Vol.15 東京音楽大学100周年記念本館

一流の音楽家を育む“繭”

「記念ホール」内観

こだわりの極み「記念ホール」

「記念ホール」の舞台に立つ東京音楽大学施設課の小澤伸一さん(右)、筆者(中央)、渡邉作業所長(左)。

この建物を使っているのは一流の音楽家とその卵たち。彼らの耳はとても繊細で、また、それぞれが専門とする楽器によっても空間に対する意見は違います。そのため、この建物を造るにあたり、大学側と70回にも及ぶ打ち合わせが行われたそうです。
そのこだわりの極みとも言うべき存在が「記念ホール」。大学の講堂という範疇を超えた、その名のとおり立派なコンサートホールです。高い天井や、階段状に並ぶ座席は、音の響きなどを何度も先生方とも確認し、計算し尽くされた珠玉のホール。ここも視覚的には閉ざされておらず、左右の窓から自然光が入るようになっています。その窓にも、音楽家ならではのこだわりが込められています。建物の共通デザインである短冊状に作られた窓は、すべて客席のほうを向いて斜めに設置されており、演奏に集中できるように舞台上からは、窓が見えない作りです。正に、音楽家ならではの“視点”ですね。

「ミニホール」。「ミニホール」とガレリアはPC版の間から互いのアクティビティが見えるが、ブラインドを下ろし、閉めた状態にすることも可能。

生徒の想いに応えた「ミニホール」

次に見せていただいた「ミニホール」も、キャンパスライフの舞台として、最高の部屋。まず感じたことは、明るいということ。壁一面のガラスは、開放的であるのと同時に、二重構造によって、騒音の問題もクリアしています。さらに球状に広がる天井や、演奏に使用する部分にだけサクラ材を使った床、シーンによって切り替えられる照明設備などは、コンクールなどの実践練習にも対応できます。そのほか用途に合わせた大小さまざまな練習室など、「非常に練習熱心」だという東京音楽大学の生徒さんたちの想いに応え、その才能を伸ばしていくための設備が整えられていました。
あぁ、わたしにも、音楽の才能があればなぁ・・・・・・。
「東京音楽大学100周年記念本館」。丸みを帯びたその白い建物は、羽ばたいていく前の蛹を大切に大切に守り育てる“繭”のように、優しく暖かい建物でした。