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中国で地方幹部の自殺相次ぐ 腐敗や出世競争が背景

2010年1月7日23時2分

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 【北京=古谷浩一】中国で地方当局幹部の自殺が相次いで表面化し、波紋を広げている。腐敗行為への厳しい取り締まりや、国家が急速な経済成長を進める中での激しい出世競争のストレスが背景に指摘される。監察当局は7日、昨年1〜11月に規律違反などについて130万件以上の通報を受け、共産党員や役人ら当局者10万6千人を処分したことを明らかにした。

 地方幹部の自殺は、過去2カ月に報道されただけで計6人に達した。

 昨年12月21日朝、北京市内のホテルの一室で、1人の男性がベッドに血だらけで倒れているのが見つかった。コップの破片で体を切った。男性は寧夏回族自治区の共産党委員会組織部副部長(48)で出張中だった。組織部は人事を握る重要部署で、その副部長は地域の権力者だ。仕事のストレスに悩んでいたという。

 11月末には湖南省武岡市の副市長(47)が自宅マンションの3階から飛び降りて死亡した。現金21万元(約280万円)が自宅に隠されているのがみつかり、遺書には「大きな誤りはしていない。仕事が忙しく、もらった金を銀行に預ける暇もないくらいだ。死にたくないが、市民たちに死を迫られた」とあったという。収賄容疑への追及を苦にしての自殺と見られている。

 相次ぐ地方幹部の自殺の表面化は極めて異例な状況のようだ。ネット上には「疑いなく、2009年は『公務員の自殺年』だった」といった書き込みがみられ、市民の関心も強い。中国筋は「報道されないケースも多い。実際には、さらに多くの自殺者が出ている」と話す。

 中国の地方幹部は市民生活に直結した仕事が多く、わいろにつながる機会も多い。ただ、出世と失脚は紙一重。経済発展で高成績を残せば、中央へ抜擢(ばってき)されることもある。その半面で、発展重視の政策で多数の死傷者を出すような事件や事故が起きれば、行政の担当者として厳しく責任を取らされる可能性も高い。

 党中央規律検査委員会や監察省の7日の発表によると、昨年1〜11月に処分された当局者らのうち党員は8万5千人。うち収賄行為が発覚した2231人の党籍を剥奪(はくだつ)し、司法に案件を引き渡したと発表した。中央の役人も含まれるが、大半は地方幹部と見られる。党や政府機関などの「裏金」を意味する「小金庫」も昨年春から11月まで集中摘発され、計2万2千カ所から裏金101億元(約1350億円)が見つかった。

 腐敗の広がりに対する市民からの不満の強さも、地方幹部への様々な圧力につながっているようだ。中国メディアは「腐敗捜査が上層部まで及ばないように自殺させられたケースもあるのではないか」といった分析も伝えている。

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