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きょうのコラム「時鐘」 2010年1月29日
日曜の連載「うめめ日記」にあった「ごも犬」の意味が気になっていた。梅佳代さんの家の犬で、風呂に入らず、車が通るとタイヤに向かっていく
梅さんは「ごも」の意味を明かしていない。褒め言葉でないことは察しが付くが、手元の辞書にはない。きのうの投書欄で同じ町出身の方が「ばか」の意味と教えてくれて、やっと胸のつかえが下りた。気をもんだせいで、ぬくもりのある言葉が好きになった ネット社会は、ものを調べるのに便利である。マユツバ情報も少なくないから、うのみは禁物という厄介さもある。が、「ごも」のような言葉は、そうはいかない。土地の人に教わるしかない。そんな言葉が、若い世代にも伝わっているのがうれしい 室生犀星に招かれた芥川龍之介が、兼六園で作った歌が残っている。「はやうらとよながを食うてけふもまたおいその山を見てをる我は」。年長者に尋ねれば、早い夜食を終えて向こうの山を見ている姿、と教えてくれる 土地の言葉は、人と人を強く結ぶ。聞こえの良い共通語ばかりありがたがっていると、それこそ「ごも人間」になりはしないか。 |