東京地検特捜部が外堀を埋めつつある。民主党の小沢一郎幹事長の資金管理団体「陸山会」の土地購入をめぐる事件で、公設秘書の大久保隆規容疑者(48)が、中堅ゼネコン「水谷建設」側から料亭接待を受けた証拠写真が存在し、これを押収したという。水谷建設側は、小沢氏の地元・岩手県の胆沢ダム建設の工事受注に絡み、5000万円ずつ、計1億円の裏献金を行ったと供述している。「最強の捜査機関」による執念の捜査の一端が明らかになった。
「特捜部は、昨年夏から水谷建設の幹部や経理担当者らの事情聴取を進めてきた。結果、幹部(現在は退任)は『完落ち』し、小沢氏側との関係をすべて供述した。裏付けとなる証拠書類なども提出した。この中に、大久保容疑者を東京・向島の料亭で接待したときの写真もあったようだ」
水谷建設の関係者はこう語る。
小沢氏の公設秘書ら3人が逮捕された政治資金規正法違反(虚偽記載)事件。特捜部による小沢氏の事情聴取(23日)でも最大の焦点となったのが、土地購入費4億円の原資だ。
これまで小沢氏側は原資について、政治献金→銀行融資→個人的資金…などと説明を二転三転させてきたが、特捜部はこの中に、水谷建設からの裏献金が含まれるとみて捜査している。
「水谷建設が、胆沢ダムの関連工事を受注した時期にあたる2004年10月、同社幹部が都内のホテルで、小沢氏の元私設秘書で民主党衆院議員、石川知裕容疑者(36)に裏献金5000万円を渡したと特捜部に供述している。石川容疑者はこれを否認している」(司法ジャーナリスト)
こうした中、大久保容疑者が、水谷建設の幹部から受けた料亭接待が注目されている。
大久保容疑者が、水谷建設幹部とともに東京・向島の料亭を最初に訪れたのは、同社が胆沢ダムの工事を受注する約10カ月前の03年暮れ。週刊文春によると、大久保容疑者は20歳前の芸妓を気に入り、半年余りで10回以上も通い詰めたという。当然、水谷建設側の接待だった。
向島はかつて200軒を超える料亭があった東京有数の花街。永田町や霞が関と離れているため、「国会議員や大物秘書、高級官僚らがマスコミの目を盗んで秘密の会合を開いたり、遊んだりするには都合がいい場所」(永田町事情通)とされる。
ある向島料亭のHPによると、通常コースの料金は1人4万円。人数は2人からで、時間は3時間。これで料理(会席コース)と飲み物、芸妓が付く。特別オプションとして、お座敷(芸妓による演技)と生バンドが1万5000円ずつ。幇間(たいこもち)は何と5万円もする。
料亭接待の豪勢さが分かる内容だが、問題の証拠写真には、大久保容疑者と水谷建設幹部ら4人が写っているという。小沢氏側と水谷建設側の特別な関係がうかがえる。
これに対し、大久保容疑者は特捜部の取り調べで、「水谷建設の幹部から複数回、接待を受けた」と認めているというが、裏献金については完全否認しているという。
では、水谷建設が豪華接待を繰り返したのは何のためなのか?
小沢氏自身は23日の記者会見で、「私は、そのような不正な金は水谷建設はもちろん、ほかの会社からも一切受け取っていない。担当の秘書、元秘書たちも、そのような不正の金を受け取っていないと確信している」と語っているが、真実はどこにあるのか。