先の衆院選熊本3区から出馬し比例復活当選した後藤英友衆院議員(43)の出納責任者で、公選法違反(日当買収)罪に問われている井上広世被告(42)の公判は15日、熊本地裁(野島秀夫裁判長)で検察側が懲役1年6月を求刑し結審した。検察側、弁護側は派遣会社から社員に給与が支払われていたことに争いはないものの、派遣会社社長の冨田忍被告(36)らとの共謀を巡って双方の主張は食い違っている。
検察側は、井上被告が冨田忍被告らから派遣社員に選挙運動期間中の報酬を立て替え払いしてもらっていたと主張している。ただ、派遣社員は会社から給与を受け取ったと証言しているが、井上被告から派遣会社側への支払いの事実は確認されておらず、事前に払う約束があったかが焦点となっている。冨田被告らは公判で事件に関して証言を拒否したため、調書での供述の信用性が問題となった。
検察側は冨田被告らの調書の「8月上旬ごろ、選挙運動中の日当を引き上げる話し合いをした」「井上被告から9月4日に支払うべき現金を持って行くと持ちかけられた」などの供述が「具体性、迫真性に富み、合理的だ」と主張している。
弁護側は、冨田被告らが初期の取り調べでは「井上被告から公示日以降は事務所から金を払えないと言われた」などと違う内容の話をしているが「矛盾が生じた経緯は明らかにされていない」と訴えている。さらに公判で「調書を見て判断してください」と述べたのは「検察官から促された可能性が強い」とした。判決は28日午後3時に言い渡される。【遠山和宏】
毎日新聞 2010年1月16日 地方版