バイオ・医療・エネルギー等)。
それに、仕分けは仕分け。
簿記・会計でしたら、あくまで初歩作業。
それを公開でやってるだけなんだから、ちょっと過剰に反応しすぎではないでしょうか?(特に理科系の方々)
これでは、「来年度から非公開でやる」なんてことになりかねない!
それでは、もとのもくあみ、阿呆・晋ちゃん・蜃気楼時代に逆戻り。

2009/11/26(木) 午前 11:44 [ sek**ama2*04 ]

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