きょうの社説 2010年1月30日

◎「がんプロ」養成 大学超えた教育モデル定着を
 北陸3県の5大学が連携する「北陸がんプロフェッショナル養成プログラム」を活用し 、石川県で初めて「がん看護専門看護師」(日本看護協会認定)が誕生した。この資格は富山県でも1人しかおらず、全国でも200人に満たない。難関資格の取得は、2007年に始動した北陸がんプロの目に見える成果の一つといえ、養成プログラムが機能してきたことの表れである。

 北陸がんプロは、がん専門医をはじめ、がんに特化した看護師や放射線技師、薬剤師の 養成を目指している。がん治療は多くの人がかかわる「チーム医療」の典型であり、職種を超えたレベルアップが求められている。養成プログラムを通して「がんのプロ」を目指す流れが広がれば、北陸のがん医療水準の底上げにつながるだろう。各大学の持ち味を生かした横断的な教育モデルをぜひ定着させてほしい。

 日本看護協会の「がん看護専門看護師」は、がん患者の身体的、精神的な苦痛を理解し 、高度な知識や技術を提供できる人材を認定する仕組みである。大学院の講座を終了し、5年の実務経験を要するなどハードルは極めて高い。

 石川県の先駆けとなった金沢医科大病院の我妻孝則さんは、北陸がんプロのプログラム で県立看護大の演習に参加し、インターネットによる講座で「緩和ケア」などを学んできた。勤務の合間を縫って高度な資格を得たことは、後進の大きな励みになろう。

 北陸がんプロは、がん対策基本法施行を受け、文部科学省のプロジェクトとして発足し た。金大、金沢医科大、石川県立看護大、富大、福井大に加え、3県すべてのがん診療連携拠点病院が参加し、実践的な教育の場を提供している。

 がんに関しては、日本臨床腫瘍学会や日本放射線腫瘍学会など、認定医制度を設ける組 織が増えてきた。資格の取得は医療従事者にとっては資質を高める具体的な目標となり、患者にとっても信頼の目安の一つになる。

 医療の現場は極めて多忙だが、がんプロの仕組みを最大限に生かすためにも、学びの意 欲を引き出すような職場づくりを進めたい。

◎施政方針演説 「大衆迎合」に陥らぬよう
 首相自身と小沢一郎民主党幹事長の「政治とカネ」の問題がクローズアップされている 最中だからだろうか。鳩山由紀夫首相が初めて行った施政方針演説は理念先行で現実感に乏しく、語りかけるような熱のこもった訴えも、どこかしらじらしく聞こえた。政権奪取直後の所信表明演説のときの迫力、高揚感とは大きな差があったのは、右肩下がりの内閣支持率と無縁ではあるまい。

 演説の中で、くどいほど繰り返された「命を守る」とは、経済優先の社会構造から、人 間のための経済への転換を指すのだろう。鳩山首相がこれまで掲げてきた友愛政治と同じ概念で、特に新味があるわけではない。弱者に優しい社会の実現にはだれも反対しないだろうが、常に「大衆迎合」的な政策に傾斜しがちな危険性をはらんでいる。子ども手当や子育て支援など、福祉国家主義的な政策に特化し過ぎず、経済全体のパイを増やす現実味のある成長戦略を描いてほしい。

 演説には、既存の政策が繰り返し出てくるだけで、新たな政策がほとんど盛り込まれて いなかった。以前より具体化している形跡もない。「命を守る」を鳩山政権のキーワードにするなら、具体策を練り上げて提示してほしかった。政権発足から4カ月を経て、大きく前に進んだという印象は薄く、実行力に物足りなさが残る。

 鳩山首相がいくら理念を語っても、国民の胸に響かないのは、政権への信頼感が失われ てきた証左でもある。米軍普天間飛行場の移設問題や小沢幹事長の政治資金問題などに正面から向き合おうとせず、難題を先送りし、責任を棚上げする姿勢が続いた。鳩山政権への期待値は大きく落はくしたと言わざるを得ない。

 引用したマハトマ・ガンジーの「七つの社会的大罪」には「労働なき富」も含まれてい る。母親から巨額の資金提供を受けていた鳩山首相本人を連想させる。あえて引用したのだろうが、自身の「政治とカネ」の問題をどこまで深刻に考えているのか疑問である。再三指摘されている「言葉の軽さ」を思わずにはいられない。