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警察、学会、農業......の危険な裏 告発本が明らかにした「日本の闇」

サイゾー1月22日(金) 20時56分配信 / 国内 - 社会
──内部関係者や業界関係者が、自らが活動する場の不正を告発するには多くのリスクがつきまとう。だが、そんなリスクを顧みずに、著者が強い信念のもとに著した"闘う告発本"のうち、09年に出たものをいくつか紹介しよう。

まずは行政の不正を暴いた告発本から紹介しよう。昨今話題の事業仕分けは、いかに税金の無駄遣いが横行しているかを白日の下にさらしたが、無駄遣い以上に悪質といえる国家による"横領行為"を糾弾するのが、『現職警官「裏金」内部告発』【1】だ。

 著者の仙波敏郎氏は、2005年に現職警官でありながら、警察の裏金作りの実態を告発会見で明らかにした人物。仙波氏いわく、現場の警察官たちが、膨大な量のニセ領収書を書くことにより、自覚のないまま億単位の裏金作りに関与しているというのだ。

 公金からの裏金作りといえば、北海 道新聞によって03年に北海道警の不正経理事件が発覚。また、01年には、現職の大阪高検公安部長だった三井環氏が検察庁による組織的な公費不正流用疑惑を告発しているが、前者は、その詳細を記した告発本をめぐって元道警総務部長が著者サイドを名誉毀損で訴え(一審は元総務部長の勝訴/現在、控訴中)、後者は、テレビや週刊誌で実名告発しようとした矢先に三井氏が不可解な別件逮捕・起訴を受けている。

 翻って仙波氏はどうだろう。本人に話を聞くと、「裏金作りへの協力を拒否し続けたために、36年間、巡査部長からの昇格はなく、告発会見後には 500日間の“座敷牢生活”を強いられました。今年、警察を定年退職した後も、通常、退官した警察官が入会する警友会を"役員の総意"との理由で除籍された」そうだ。

 だが、告発後、改善も見られたという。捜査協力費など、警察の予算が全国で200億円も圧縮されたのである。つまり、この差額が裏金化していた可能性があるのだ。

 だが、国家レベルで行われているこの不正を完全に正すのは簡単ではない。

「野党時代に、『警察の裏金作りを根絶する』と宣言していた民主党が、政権交代後は、その話題に一切触れていない。特に、国家公安委員長に就いた中井洽氏などは、野党時代は裏金追及の急先鋒だったが、今は素知らぬふりをしている」というから、仙波氏の闘いは、まだまだ終わりそうもない。

 警察庁だけでなく、「防衛省よ、おまえもか」と突っ込みたくなるのが、元仙台防衛施設局長・太田述正氏による『実名告白防衛省』(金曜日)だ。防衛省といえば、今も防衛装備品調達をめぐる汚職事件の裁判が続いているが、この事件で起訴された守屋武昌・元事務次官と同期である著者は、事件の本質を丁寧に解説。額賀福志郎、加藤紘一、中谷元といった実名を挙げながら、防衛利権に群がる口利き政治家や、企業との癒着の実態を暴いていく。

 普天間移設問題に揺れ、我が国の安全保障政策の見直しが必須の昨今にあって、防衛省がこの体たらくでは......と日本の将来が思いやられるが、本書と合わせて、『自衛隊が世界一弱い38の理由 元エース潜水艦長の告発』【2】を読めば、その不安がはさらに強まるだろう。

 日本の自衛隊は、戦艦や航空機・火砲などといった装備面では質・量共に高水準であるにもかかわらず、有事においては戦えない。そうした事態を憂う、著者である元海上自衛隊潜水艦長の中村秀樹氏が提案するのは「自衛隊は組織を変え、実質的な戦力向上をはかるべし」「憲法に武官の存在を明記せよ」などだ。その意見は、賛否が分かれるだろうが、国防について考えさせられる一冊だ。

 政界との“知られざる闇”を挙げるなら、もはや公明党との“密接すぎる”関係が公然の事実と化している創価学会も忘れてはならない存在だ。元公明党委員長という立場から学会と公明党の政教一致を認めたために、学会と長い闘争を繰り広げてきた矢野絢也氏の『黒い手帖創価学会「日本占領計画」の全記録』【3】は、それを裏付ける格好の書。議員時代の衆議院手帖を公明党議員OBに強奪された経緯などを克明に綴った本書をめぐっては、当のOBらから名誉毀損で訴えられる羽目になっている。もっとも裁判は、今年9月に最高裁が矢野氏の主張を認め、元議員側の敗訴が確定。また、かねてから民主党は、「政治と宗教」の問題に関して矢野氏の国会招致を示唆しているだけに、今後、ますます注目を集めそうな一冊である。
住と食をめぐる市民への欺き

 ......と、このあたりで趣向を変えて、ここまで紹介してきた告発本に比べ、現代の消費者により身近な"警告の書"として、2冊を挙げておこう。

 まずは、不動産売買トラブルの当事者によるノンフィクション『東急不動産だまし売り裁判』【4】。後に隣地に工務店の作業場が建設されるのを知りながら、その事実を隠していた不動産会社から、新築マンションを購入してしまった ──そんな経験を持つ著者・林田力氏が、訴訟を通じて売買契約を取り消し、購入代金を取り戻すまでを記録したのが本書だ。

「本を出版した後、東急不動産などから欠陥住宅などをだまし売りされたと訴える方々から反響があり、私の事件は氷山の一角だと実感しました」と語る林田氏。出版をきっかけに、取材を受けたり、市民集会での発表の場を得たりと、さらに広く問題を認知させることができたが、デメリットはなかったのだろうか?

「強いていうなら、嫌がらせまがいの不動産業者からの勧誘電話が増えたことですね。出版と因果関係があるという証拠はないのですが」(同)

 裁判中に社会問題化した耐震偽装やマンション管理などの問題についても向き合うことになった林田氏、そうした経験のもとに上梓された本書は、マンション購入を考えている人にはおおいに参考になるだろう。

“住”にも増して身近な問題なのが"食"をめぐる問題だが、世間一般では、「安全・安心」だと思われている有機野菜の驚くべき実態を明らかにするのは、『本当は危ない有機野菜 リサイクル信仰が生み出す「恐怖の作物」』【5】という告発本だ。

 現在の我が国の政策では、生ごみや糞尿を堆肥化する"リサイクル=善"とされているのが現状。そのために、ひたすら堆肥をつぎ込む農家や有機野菜販売グループ、自治体、企業が多いのだ。

「そのような行き過ぎた有機リサイクルのために汚染された土壌の現実を伝えたかった」と語る著者の松下一郎氏は、現役のGAP指導員(農業生産工程管理指導員)。同氏によれば、堆肥の過度な使用は、土壌や収穫された作物に有害物質を蓄積させる。それらは、人体に重金属障害を及ぼし、感染症の爆発的流行を引き起こす懸念すらある。有機農法は、豊富な知識と細かなケアがないと国民に危険を及ぼすというのだ。

「たとえば、小学校や幼稚園での食育の時間で、生ごみの堆肥を作ったり、有機農家を見学に行くと、生産者が土をなめるパフォーマンスをすることがあるが、これらの行為は問題を孕んでいるのです」

そう語る松下氏は、業界に身をおきながら、“国策”に反するような告発をした。それは、身辺に及ぶさまざまのリスクが今後も伴う行為だ。

「それでも、汚染米事件や世界的な穀物高騰が起こり、食に関する問題意識が高まったこともあり、多くの盟友が出版を後押ししてくれた。本を出したことでメディアの取材が相次ぎ、より多くの人に、何が真の問題なのかを知ってもらえたことには意義があったと考えている」(同)

 著者が告発しようとした日本が抱える闇の深さは深刻だ。それでも真実を明らかにしようとする人々の存在が、それらの闇に一筋の光を射していることだけは間違いないだろう。

(構成/編集部+本多カツヒロ)

【1】『現職警官「裏金」内部告発』(仙波敏郎/講談社(09年)/1575円)
現職時代から警察の裏金作りを告発してきた著者が、警察組織の荒廃ぶりを徹底追及。昇進試験では、問題が事前に漏らされるなど、セコイ不正の実態も明らかに。

【2】『自衛隊が世界一弱い38の理由』(中村秀樹/文藝春秋(09年)/1400円)
元海上自衛隊潜水艦長が、日本の自衛隊が戦えない理由を、旧日本軍や外国軍との比較を交えながら解説。一般にもわかりやすい内容は、国防を考える際の入門書的一冊。

【3】『黒い手帖 創価学会「日本占領計画」の全記録』(矢野絢也/講談社(09年)/1785円)
マスコミ最大のタブーとされる公明党と創価学会の関係を、元公明党幹部が暴露。訴訟沙汰にもなった手帖強奪事件をはじめ、にわかには信じがたい学会の野望を白日の下に晒す。

【4】『東急不動産 だまし売り裁判』(林田力/ロゴス(09年)/1155)
マンションの“だまし売り”を受けた著者が綴る裁判記録。企業の不誠実な対応に苦しめられながらも、法廷闘争を通じて社会正義を勝ち取る姿が読む者に勇気を与える。

【5】『本当は危ない有機野菜』(松下一郎+エコ農業のウソを告発する会/徳間書店(09年)/1365円)
「有機野菜=安心、安全」ではない現実をつまびらかにした一冊。その驚くべき実態と共に、GAP指導員である著者による、本当に安全な野菜の食べ方・選び方の解説もうれしい。

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  • 最終更新:1月22日(金) 20時56分
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