もはや、この横綱につけるクスリはない。初場所中、深夜に泥酔して路上で暴れ日本相撲協会から厳重注意を受けた朝青龍の殴った相手は、武蔵川理事長に報告した仲間内でなく一般人だった。週刊新潮によると相手は男性クラブ責任者で、通行人に怒鳴りちらす朝青龍を注意したところ、車内でパンチを浴び「殺してやる」と脅された。
朝青龍には、にらまれただけでも縮み上がるだろう。男性は本当に殺されると思ったらしい。格闘技を生業とする者が一般人に手出ししたら選手生命は終わる。まして横綱がそんなことをするとは言語道断だ。協会の名誉を著しく汚し、今度という今度は解雇されても仕方ない。
折から協会では2月1日の理事選挙に向け28日に立候補届け出が行われ、貴乃花親方ら11人が名乗りを上げ4期8年ぶりの投票になった。土俵内外の傍若無人なふるまいで大相撲を劣化させている朝青龍に対し、協会はせいぜい厳重注意の甘い対応しかできない。同親方はそれに業を煮やして出馬した、と見る向きも多い。
先日の衆院予算委員会では「財政赤字をふくらませた上、バラマキの公共事業をやったのはどの政党、政権か」と、自民党の質問に対し前原国交相が逆ぎれした。朝青龍が何か起こすたびに批判の矢面に立つ武蔵川理事長も、「朝青龍をここまでつけあがらせたのは…」といいたいのではないか。
一連のトラブルにも北の湖前理事長は弱腰で、仮病で巡業をさぼったサッカー事件でも大なたは振るえず、かえって増長させた。師匠の高砂親方の責任も重大だ。再選が確実視される武蔵川理事長は、2期目の今度こそ“負の遺産”の清算に取り組むべきだろう。(今村忠)