1999年6m and downコンテストの所感 (Oct. 25, '99)

1999年の6&Dの結果は既にJNやJARL WEBに掲載されている。結果はEsその他の異常伝搬の恩恵をフルに利用した北海道、九州勢の圧勝である。負けておいて下記のような文章を書くのもおこがましいが、まあ書いてしまったものは仕方がない。では始まり始まり。


昨年、98年の6&Dの結果に関して、黙って覗いていた某MLで「やった、BMJに勝った」との発言が見られた。昨年の6&Dは6時間寝ていたから勝たないのは当然だろうと思っていたし、見ず知らずの奴が毎年ただ参加しているだけの私を何故それほどに意識するのか、何故敬称略なのか不可解ではあったが、上記の発言は私の「やる気」に小さな種火を投げ込んだ。

元気なのは大いに結構だが、学生の分際で生意気である。

近年、JARLの四大国内コンテストに関しては、移動運用が必須のFDを除くALL JA、6&D、ACAGには自宅からC50で参加している。最初の動機は「フォーンだと声が枯れるから」だった。ただし仕事がQRLなのと、ややマンネリの感があるのと、何よりオヤジになって体力が続かなくなってきたので、夜中になると寝てしまうパターンもあった。特に最近は太陽活動の上昇などもあり、参加を止めようかどうしようか毎回迷うのであるが、各種の電波伝搬を最も効果的に利用できる6&Dである。バイアグラでもタウリン2,000でも飲んで、今回はフル参加するつもりだった。

私は移動はほとんどしない。特にコンテストでは何年も前のFDで現在の印西市に移動してレコードを出した以外、自分のシャックから参加している。したがって本稿はあくまでも平地(海抜25m)の自宅シャックからC50という比較的マイナーな部門に参加していることを念頭に置いて読んでもらいたい。同じC50でも移動には移動の、私の知らない別の条件があるはずだ。

私のアマチュア無線の興味は主として電波伝搬とシステム構築である。天文と同じく、自前の設備で自然現象や物理法則を実体験できる貴重な趣味なのだから、理屈も判らず、ただ人真似をして金にあかせて大きな設備を作り、ジャパーン(セブーン)と叫ぶだけではあまりにも勿体ない。しかも、こちらは天文と違って、積極的に電波を発射することができる。コンテストには、やる気のある数多くの局が同時に出て来るので各種の伝搬を明確に把握できる。また刻々と変化していく電波伝搬に対応してビームを振り、マルチを探し、とオペレーション上のスキルの部分も大きい。微弱な信号を了解するためのシステムの性能向上もフルに要求される。自前の設備で自然伝搬のコンディションを読みながら参加するという趣旨は、私の興味にもある程度合致している。

50MHz以下の周波数帯では宇宙を飛び交う高エネルギーの電子が宇宙磁界の中で螺旋運動をしながら電磁波を輻射する現象(シンクロトロン放射)のため、144MHz以上の周波数帯に比べて宇宙雑音が非常に大きい。天球上で50MHzの雑音温度が太陽(6000K)より低い所はほとんどなく、物質の密度が高い銀河中心(射手座)方向などでは数万Kに達する。このような宇宙雑音を排除するためには水平・垂直面内のビームパターンのきれいなアンテナを使用するのが必須である。アジアの片隅の、今にも潰れそうな素人無線連盟が主催するたかが国内コンテストであっても、自然や物理法則に従い、百数十億光年の広がりを持った大宇宙の一点で電波を送受信しているのだという認識の上でシステムを構築しないと微弱な信号を了解できず、スコアが延びないのだ。

ただし、(1)前もって自局のアンテナの水平・垂直面内のパターンを把握しておき、SKYMOONなどで(2)ラジオ星や銀河中心などの雑音源が昇ってくる時間と方位角、仰角を見てアンテナを振れ、とまでは言わないが、例えば(1)と(2)およびローカルの雑音源を登録しておいて、現在のビーム方向の受信信号のS/N比(いわばG/T比)を自動的に最適化するシステムくらいは実現できるだろう。C50にそこまで必要かどうかは判らないが、考えるだけでもわくわくすることだけは確かだ(しない?)。

私の現用設備はTS940Sに自作トランスバータである。受信系の総合NFは約1.8dB。最近、HF-50MHzの1kW出力の免許も取得したが、インターフェアや電気代への配慮から出力200W以下クラスに参加することにしている。アンテナはブーム長9.4mの7エレ八木のスタック。最近はブーム長10.6mの8エレ八木も実験している。地上高はマストトップで32mほどある。場所は東京から東に30km程度の所なので、7エレではメインローブが狭すぎてコンテスト向きではない。大体、真西方向に向けると東京しか呼んでこない。西北西だと埼玉だけ。西南西だと神奈川だけ。こういう使い勝手であるが、スタック化によって垂直面内のパターンが鋭くなり、受信時のS/N比がシングルよりも大幅に向上している。長い間、50MHzにおけるスタックの効果として輻射電力が3dB増加するという面だけが論じられてきたが、真のメリットは上記の受信時のS/N比の向上である。私の所で行なった実験では、シングルに比べて10〜20dBの向上が得られている。

水平面内のパターンの鋭いアンテナをいちいち回転させるのも面倒なので、上下の八木の間にサブアンテナとしてヘンテナを設置し、サイド方向を拾うようにしてある。これで八木が西を向いたままで埼玉、神奈川、長野、新潟、茨城、福島その他までカバーする。また八木を北に向けた場合には東京、神奈川、静岡、埼玉までカバーする。八木でCQを出し、呼んできた局が弱いとき、同軸リレーをパチパチと切り換えると結構な確率で信号が上がる。また一時的にQRM、QRNなどから逃れることもできる。この辺の方法に関しては、まだまだ発明や改善の余地があるだろう。

ちなみにこのマルチビーム方式はかれこれ10年以上使っているが、パケットで書いたところCQの国内コンテスト欄にパクリと思われる記事が出た。自分から鳳凰だのクジラだのに成る気はさらさら無いが、コチトラは大宇宙やら地球やらを相手にしているのだし、自分ではアイディアを出してそれを実現して行くこともできない雀さんメダカさんのやったことと思って、まあ放っておいてやろう。

受信系は総合NFが低いことは必須であるが、親機のIFフィルタの群遅延特性、局発のピュリティなどによって微弱な信号の了解度がかなり左右されるのでTS690やIC736などローエンド(失礼)の機械を使っている方は、10年くらい落ちの中古で良いからハイエンドのアマチュア機やプロ用の機械を一度使ってみることをお奨めする。またAFにヒスノイズや歪みがあると疲れる。頭の中で高域だけを意識的に抑圧するようなことを長く続けると頭の回路がそれに適応してしまい、高域の神経性難聴になってしまうことがある。無線機、付加装置、ヘッドホンなどは良い物を使おう。それが微弱な信号を拾いながらも長時間運用して疲れない秘訣でもある。

現用のヘッドホンはSONYのオープンエア型で、単に軽いだけが取り柄のものである。ナローのCWフィルタは使わず、TS940のVBTを半分くらいに絞り、AFの付加装置として自分で基板を起こしたスムージングフィルタを軽く使っている。帯域外の抑圧がソフトでリンギングもないので疲れが少なくコンテストにはFBである。数年前、JI3KDHの片岡さんが試用して「こんなの使ってたなんて、反則ですねぇ」などと言われたおぼえがある。

ログソフトは旧式のCLOGであり、キーイングは自作のZ80を使用したエレキーでやっている。ZLOGなどにしようかとも思うのだが、なんせ10年近く使っているシステムなのでなかなか変えられない。これでもエレキーのRAMに登録したメッセージを間欠的に自動送信できる。パドルに触れるとメッセージ送信が止まり受信になる。パドルから打つ場合、パドルに触れた瞬間にシステム全体が送信に切り替わり、打ち込む内容は一時エレキー内のFIFOバッファに保存され、数百ms遅延して送信機をキーイングするので、パドルのみの操作でアンテナリレーやリグのリレーを痛めない完全なセミブレークインを実現している。登録メッセージの間欠的な送出の場合にも符号のキーイング前にシステムがおもむろに送信に切り替わり、その後一連のメッセージが送出され、それが終わると受信に戻る。この間、リレーのバタ付きはなく、オペレータはリグのスタンバイスイッチに一切触れる必要はない。

さて6&Dのコンディションの特徴は季節的にピークを迎えている電離層E層領域の伝搬を頻繁に利用できることである。Esの他、E層高度の夜間(午後10時頃〜午前4時頃)には昼間にEsを構成していたプラズマが地球磁力線に巻き付いて直線状の領域を作り、北半球ではこの領域の南側(例えば南東)から入射した電波が再び南側(例えば南西)に散乱されるField Aligned Irreguralities (FAI、日本語で沿磁力線イレギュラリティ)も発生しマルチ稼ぎに役立つ。この伝搬は日本のアマチュアの間でその存在が知られていたが、メカニズムが知られていないまま対流圏伝搬のトロッポと混同されていたのを、私自身が伝搬実験を実施してデータを集め資料を配布して啓蒙し、ここ10年ほどでスキルあるアマチュアの間でやっとFAIという言葉が定着して来ているので喜ばしい限りである。

北半球のFAIでは送受信点のビームは北寄りの方向を向くので1エリアから真北、北西、北東方向のFAIもある。通常、方位角270度〜300度のFAIで3エリア以西のマルチが取れる。本稿の西日本の読者は北東方向の鈍角の伝搬ばかりでなく、北西ビームの鋭角の伝搬も試してみて欲しい。また東北、北海道の読者は夜間、(無人のはずの)東や北東の太平洋にもビームを振ったりしてみて欲しい。私はFAIで北寄りのどの方角でも交信できることを実証している。

ただしFAIではフラッタとドプラーシフトのため符号がくっついて聞こえること、伝搬損失が大きいため信号が弱いことなどから、やたらに速いキーイングで打たれると了解できないことも多い。どのコンテストでも居るが、相手に自分の信号を了解させようという心掛けがなく、ビーム方向も合わせず、やたら速いキーイングでコールし、二度ほどAGN?と打たれただけで、「お耳、悪いのね」とばかり手前勝手に消える局がある。アンタの信号は弱い。宇宙雑音に埋もれている。回線品質が極めて悪く、これ以上帯域を狭める訳にもERPを増加させる訳にも行かないのだから、伝送速度を落とすしかないだろう。一番強力に入感する方向にビームを修正してゆっくり打ってもらいたい。(そういう局に限って箸にも棒にもパーシャルチェックにも引っ掛からないマイナーな局なのだ。もっとも、メジャーな局だったら、とにかく状況を理解して確実にゆっくり打ってくれて、しまいには交信が成立するのだ。)

(少なくとも自宅参加の)C50部門では、極限までの微弱な信号を拾うことが重要である。ビームを向けても了解できない場合、何度もやり取りしてQSOに持ち込む。三度、四度のやり取りは当たり前である。

本稿執筆中、50MHzでJN1MSOの広瀬さんとお話する機会があった。私はコンテスト参加局の中でも特に符号をゆっくりと打っているとのことであったが、何度もC50部門に参加する内に、全体的にゆっくり打った方が交信の効率が良さそうな気がしてきたのでそうなっているだけである。これがCM部門などなら時間が無いから早く打つのも仕方がないのかも知れないが、自宅からフル参加するC50部門は、それほどには密度が高くない。このために自分でQSO数の壁を作っているのかも知れないが。あとC50では周波数を正確に合わせて呼ぶ局が少ない。受信時の帯域をあまり狭めると上に、下に、ずれて呼んできた局が取れない。ナローIFフィルタは不適だ。QRM時を除き、帯域は1.5kHzくらいは必要である。暇なときにローカル局を相手にして、自分が相手局をどれくらいのトーンで聞いたときにゼロインできるのか把握しておいた方が良い。

コンテスト開始時から数時間は北海道、青森などのEs、明け方の同方面のトロッポ、朝の2エリア以西のトロッポ、日中の5エリア方面のトロッポなども要注意である。また日中、強力なEsが発生した場合にはいわゆるバックスキャッタでマルチが稼げるので、あらかじめトランシーバのメモリに各エリアのビーコンの周波数を入れておき、時折聞いて各方向のコンディションをチェックすることも必要である。C50の参加者は特にそうだと思われるが、時間と予想される電波伝搬を大体想定してビームを振らないとマルチが効率的に取れない。あと、各エリアのアクティブな局は大体頭に入っているのでパーシャルチェックが効くが、私はバリバリの現役でCM部門などで活躍しているわけではないので、有名人のコールサインが取れず、何度も何度もやり取りをすることもある。

さて、やっと今回の6&Dについて書く。コンテストのための緊急のアンテナ工事などがない限り、コンテスト前日は明け方まで仕事をし、当日はなるべく午後まで寝ることにしている。夕方、買い物に出てサンドイッチやおにぎり、アイスコーヒー、お茶、牛乳などを買う。JA1YFGの後輩にあたるJL1BLWは、コーヒーその他の飲み物を飲むとトイレが近くなってロスタイムになるので飲まないと言っていたが、私は結構飲んでいる。ただし集中力と闘争心が無くなるので終了までビールなどは飲まない。

いつもそうであるが無線機の前はジャンクや工具がうず高く堆積している。大体開始1時間ほど前からまずこれを片づけ、普段は別の所に置いてあるPC98をCRTごと無線機の斜め前に持ってくる。パソコンの時計を合わせる。ソフトウェアを設定する。エレキーにCQやUR59912Mなどのメッセージを登録する。アンテナリレーに追加の同軸リレーを取付け、八木とサブアンテナの切換を行なえるようにする。今回、このためにアンテナコネクタを外した所、N型コネクタのピンが数ミリ引き込まれており、もう少しで接触不良となる所であったのを発見、急遽手直しをする。カッターで外皮を5mmほど輪切りにして編組をほぐし、心線を少し出すだけなので10分程度で済む。20:58JST頃からいつもの50.089.5kHzあたりでCQ FAIなどを出したりしてシステムの調子を見ると共にその周波数を占拠する。

システムの信頼性の管理は極めて重要である。過去、リグが壊れたこと、トランスバータ内のリレーが送信側に張り付いたまま復帰せず、急遽ひっくり返してドライバーで叩いて戻したこと、TS940SのPLLのロック外れ、ローテータが回らなくなってアンテナをロープで引いて回したこと、ケーブルの継ぎ足し部分でピンの引き込みのため接触不良になるなど、「潜在的な故障は肝心な時に顕在化する」の法則を散々体験しているが、お陰で現在は一応安定している。一応、バックアップのリグだけは用意してある。

21:00、まずは手動でCQ TESTを出す。すぐFAIで高知のJA5FFJや広島のJH4IUO、愛媛のJH5FISなどが呼んでくれる。近場を含めてドンドン呼ばれる。昨年の覇者JP6JKKともできる。しばらくCQを出してランニングする。するとすぐ下の89kHzあたりに強力な局が出現、さかんにさばいている。誰だ〜?と思ってRITを回して聞くと常連のJO1DFG/8。あわててXITもONにして呼んだのは言うまでもない。この段階での8のマルチは取りこぼすとリカバリーできず敗因になるおそれがある。実際に8のオープンそのものに気付かなかった局もあるようだ。CQを止めてビームを北に向け、ただちに
呼びに回る。当然ながら、北海道勢は盛んにCQを出している。おかげで101、102、103、110などのマルチが取れる。またEsとFAIで30番台、40番台のマルチがどんどん埋まっていく。日付が変わるまでに以下のマルチが取れる。

101 102 103 106 110 02 03 07 09 10 11 12 13 14 16 17 18 19
20 21 23 27 28 30 31 32 33 34 35 37 38 39 41 42 43 44 45 46

28〜30の一部はGWの他にノイズのような散乱波でFAIでも入感、101〜03および31〜46はFAIまたはEsによるものである。まだ3エリア方面が埋まって行かない。日付が変わってからさらに105、109、111〜114などのマルチが取れる。このコンテストでQSOできた57マルチの内、この時点で交信できていないマルチは04 05 06 08 22 24 25
29 36 40 47であり、これらも、このコンディションなら時間の問題で埋まるであろうと思われた。
FAIの西日本と近場の局が重なって呼んでくる。FAI? KKと打つと西日本の局だけが呼んでくれるようになったのには感激する。私にとってFAIはアマチュアバンドで「発見」した未知の電波伝搬の実例であると同時に、自分の選んだアマチュア無線活動の正しさを確認する一つの道標でもあるのだ。

8エリアのマルチを探し、CQと呼びに回るのを交互に繰り返すが、何度もマルチリストを見て、FAIやEsで出来そうな所を捜索する。20番台は後回し。04〜06なども後回し。午前4時近くなってから40がFAIで出来る。明け方の7エリアを狙ったところ常連のJA7KPI/7と出来て貴重な04が埋まる。今回は岩手県の局が比較的多く出ていたように感じる。午前6時台からは西日本のEsが出来るが、案の定8エリアのEsは来ない。

9時台になって沖縄が入感、JA5CKD/6およびJJ1VKF/6の二局とQSO。この後しばらくの間、南西〜南ビームのスキャッタが出ていたが、気付く局が少なかったようで、交信局数の増加にはつながらなかった。昼頃8エリアのEsが開けるが前夜やったマルチばかりである。02-47の内、残るマルチは36のみ。いつ出るかと待っていたJF5NTTとQSO出来たのは1409JSTであった。これで02〜47がすべて埋まる。私にとっては大変珍しいことである。結果的には夜間のEsとFAIその他で大部分のマルチを稼ぎ、残りを埋めていった格好になった。

局数については、開始後5時間で全QSO数の50%と交信できている。70%を越えたのが午前5時前であるが、午前7時を過ぎて約80%の350局を越えたあたりから急にCQの応答率が下がり、呼びに回る比率を上げざるを得なかった。この中で午前5時台のQSO数29局が突出しているのが面白い。これは一番眠い時刻に入れ替わり立ち替わりCWバンドに下りてくる電信電話部門の局を集中的に拾ったこと、明け方の7エリアにビームを向けたことによるものであろう。何か、この時間帯に活を入れるヒントがあるのかも知れない。

次に、栃木県のJI1ACIのデータと比較して所感を述べる。時間とエリア別の交信局数を比較すると、21時台、ACIの8エリア10局ゲットが光っている。私よりも先に8エリアのオープンを察知していたに違いない。私は各エリアを概ねまんべんなくQSOしているが、これは8エリアのオープンに後で気付いた結果である。そういえば昨年の6&Dも序盤に8エリアが開いていたらしいが全く気付かなかった。22〜23時台はトータルの比率から言えば互角だと思われる。時間ごとのマルチの表からも、ほぼ互角にEsとFAIでマルチを稼いでいることがわかる。

総合的なエリア別交信局数で私が凌いでいるのは、1エリア(250:184)、5エリア(9:6)、9エリア(7:5)だけであり、2,3,4,6,7,8,0エリアはACIが合計24局差で勝っている。総交信局数(433:386)の差は47局であり、1エリアの交信局数差は66局である。すなわち、私は他エリアで負けている局数を1エリアで稼いでいることになる。1エリアの交信局数に関しては最初の方で述べた関東中心部からの距離が影響しているのだと思われるが、他エリアの局数に関してはトロッポまたは山岳による回折、電離層伝搬などが栃木に有利に働いていたのか、シングル八木の垂直面内のパターンのせいなのか、はたまたスキルの差なのか、出力電力の差なのか不明である。

開始から日付が変わるまでの3時間の交信局数は161:114、スタートから6時間でも244:203と私が勝っている。これはスタートダッシュ時の関東中心部の有利さを物語っているものと思われる。午前3時から終了までの12時間について見ると、局数的には189:183とほぼ互角である。すなわち、私はスタートから6時間の密度だけでACIを凌いでいることになる。ところが、午前7時から終了までの8時間について見ると、局数は逆転し116:138となっている。

さらには、最後の4時間の交信局数について見ると、1エリア(28:30)、2エリア(5:8)、3エリア(2:1)、4エリア(0:3)、5エリア(2:1)、6エリア(4:12)、7エリア(3:9)、8エリア(1:0)、9エリア(0:5)、0エリア(2:6)となり、トータルで47:71とACIが大幅に伸ばしている。しかも1エリアがまあまあ拮抗しているのに対して、3、5、8エリアを除く他のエリアはまんべんなく伸ばしている。すなわち、この時間帯も「ACIの方が私よりも飛んでいる」という事実が判る。

スタートダッシュでは勝っているのに、翌朝から終了までの8時間の局数で負けているのは底力なのか、パワーの差なのか。ACIが13時台に7-9エリアを除く各エリアを伸ばしているのはスキャッタでも出ていたのであろうか。もしそうであったなら、私はそれを捕らえることができなかったことになる。

私としては1エリアの局数を確保する一方、ACIが取って私が取れていない2-0エリアの24局を何とか取って450超の局数に到達したい所である。それにはオペレーション、システム、戦略などを、あと一段、二段と向上させなければならないのかも知れない。マルチに関しては私が取れなかった108をACIは取っている。私の8エリアの探索が足りなかったと思われて残念である。

最終的な結果は433QSO×57マルチ、24681点であり、C50部門で433QSOは自己新記録、得点も昨年のJP6JKK/6には及ばなかったものの、自己新記録であった。

最後になるが、今回の比較で気付いたのは、まだまだ改善の余地が残されていそうなことである。漫然と自分のシステムに自己満足していた部分もある。長年使っていると、システム上の利点は利点なりに活用し、欠点はオペレーションなど他の部分で無意識にリカバリーしていくようになる。それがいつの間にか当たり前になり、知らない内に余計なエネルギーを食っていたこともあるだろう。既に一通り把握したと思われるコンテスト中の電波伝搬でさえ、まだ未利用のものがあるに違いない。オペレーション上でも達人のオペレータならば、あと何十%かは局数を伸ばせると思う。そのような意味で、今回の比較に参加出来たことは私にとって利益をもたらしたと思う。

何年も前であるが、テレビを見ていたら、ジャンボ尾崎が後進のポパイ倉本らに、「オレは君たちと全く違う次元でプレーしているから、君たちが勝てるはずがない」という意味のことを述べていた。そこまで傲岸不遜なことは言えないにしろ、「やった、BMJに勝った」などとぬかす奴が居る間は、まだまだ参加してやろうと思っている今日この頃である。まあ勝った負けた、滑った転んだと言っている間が楽しいのだが。

以上、長々と書いたが、本稿が読者のささやかな種火になれば幸いである。

Han Higasa, je1βmj (Oct. 1999)
【追記】 (June 27,'00)
当初、この原稿の元となるバージョンの執筆を依頼してきたNクンのホームぺージ、1999の6&Dの感想の部分に、「不徳のいたすところとはいえ、一部の方に不愉快な思いをさせられたのは残念です」というような表記があった。

どうせ書くなら「今回の事態を招いたのは私の不徳のいたすところです。原稿を提出された方々、その他楽しみにされていた方々に不愉快な思いをさせてしまって誠に申し訳ありません」くらいのことは書いてもらいたいものだ。

安易に私を含めた何人ものコンテスタに原稿を出させておいて、何ヶ月も放りっぱなしにした上、しまいには上記のような表記をするという、こんな無責任で自己中心的な人物を信用した私のお見立て違いだったようだ。

この件に関しては別記のようなやり取りがあった。あとは読者の判断に任せる。

今後は独自に「コンテスト参加記」を掲載するつもりだ。(ただし寄る年波に負けず、寝なかったコンテストに限る...)

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