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村上正邦・元自民党参院議員会長に聞いた「ちょっといい話」

2010/01/28 08:39

 

 

 昨夜、KSD事件で受託収賄罪の罪に問われ、昨年10月まで約1年5月カ月間にわたって「別荘」(ご本人談)で暮らさざるをえなかった村上正邦・元自民党参院議員会長と話す機会がありました。77歳という年齢にしては肌つやもよく、お元気そうでしたが、やはり、当然のことながら不本意な別荘生活(村上氏は無実を主張)は辛かったようですね。別荘内で詠んだ俳句をまとめた小冊子「面壁」をいただいたのですが、このタイトル自体がそれを象徴するようです。

 

 かつては「参院の法王」「尊師」とまで呼ばれた村上氏は「拙い句ばかりでお恥ずかしい」とテレ顔で笑っていました。帰宅して早速読むと、「別荘」で壁と向き合う氏の胸に去来した心情と孤独、日々の生活ぶりがよく伝わり胸を打つものがありました。いくつか紹介します。

 

 照紅葉友の情けに泪落つ

 

 蟷螂ののぞいてをりぬ独居房

 

 ひまはりを刈って日当たりよきベンチ

 

 夏逝くや影のうつろふ白き壁

 

 独居房我に生きよと蝉の声

 

 釣瓶落としあすの日を待ち生きていく

 

 虫の音に世のえにし問ふ独居房

 

 身に沁むや独居房外雨激し

 

 願はくは我に眠りを秋の夜

 

 夜もすがら虫の音をきく獄の窓

 

 神の掌に長き夜委ね朝を待つ

 

 獄の朝蜻蛉取りしは遠き日ぞ

 

 開かぬ窓に都恋しや秋の風

 

 鉄格子より覗く虚空や星月夜

 

 ふるさとの秋のまつりの便りきく

 

 苦しきことあらずと念じ布団敷く

 

 秋の暮れひそと飯食う独居房

 

 月光もまた孤独なり正座せり

 

 秋の日の獄窓に差し免業日

 

 待ちに待つ仮釈の日や霧の朝

 

 山茶花や一日千秋待つ保釈

 

 霙降る鉄格子の夜の痛みかな

 

 仮釈の日燦然としてもみぢかな

 

 …情景が目に浮かぶようで、思わずたくさん引用してしまいました。村上氏は先日、自分に有罪判決を下した裁判官が最高裁判事へと出世した際に、「かかわった人が偉くなったのだから」と素直な気持ちで祝電を送ったそうです。「先方は嫌味と受け取ったかもしれないが」とこれまた笑っていました。

 

 で、本日はこの村上氏から聞いた「ちょっといい話」を二つ紹介したいと思います。そんなことがあったのかと感動を覚えたもので。それはこんな内容でした。

 

 まず、みんなの党の渡辺喜美代表に関するエピソードです。村上氏は、たまたま「別荘」が栃木県だったので、仮釈放後にはまず渡辺代表の亡父、渡辺美智雄元副総理のお墓に参りたいと考えたそうです。そこで、人を介して渡辺代表に連絡をとり、許可を求めたところ、すぐにこんな返事があったとのことでした。

 

 「ぜひお願いします。ついては、出所日に父が使っていた車を回しますので、それに乗って行ってください」

 

 そして当日、元副総理が生前使っていたセンチュリーが実際に迎えにきたそうです。運転手に聞くと、その車は元副総理の没後、ずっと車庫に眠っていたのを「きれいに掃除して迎えにいきなさい」と言われたとのことでした。きっと仕事に使用はせずとも、手入れは続けていたのでしょうね。村上氏は元副総理の墓前で、「喜美君には坂本竜馬になってもらいます」と誓ったとのことでした。

 

 みんなの党は実際、今夏の参院選での躍進が予想されていますね。自民党はもう見離したが、民主党もダメだと考えている人たちの票は、かなりの部分、みんなの党に流れるでしょうから。その後、村上氏が渡辺代表と会った際には、直接、「薩長同盟を成し遂げた坂本竜馬になれ」と励ましたそうです。すると渡辺代表は「はい。私は自民党を離党したときから、政党再編の流れをつくる役割を果たそうと考えてきました」と答え、またその際には自分がトップになろうとは考えないと明言したそうです。

 

 私が「渡辺氏には『オレがオレが』的なところがある印象があったのですが」と聞くと、村上氏は「自分もそういう印象があったが、会って話してみると違った」ということでした。いずれにしろ、みんなの党は台風の目となるのでしょうね。

 

 それともう一つ、今度は「政治家の言葉」に関する話です。村上氏は昨年暮れ、比叡山を訪れ、渡辺恵進・天台前座主に面会したそうです。渡辺氏は100歳という高齢で、目も少し不自由だとのことですが、村上氏に会うやいなや炯々たる眼光で「私は政治家が嫌いなんです」と言い放ち、以下、滔々と論じて村上氏にほとんど口をはさませなかったとのことです。それはこんな内容でした。

 

 「村上さん、政治家は自分の言葉に責任をとろうとしない。私はこのところ、字を書こうとすると手が震えるんですが、心ある人たちには一言『誠』と書いて送っているんです。『誠』という字は、言葉が成ると書きますな。『誠』の意味をもう一度、あなた方には考えていただきたい」

 

 村上氏はうつむくしかなかったそうですが、確かに気軽に「天地神明に誓って」と繰り返す現総理を見ても、言うことがどんどん変遷していく与党幹事長を見ても、言葉に「誠」の「ま」の字も感じられません。「誠」という言葉が表す実行、実現の意味について、私自身も考えなきゃなあと反省した次第でした。

 

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コメント(8)

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2010/01/28 09:01

Commented by Bero さん

罪を犯したこと自体を肯定するわけではありませんが、一度地獄を見た人の言うことや行動というのはピュアですね。政治家としての色気を残す人はこうもいかないでしょうが。

そこから、何事かを学べるかどうかが大切だと思うのですが。

 
 

2010/01/28 09:19

Commented by 阿比留瑠比 さん

Bero様
 >罪を犯したこと…。これ自体、村上氏は否定しているわけですが、法的には認定され、刑にも服していますからね。ただ、この人はもともとある種、ピュアさを感じさせるものがありました。>そこから、何事かを学べるかどうか…。そうですね。

 
 

2010/01/28 09:32

Commented by chibio3 さん

To Beroさん
この辺が武士道に通じるところなんですかね。
極東裁判でもそうでしたが、罪は認めないが円滑な国家運営のため国益をこれ以上失わない為に「判決」は受け容れる。
おそらくこの想いと精神は修身教育ができてないと理解できないでしょうね。

 
 

2010/01/28 09:37

Commented by RAM さん

阿比留様、
朝から、良い話を、有り難うございました。

>言葉に「誠」の「ま」の字も感じられません。

これを「まぬけ」と言うのでしょうか?

 
 

2010/01/28 09:44

Commented by 亜細亜大臣 さん

ありがとうございます。

「ふるさとの秋の祭りの便りきく」

いただきます。

マコトをつくす」いただきます。

 
 

2010/01/28 10:50

Commented by iza6773 さん

阿比留さん・最近TV出てますか? 評論家・三宅氏の後継者として、頑張って下さい。 【極東裁判】は、皆んな誤解の解釈をしている、と中西輝政氏の『日本文明の荒廃』が書いてある。 日本の戦争責任は『問われてい無い』。朝鮮戦争では国連軍+韓国軍が300万人以上が殺された。これは共産中国が参戦しなければ、あれだけの犠牲者が出無い。にも拘らず、国際社会は【中国の戦争責任を問わずに】1971年に国連の常任理事国にした。★.それは国際間に於ける正義や歴史観の考え、力と国益によって決まる。1970年代のアメリカは,ソ連との冷戦で共産中国を同盟国として引き入れる為、戦争責任を問わず、平和愛好国の仲間に入れる。★.日本の戦争責任も同じ理屈で、そうする事が戦勝国にとって都合が良いから。現在の国際秩序は西洋の考え。参考=決闘裁判で、結果によって正しい方を決める。勝ったのは神が味方をしたから、【正義は勝者にある】。例・イラク・フセイン戦争が好例で、勝てば官軍・負ければ賊軍になる。★.一方、西洋的秩序では、こうした正義・不正義の問題は【講和条約】を結べば、終わりが常識!東京裁判は【刑の執行】はうけいれるが、戦争の歴史観は受け容れて無い。原文は英語・フランス語・スペイン語だけで、日本語は無し。翻訳者の誤訳だった。
それを後生大事に、延々と洗脳され続けた。そろそろ目を覚ます時。

 
 

2010/01/28 11:11

Commented by 阿比留瑠比 さん

RAM様
 >これを「まぬけ」と言うのでしょうか?…上手い!

 
 

2010/01/28 11:13

Commented by 阿比留瑠比 さん

亜細亜大臣様
 どうでもいい話ですが、同僚のH記者は日頃から、「言葉に誠がない」と言われています。そのように何げなくふだん使っている言葉ですが、改めて座主に問われると…。

 
 
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