アメリカの保守主義は、各州あるいは各個人の独立を国家から守る建国の精神であり、そのコアにあるのは国家に対する懐疑である。それに対して自民党の保守主義は、政府がすべてを解決すると考える家父長主義と、明治時代に戻ろうとする国粋主義だ。民主党の掲げる「第三の道」の実態も、旧態依然の大きな政府である。日本には、小さな政府を掲げる党がないのだ。大きな政府には三つの問題がある。
- 政府債務の維持可能性
- 世代間の負担の不公平
- 公共投資の非効率性
最大の問題は3である。1960年代までは、公共投資の収益率は民間投資を上回ったと推定されている。新幹線や東名高速などの投資は民間企業ではできないので、成長を促進する効果があった。しかし70年代以降の「国土の均衡ある発展」を理由にした地方への公共投資の収益率はきわめて低く、これが日本の成長率が低下した大きな原因だ。90年代の小渕政権以降のバラマキ公共事業は、人口を地方に逆流させて反生産的だった。
成長理論の実証研究によれば、政府のサイズと成長率には強い逆相関がある。これは公共投資が民間投資をクラウディングアウトし、平均投資効率を下げることが原因と考えられる。したがって成長率を上げるには、政府のサイズを小さくして民間投資を促進することが不可欠である。ところが鳩山首相は「新自由主義」を是正して「やさしい政府」をめざしているようにみえる。このアジェンダ設定の誤りが民主党政権の最大の問題である。
日本経済が苦境を脱却するための答はきわめて複雑で困難だが、その問題は明白だ。成長率を引き上げることが最優先であり、この問題が解決しないかぎり、他の問題はすべて解けない。ところが鳩山政権は、再分配や雇用問題などの派生的な問題から解こうとしているため、矛盾だらけの政策しか出てこないのだ。間違った問題をいくら考えても、正しい答は絶対に出てこない。Economist誌もいうように、現在の世界各国が直面している最大の問題は、大きくなりすぎた政府のサイズを適正な規模に縮小することである。
追記:コメントで教えてもらったが、自民党は「フィクション」派の三橋貴明氏を参議院の比例区の候補に立てるようだ。もう勝負を捨てたのだろうか・・・
コメント一覧
一応、ここにも置いておきますね。
http://www.asahi.com/politics/update/0122/TKY201001220368.html
これで自民党は、「日本の国債は内債だから大丈夫、円建てだから大丈夫、もっと国債を発行して景気を浮揚させろ」と言うのでしょうね。
河野さんと、対応を相談してみますw
池田さんのいうことはごもっともですが、今の日本の政治家に小さい政府を求めるのが無理でしょう。
政治家は支持者の声を代弁し、有権者に選んでもらう立場にいます。何でも国に保護を求める、独立性のない国民が圧倒的に多い現状では、小さい政府を主張する政治家が絶対生まれません。
政治家がバカだというよりは、国民のレベルがまだまだ低いです。アメリカのおかげで経済先進国になりましたが、国民の思考レベルはついていないようです。
三橋氏のもう一つのブログがお気に召したのではないかと。
三橋貴明ですか(笑)信じられませんね。
民主党が社会党になったかとおもったら、
自民党はナチズム(国家社会主義)ですか。
戦後みたいなrestartがあって目の上のこぶが無ければ、若い人はがんばれる。
国家が支配する地域を小さくしなければ危機感もモラルもないと思います。
かねがね私は東京独立論とか地方を中国に割譲とか言っていますが、何よりもっと東京は自分たちの税金が簒奪されてることに怒り、地方を切り離しにかかるべきです。アメリカから安い農作物を輸入し、安くて有能な外国人を受け入れ、軍事はこれからも米軍便り、電力や水など必要なものがある地域を確保できれば、地方はいらないのです。
冷たいような言い方でしょうが、こうした親離れがない限り地方は、公共工事でやたらインフラが整った高学歴ニートでありつづけるでしょう。
ただし、自立できるようになればそのインフラの高さは重要な武器になり、力強い歩みへと変わるでしょう。
世の中、経済学部の卒業生も数多いというのに、怪しげなバラ撒き政策が横行し、それをマスコミが景気対策だと認めて、三橋氏などのような輩が世に出てくるのも、みんな大学の経済学部での教育内容がお粗末なお蔭だと思いますがね。
昨日の国会で、みんなの党の党首(渡辺議員)も、「日銀に30兆円国債を引き受けさせて財政支出しろ!」と言ってましたね。FACTAに載ってたいい加減な記事の間違った図表を国会でとうとうと演説されてました。FACTAの記事は、高橋洋一氏の書かれたものらしいですから、相変わらずですねぇ・・・。st_uesugiさんのご指摘の通り、政治家は短期的な視野に陥りがちなわけですから、大きな政府を求め勝ちなのは仕方ないかもしれません。これを防ぐためには、メディアが社会の木鐸として、学者が理論的な見地から、しっかり批判すべきなのですが・・・。そうそう、財務省や日銀も政治に流されずにしっかりやって欲しいものです。
小泉進次郎氏によれば「自民党は発展途上」にあるそうです。
だが今年の参議院選挙の候補者である田母神俊雄氏(本人は辞退したが自民党がめざす方向がうかがえる)や三橋貴明氏の名前を見ると「発展途上」というより「消滅途上」にあると思います。
参議院選挙で自民党がかつぐもう一人の候補者を忘れていました。八戸市議の藤川優里さん。
Economistの図には日本が入ってませんが、一般会計だけでみるとGDPの18%ぐらいで、際立って低い。しかし特別会計を入れると40%で、アメリカとほぼ同じ。だから問題は政府支出が大きいことではなく、税収が少なすぎること。
国際水準に引き上げることは、専門家は反対しないと思うんだけど、政治家が必要以上に臆病になっている。また「不況のときに増税の話をするな」とか「国債で景気がよくなれば税収が上がる」とかいうバラマキ派が政治の足を引っ張る。みんなの党も、高橋洋一氏の呪縛が解けないかぎりだめですね。
私は三橋貴明氏の名前には驚きです。経済学の書籍をまともに読んだことがないと自信のブログで明言している人を擁立する自民党は何を考えているのか。やっぱり選挙というのは「良いか、悪いか」を選択するのではなく、「悪いか、もっと悪いか」を選択するものなのですかね。ここは一つ、池田氏がみんなの党から出馬してはどうですか?それならばみんなの党一択なのですが・・・
今の自民党幹部は、年齢制限や世襲制限をすると言いながら、予備選の導入を否定して三橋さんを公認してしまうような人たちの集まりなのです。自分が言いたいことを言ってくれる人の話しか聞かない。観念の海に溺れ、検察の捜査と民主党の分裂を当てにしている。参院選での勝利を目指していない。たぶん、次の衆院選まで野党でいることに我慢できないのでしょうけど、自民党本部を産経新聞本社にしてどうするのと言いたいですね。財政危機なのですから、政府案以上に無駄を省いた対決法案を準備してぶつけるほうが国民の支持を得られると思うのですが、そういう地味なことをしていたのでは政権を奪回できないとの考えが強いようです。
今年の参院選、比例での当選者数が10名程度になるかもしれないとの説があります。そうなると、三橋さんはたぶん無理。賢い人にはそれが見えているようで、人材不足だったのでしょう。
http://www.moneyshow.com/investing/Jubak_Blog.asp?aid=Jubak_blog-18642
この研究のことはご存知でしょうが、ご参考までに。
クラウディング問題の実証研究のひとつでしょうか?米国が危険水域。日本はグロスでも危ない。
>6.
>国家が支配する地域を小さくしなければ
独立できるのであれば、したらいいと思いますが、国家が支配する「領域」が小さくなるかは別の問題ですよ(意味分かりますか)。シンガポールは果たして「小さな政府」ですかね(小さな国家ではありますが)。まぁ確かに支配地域を小さくすれば人為的・合理的にコントロールできる範囲は広がるでしょう(ということは北欧型の「大きな政府」にも可能性が出てきますがね)。経済的自由のために、政治的自由は犠牲にしますか(後者の方がはるかにめんどくさいし)。
それから今のままではあおきさんの持論である〈東京は金融に特化して食っていける〉は不可能だと思います(いまも食べていないし)。東京の主要産業は〈政治〉と〈メディア〉です(皮肉ですよ)。
>冷たいような言い方でしょうが
むしろ感情的ないいかたですね。東京のインフラを考えれば「地方に搾取」なんてとても言えないと思いますが(一部の保守王国を除く)。しかし何でマルクス主義と同じ用語を使うんでしょうね。実は「大きな政府」派の人と発想がよく似てるんじゃないですか(裏返しというか)。
>11
連続ですみません。ということは、規制はともかく、課税に関してはむしろ国家の介入が「過小」だということですよね(+企業に頼りすぎ?)。
確かに鳩山内閣の政策志向はあしき社民主義への先祖返りとは思いますが、同時に現代社会で文字通りの「小さな政府」を実現するのは不可能でしょうね。
そうなると日本の問題は、支出は素朴なケインズ主義で、課税はレーガノミックス(の亜種)の組み合わせでやってきたことのようにも思います(選挙を気にする政治家の行動としたら短期的には合理的ですね)。どちらも見直しが必要ですね(大幅減税と同時に戦争をする癖があるアメリカも、そうとう問題ですが苦笑)。
>政治家が必要以上に臆病になっている
伊藤元重さんが小渕政権で消費税上げようとしたけど、堺屋さんが部屋にどなりこんできて「何を考えているんだっ」と言ったという噂を聞いたことがある。
>>15
>大きな政府
そうです。大きな政府の体制と小さな政府の体制が有用に働く社会の発達段階があり、1/9に池田先生が上げた記事が良い例だと思います。地方にはまだ傾斜生産方式的な政策が必要でしょう。が、それを行うのに現状の通貨ではまるで効果がない。ゆえに地方が信用度の低い独自の通貨を持った方がいいということです。ただ、そうすると東京が香港みたいな体制を取れるなら別に独立する必要ないのですが。なるほど、東京自身で新たな通貨を作るというのはいい手かもしれませんね。
>東京のインフラを考えれば「地方に搾取」
JALの状況しかり、国鉄の状況しかり、地方に都市部と同じ権利があろうとなかろうと、結局は帳簿の数字にのっとった冷徹な判断をしなくてはいけません。
政治家が必要以上に臆病になっている。
「不況の時」だけだったらともかく、現在は「不信の時」でもあると思います。
正直、税金の使われ方に対してこれだけ不信感が高まっている時に増税の話を持ち出して、勝てるとは思えません。
michio_ushiodaさん、ありがとうございます。素人ですが、勉強させていただきます。
しかし、今は野党が予算で対決法案を出せないという状況、出すとしても、政府案より規模の大きな予算案になってしまうであろうという状況のほうが問題です。与野党間で、予算削減を競うような状況は、当面、あり得ない。たとえば共産党でさえ、次世代スパコンを中止すべきである、とは言わないでしょう。これが日本の悲しい現実です。
財政危機をもっとも意識しているのが与党である民主党、なのかもしれません。これではねえ、、、
財政赤字のツケを国民が背負わされるのは、民主主義の因果応報で、むしろ望ましいことですらあります。結局痛みを感じないと物事の善悪はわからないのですから。
問題はそういう認識を有権者が共有しているかで、これは政治家というよりもマスコミの姿勢に負うところが大きいのではないでしょうか。
>18
少し論点を変えて。他の都市と比較した時の東京の圧倒的な強みは、実は地理的な「広さ」にあったのではと思います。特に関西の各都市がどうあがいても、関東平野と同じ条件は手に入れられません(なんと十勝平野よりも大きい!)。ですから、放射線状に衛星都市を拡大して、3500万人の東京圏を形成できたのでしょう(「江戸幕府」ついで「霞が関」がなければ、自然にそうなったとは思いませんが)。おかげで(?)香港やシンガポールのように、金融や観光、中間貿易に〈特化〉する必要もなかった。
ですから香港やシンガポールを目指すのであれば、通貨だけでなく、人も地理的領域も「東京」を現在よりも徹底的に縮小して、囲い込むことは確かに理にかなっている。そして金融やITなどに〈特化〉する(これまでの様に食っていくためというよりも、3500万人も食っていけないようにするために)。ただ政治的・経済的にとてつもないエネルギーがいるでしょう。あおきさんのプランを実現しする際の最たる問題は、東京の「広さ」をどう乗り越えるかですね。
>>22
なるほど、たしかに中央線の満員電車での通勤なんかまったくもって無駄の極み、もっと強力に都市計画を作って都内の空き地禁止とか一戸建ての禁止(その世帯しか住めないから)とか必要かもしれませんね。そして、もはやビルの上から見下ろせる皇居も。