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きょうの社説 2010年1月28日
◎「理科離れ」対策 未来の高峰博士生む気概で
石川県教委は新年度、子どもの「理科離れ」を防ぐ独自の対策を進める。中学校の実験
授業の充実を図り、小学校教諭の指導力向上につなげる研修も新たに実施する。近年、理系科目に興味や関心がない児童生徒が増えており、いかに学習意欲を高めるかが大きな課題となっている。工夫を重ねて子どもの力を引き出してもらいたい。まず学ぶことの楽しさを伝え、好奇心を持たせることが「理科離れ」を防ぐ第一歩とい う。今春上映される金沢ゆかりの世界的化学者・高峰譲吉博士を描いた映画「さくら、さくら〜サムライ化学者高峰譲吉の生涯〜」も、子どもたちが化学の素晴らしさ、大きな可能性に触れるきっかけになるだろう。将来の技術立国・日本の地位低下も懸念されるなか、教育現場では子どもの意欲を高める教材、指導法は何かと常に考えながら、探求心と広い視野を持った未来の高峰博士を生み出す気概で理科教育に取り組んでほしい。 教員自身が理科を面白いと感じていなければ、子どもの理科好きの芽をつみかねない。 ところが「理科の指導は苦手」と感じている小学校の教員は多いという。理科の授業時間が増える小、中学校の新指導要領の完全移行に向けて、教員の指導力向上が一層求められている。小学校の学級担任を対象にした研修では、苦手意識の解消に努めて、効果的な指導方法を練る必要がある。 中学の授業には大学教員や企業の技術者らを派遣することにしており、より多くの生徒 に実験を通じて学ぶ驚きと感動を体験させてほしい。これまでも「理科支援員」として外部の人材を活用する事業が小学校で行われており、一定の評価を受けている。教員の多忙化も解消しながら、授業をより充実させる体制を整えていきたい。 理科好きになるには、目標となる人物との出会いも大切である。石川県は多くの偉大な 科学者を生み出しており、特に今年は映画化された高峰博士にスポットライトが当たっている。高峰博士の足跡に触れたり、博士にちなみ理数分野で優秀な中学生をたたえる高峰賞に挑む子らが増えてほしい。
◎トヨタ車回収 「技術立国」の看板にも傷
トヨタ自動車が米国市場でリコール対象車種の一時的な販売、生産中止に追い込まれた
ことは、巨額赤字からの回復途上にある同社の経営を揺さぶるだけでなく、日本の「技術立国」「ものづくり大国」の看板にも傷がつきかねない深刻な問題である。トヨタは昨年11月、アクセルペダルが戻らなくなるとして、約420万台を対象に米 国で無償交換を発表した。このときはフロアマット装着も関連するとして「欠陥」を否定していたが、今回のリコールは不具合を明確に認めたことになり、製造業にとっては致命的な打撃といえる。 景気の本格的な回復へ向け、輸出企業の力は欠かせない。国際的な競争に打ち勝つため の製造業の最大の武器は、高品質、高性能と、それに裏打ちされた信頼にほかならない。それだけに日本のリーディング・カンパニーのつまずきは極めて残念である。世界的不況を乗り切るために各社はコスト削減に懸命だが、トヨタのトラブルを教訓に、品質確保という製造業の原点を見つめ直してほしい。 トヨタがリコールを決めた8車種約230万台は、いずれも米国での主力乗用車で、昨 年の販売実績は全体の6割弱を占めている。販売中止が長引けば、業績への悪影響は避けられない。 昨年の自主改修では車体の構造上の欠陥を否定したため、米道路交通安全局などから批 判を浴びた。市場に出た車の改修だけでなく、販売・生産中止にまで踏み切ったのは、安全最優先の姿勢を強調する意味もあるのだろう。 リコール車種が増えた背景には、トヨタがコスト削減を徹底するために部品の共通化を 進めたことも指摘されている。海外事業を拡大する過程で、品質確保策に抜けがなかったか厳密に検証する必要がある。 自動車産業は電気自動車やハイブリッド車など次世代エコカー開発をめぐり、激烈な競 争が展開されている。長い時間をかけて築き上げたブランドイメージも、たった一つのミスで崩れかねない厳しい時代に入ったことを各社は肝に銘じてほしい。
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