日本のマスコミには、宗教団体の広告が掲載されることは少なかったが、ここにきて、宗教団体のイメージ広告や、イベントを直接的に扱う広告が目立つようになってきている。その一例が2009年1月29日の朝日新聞朝刊に掲載された阿含宗のイベント広告。テレビ・新聞ともに広告収入が激減する中、「苦肉の策なのでは」との声も出ている。
これまで、大手新聞社やテレビ局は、宗教団体の広告掲載・放送にはきわめて抑制的で、せいぜい創価学会の出版部門である「聖教新聞社」名義で関連書籍の広告が掲載されるか、「潮」「第三文明」といった関連会社の書籍広告が掲載されるのが目立つ程度だった。
日本新聞協会の「新聞広告掲載基準」には宗教団体による広告に関する記載はないが、例えば西日本新聞社(福岡市)の場合は
「宗教団体の広告は、内容、表現が妥当と認められたものに限り掲載します。ただし、次の事項に該当するものは掲載しません」
とあり、掲載しないものとして「信仰による利益を著しく強調したもの」「読者に不安感を与えるもの」「勢力拡大を標ぼうするもの」「布教宣伝にかかわるもの」など9項目が記載されている。
このため、各社とも宗教団体の広告掲載には慎重で、せいぜい、毎日新聞が09年11月18日に、「核兵器のある今日から、核兵器のない明日へ」と題する創価学会の全15段のカラー広告を掲載したのが目立つぐらいだ。11月18日は、創価学会の創立記念日にあたるが、毎日新聞は08年にも7段のカラー広告を掲載している。
ところがここにきて、毎日新聞以外の新聞に、別の宗教団体の広告が掲載され、波紋を広げそうだ。広告を掲載したのは仏教系の新興宗教「阿含宗」(京都市)で、掲載されたのは2009年1月29日の朝日新聞朝刊。カラーで、1ページ全部を使い、阿含宗のイベント「阿含の星まつり」をPRするものだ。
阿含宗は1978年に創立され、最近は広告や出版にも力を入れている。最近で全国メディアに露出した例では、「週刊新潮」09年4月2日号のグラビアページに、「星まつり」の様子を特集する企画広告が3ページにわたって掲載された例などがある。さらに、朝日新聞に掲載された広告によると、2月11日に行われる「星まつり」は、全国のU局9局で生放送、4局で録画放送されるという。阿含宗がテレビ・雑誌・新聞ともにPR活動に力を入れていることがうかがえるが、やはり全国紙に全面広告が掲載されるのは異例だ。業界内では、「広告収入が減少する中、宗教団体は貴重なクライアントなのでは」との指摘も根強いが、朝日新聞社広報部では、
「弊社の広告掲載基準や、個々の広告掲載の経緯、今後の広告掲載方針は公表しておりません」
と、広告掲載の狙いについて口を閉ざしている。
また、前出の創価学会についても、「これまでは地方局中心だったテレビCMが、キー局でも『解禁』になるのでは」との観測もある。ただし、創価学会広報室では「その種のご質問にはお答えしておりません」とのみコメントしている。
09年8月の衆院総選挙の際には、「幸福の科学」傘下の「幸福実現党」が各メディアに大量の広告を出稿し、各テレビ局は対応に苦慮した末にオンエアに踏み切ったローカル局もある。今後も、メディアと宗教団体との距離感が問われることになりそうだ。
|