「Last Chance ――航空機産業の活路」

Last Chance ――航空機産業の活路

2010年1月29日(金)

航空自衛隊OBが支える国産機開発

「絶対に起こしてはならなかった」F2墜落事故を胸に

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 三菱重工の小牧南工場ではヘリコプターの操縦を含めて、20人近い航空自衛隊OBがいる。三菱重工は防衛省から修理・点検のアフターサービスを請け負っており、こうしたパイロットOBたちが実際の試験フライトで安全性を担保しているのだ。

大学の文系学部でも自衛隊パイロットに

 川崎重工業では戦闘機はないが、それ以外の輸送機、練習機、そしてヘリコプターなど数多くの機種の生産や修理などを担当している。

 最近は航空自衛隊向けの大型輸送機「CX」と、海上自衛隊向けの哨戒機「P1」の2機同時開発で現場は忙殺された。CXは初フライトが2年ぐらい遅れた。それでもCXは日本が独自開発した航空機では最大の機体であり、開発は難しい。

 この2機では世界で最先端の機体制御システムも搭載されている。ここにも、自衛隊OBたちの活躍がある。

 川崎重工の航空機事業部門の本拠地は岐阜県各務原市にある。この工場に隣接するのが、航空自衛隊の開発拠点である飛行開発実験団である。輸送機「P3C」などが次々と基地から飛び立っていく。

川崎重工で新型輸送機の開発などに参加する自衛隊OBの馬場良直氏(右)と林晃一氏
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 PXの開発メンバーであり、海上自衛隊出身の林晃一氏の経歴は異色だ。

 林氏は明治大学の文系学部出身である。昔から、パイロットに憧れていたが、航空自衛隊は理系学部しか採用しない。そこで、調べてみると、海上自衛隊は文系学部もOKだった。入隊前の面接でも、「将来は航空機の開発に参加したい」との希望をはっきりと言ってきた。

海上自衛隊の技術開発部隊「51空」

 2001年に川崎重工に移るまでは厚木基地に勤務していた。ここは海上自衛隊の技術開発部隊が勤務しており、略称「51空」と呼ばれる。次世代の哨戒機の開発などを進めている。

 林氏はここで、川崎重工が開発する哨戒機であるP1のプロジェクトに加わる。P1の目玉は機体制御のデータ管理を光ケーブルでやることだ。これは「フライ・バイ・ライト」と言われる世界でも最先端の技術だ。







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日本はこれまで何度も世界の航空機市場に挑みながら、挫折と屈辱を味わってきた。中国など新興国が台頭し、世界競争が一段と激化していく中で、二度と失敗は許されない。「最後のチャンス」に賭ける、日本の航空機産業の戦いを報告する。

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